衆参両院で憲法審査会が始動したのは、2011(平成23)年10月11日である。それから2025(令和7)年12月17日に終了した臨時国会まで、衆議院憲法審査会は166回、参議院憲法審査会は105回、合計271回開催された。また2011年度から2024年度までに計上された総経費は、衆議院で23億1122万円、参議院で16億5983万5000円、合計39億7105万5000円に及ぶ。はたしてこれだけの回数と経費をかけてどれほどの実績を上げたのか。ほぼナッシング。私は会議録を読むたびに落胆と失望を重ねてきた。
両院とも改憲支持派が3分の2超
今年2月8日に実施された衆議院総選挙で自民党が圧勝。自民党のみで憲法改正案発議に必要な3分の2以上の議席を確保した。衆議院では4月9日、今国会最初の憲法審査会が開かれた。全体の雰囲気が完全に様変わりしている。メンバーは自民34人、中道5人、維新4人、国民3人、参政2人、みらい1人、共産1人である。発言した7党派のうち明確に憲法改正反対を表明したのは共産のみである。
参議院憲法審査会にあっては、改憲支持派は31人(自民19人、国民5人、維新4人、参政3人)、改憲慎重・反対派は14人(立憲8人、公明4人、共産1人、れいわ1人)で、改憲支持派が改憲慎重・反対派を凌駕している。
参議院全体にあっても、改憲支持派が総議員の3分の2をわずかにオーバーしている。
最重要は自衛隊明記と緊急事態条項創設
最大の課題は、テーマをいかに絞り込み、具体的な条文案をどう作成するかという点である。上記の衆議院憲法審査会においては、憲法9条の改正について自衛隊の明記、9条2項の削除、自衛軍の創設が提議され、一致をみていない。国家緊急事態対処についても然り。改憲推進派は、具体的な条文案の作成に向けて協議会を設置することが求められる。憲法改正に向けた憲法審査会の進捗を期待したい。
私は、憲法改正の1丁目1番地は自衛隊の明記と国家緊急事態対処条項の創設であると考える。自衛隊が1954(昭和29)年7月1日に発足してから72年近くの歳月が経つ。わが国の防衛になくてはならない自衛隊を憲法上の存在としてこなかったのは、きわめて不自然である。またわが国を取り巻く現在の厳しい国際環境の下で、外部からの武力攻撃、組織的なテロ行為、サイバー攻撃などに直面することが考えられる。現在の法体系では、それらに十分かつ的確に対応することは困難である。国家緊急事態対処条項の導入も、早急に実現されなければならない。
憲法は「不磨の大典」でない
憲法改正に関する所見を若干、述べておきたい。
(1)国民自身が憲法を遠くにある存在として考えているのではないか。憲法は国民の血と汗の結晶である。身近な存在として絶えず検証していかなければならない。
(2)いまだに憲法が「不磨の大典」視されている傾向にある。主要諸国を含め多くの国では、社会情勢が大きく変化すれば憲法を改正することに違和感を持っていない。わが国では1か条でも変えようとすれば、天地がひっくり返らんばかりの大騒ぎになる。異様、異例、異常な憲法観であると言わざるを得ない。
(3)80年近く前に制定された日本国憲法は典型的に20世紀型憲法である。1990年から現在までに制定された105か国の憲法中、環境権は95.2%に、プライバシーの権利は83.8%に、政党に関する条項は87.6%に導入されている。イタリア(1947年制定)、ドイツ(1949年制定)、フランス(1958年制定)は、環境権条項を導入するための憲法改正を行っている。21世紀に即した憲法論議が展開されなければならない。
(4)日本国憲法の最大の基本原則は国民主権である。国民主権の具体的な表れは、憲法改正国民投票である。憲法改正国民投票の機会を奪ってきているのは日本国憲法に違背するのではないか。
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4月1日に拙著『台湾有事と憲法改正』(育鵬社)を刊行しました。
第1章 台湾有事と憲法改正 第2章 憲法9条解釈に不可欠な66条導入経緯 第3章 日本国憲法の問題点と改正すべき条項 第4章 なぜ日本国憲法の誤りは是正されないのか 第5章 世界各国の憲法の特徴と改正状況 第6章 憲法改正論議を進めない憲法審査会 第7章 各党派の憲法改正に対する態度
ご高覧いただければ幸甚です。





