3月26日付産経新聞(東京版)は1面トップで、特定失踪者(北朝鮮に拉致された可能性の排除できない失踪者)木村かほるさんについての目撃証言を報じた。目撃したのは李日奎(リ・イルギュ)元北朝鮮キューバ大使館参事である。
李氏は日本で『私が見た金正恩』(産経新聞出版)という著書も出しており、その本の中に北朝鮮とキューバ大使館で目撃した日本人について書いている。私も同書を読んで李氏に問い合わせたのだが、今回は産経新聞が直接取材して確認したもの。平成6~7(1994~95)年に2回、平壌市内の外貨商店で会ったという証言である。
相次ぐ目撃証言
木村かほるさんは看護学校の卒業を直前に控えた昭和35(1960)年2月27日、秋田市で失踪した。当時21歳。特定失踪者問題調査会の「1000番台リスト」すなわち「拉致濃厚」のカテゴリーに入っており、特定失踪者の中でも最も目撃証言の多い人である。
「金正日の料理人」こと藤本健二氏は、平壌で寿司屋を営んでいた時にやってきた客で木村さんと思われる人を目撃している。北朝鮮による大韓航空機爆破事件の犯人金賢姫・元工作員が平壌外国語大学で学んだ時の日本語教師も木村さんである可能性がある。また平成14(2002)年12月、脱北者の女性が「親友の両親が拉致された日本人だった」と証言し、年齢や拉致された時期から木村さんではないかと推測されている。
さらに、拉致ではないが騙されて昭和57(1982)年7月から翌年2月まで北朝鮮にいたタイ人の女性たちが「日本語を習った日本人教師」として、多くの特定失踪者の中から「最も似ている」として木村さんを挙げている。加えて、中国の北朝鮮レストランから従業員を連れて亡命したホ・ガンイル氏が2002年頃の数ヶ月から半年の間、平壌市内モランボン区域の日本の品物を売る外貨商店で見た女性と似ていると証言している。また、特定失踪者の中でも看護師は多い(平成14年に帰国した拉致被害者の一人、曽我ひとみさんも看護師である)。
時間の浪費は許されぬ
木村かほるさんの目撃証言がこれだけ揃えば、誰が考えても拉致の蓋然性が高いと思えるだろう。当然、日本政府は北朝鮮に安否確認を強く求めるべきである。ちなみに、日本政府がやらなくても国連人権理事会の強制的失踪作業部会は昨年、既に木村かほるさんについて、北朝鮮に対し安否確認と人権の保障を求めている。
木村かほるさんは既に87歳である。青森県八戸市でかほるさんを待つ姉の天内みどりさんは、極めて聡明な方だが92歳になる。それ以外の拉致被害者やご家族も含めて、残された時間は少ない。政府はこのまま時間を浪費して皆死に絶えてしまうのを待っているのだろうか。政権の始まる時は「最優先課題」、終わる時は「断腸の思い」の繰り返しは許されないはずだ。(了)





