11月29日のNHK朝のニュースは、ロシアのウクライナ侵略に対抗するために欧州諸国が徴兵制を復活する様子を取り上げた。ここで徴兵制を女性にまで拡大したデンマークに関し、世論調査で賛成53%に対して反対が32%であった事を報じたまでは良かったが、赤木野々花アナウンサーは、女性だけに限ると反対は39%あるのに、それを無視して「軍拡」に走るのは納得できないとコメント、井上二郎アナウンサーも、「そうですね」と同調した。ロシアの侵略に対抗して自国の防衛力を強化する努力を「軍拡」とは何という表現の杜撰さか。
言葉の誤用は侵略国を利する
東アジアでも、台湾を軍事力で併呑しようとする中国に対して日本は防衛力を強化している。12月5日(日本時間)に公表された米国の国家安全保障戦略でも、同盟国の防衛費増額を求めた。これを日本の公共放送アナウンサーが「軍拡」と表現すれば、いわゆる高市発言で世界的な情報戦を展開している中国は「それ見たことか、日本の公共放送アナウンサーですら(防衛力強化を)軍拡と言っているではないか」と利用するに決まっている。公共放送のアナウンサーは言葉の使い方に十分留意すべきだ。
米戦略家のエドワード・ルトワック氏は12月4日付の産経新聞で、昨今のウクライナ和平交渉で米国が欧州を外した理由について、イエメンの親イラン民兵組織フーシ派に対する今春の攻撃で恩恵を被る欧州諸国が貢献しなかったからだと説明した。そして今、高市早苗首相は台湾有事で米軍を支援して集団的自衛権を行使する可能性についての発言を撤回すべきではないと主張した。侵略国のロシアを中国に、侵略されたウクライナを台湾に、そして欧州を日本に置き換えれば、中国が台湾を侵略した場合の和平交渉を米国だけで行い、貢献しない日本を排除する可能性がある。
台湾有事後に「日本外し」も
2023年11月、フーシ派の武装勢力が日本郵船運航の商船を紅海で拿捕し、インド洋でも日本企業所有のタンカーを攻撃したにもかかわらず、日本は米英軍の対フーシ派軍事行動を支援しなかっただけでなく、ドイツや韓国ですら参加した「航行の自由を守る」とした十カ国共同声明にも加わらなかった。理由は、共同声明の中に米英の「集団的自衛権」発動を支援する文言が入っていたからである。
トランプ大統領は台湾有事後、平和安保法制により限定的な集団的自衛権行使しかできない日本を和平交渉から外すかもしれない。中国が台湾を併呑すれば、次は尖閣諸島を含む沖縄にまで手を伸ばし、日本の国益は重大な悪影響を被ることになる。それを防ぐための努力を、決して「軍拡」と表現してはならないのだ。(了)





