国家基本問題研究所は、11月3日、通算18回目となる会員の集いを、都内のホテルニューオータニで開催。今回も3連休の最終日で、例年通りシンポジウムと懇親会を実施した。
午後二時の定刻に開始した今回のシンポジウム、『外国資本から国土を守る』のテーマは、10月21日に発足した高市新政権の誕生に保守政治の復活を期待する声があがる中、国家の基本となる国土が外国資本により蝕まれつつあり、この現状を広く世に問うべく設定した。この国土の危機にどう対処していくべきか。安全保障や経済問題など、新政権が挑むべき課題は重く多岐に渡る中、今こそ国土問題の実効的かつ具体的な対策が求められるのである。
登壇者は、元内閣官房参与で国土問題に詳しい加藤康子・国基研企画委員、国土の守りを現場で担ってきた安全保障の専門家・元陸上幕僚長の岩田清文・企画委員、メディアでこの問題を厳しく追及してきた宮本雅史・産経新聞客員編集委員に加え、司会を櫻井よしこ理事長が務めた。

シンポジウムの概要は以下のとおり。
【パネリストの発表】
冒頭、司会の櫻井理事長から、国基研設立から18年を経過し、本日の会員の集いを迎えることができるのは、会員の皆様のおかげであるとの感謝の言葉から開会した。
高市政権に変革の期待がもてる今、わが国は外国による土地利用の規制が緩いという現状があり、安全保障上の懸念も拭えないと言われる。司会はまず、登壇者それぞれの立場からの見解を求め、議論の展開を促した。
〇加藤康子氏
昨年、青森県内で国土の利用実態を調査したところ、その結果は衝撃であった。青森県はエネルギーの前線基地で多くの原子力発電所があることに加え、自衛隊や米軍基地など重要施設があるが、そこに外国資本の再エネ施設が多数接近して所在するという実態がある。
行き過ぎた脱炭素(カーボンニュートラル)政策が、外資による再エネ施設の急拡大をもたらし、さらに多くの再エネ事業者には中国企業の進出が目立っていることは懸念材料である。
再エネの風力や太陽光発電施設は、レーダーの機能阻害を与えることが分かっている。また外国資本が所有する広大な土地が、有事の際にどのように利用されるか分からないというリスクがある。仮に隣接する自衛隊・米軍施設に危害を加えるなら、内なる大きな脅威となる。
主権と領土保全のためには、国土、国民、統治機能、インフラを懸念国の外資に委ねないことが重要である。青森県の例は氷山の一角である。子供たちの世代に豊かな国土を残していくことは私たちの使命である。
〇岩田清文氏
加藤さんがご指摘された問題を、安全保障の観点から深堀してみたい。青森県内には、太平洋側の三沢市に空自と米空軍が所在し、日米同盟にとって非常に重要な飛行場施設がある。また陸奥湾の大湊には海自の艦艇と航空機の基地が所在する。その大湊の北の山頂には空自大湊分屯基地があり、警戒監視レーダーにより、日本海・太平洋を見張っている。さらに日本海側には空自車力分屯基地があり対空ミサイルを配備している。その近傍には、弾道ミサイルを警戒監視する米軍車力通信所もある。
問題認識の一つとして、米軍基地、自衛隊基地・駐屯地及び原子力発電所等の機能発揮が挙げられる。平時から有事における、レーダー干渉等の物理的障害、情報搾取。そしてグレーゾーンから有事においては、再生エネルギー施設を活用した妨害・破壊活動の懸念がある。再エネ施設にある風力発電の風車は、レーダー機能の障害となるばかりか、航空機の離着陸への障害となりうる。情報搾取という面では、無線通信を傍受される可能性もある。さらに妨害破壊活動の面では、太陽光発電所の広大な敷地からドローンが操作されて重要施設が攻撃されるリスクもある。
二つ目の問題認識は、電力供給系統の被支配化である。中国が進める電力の一帯一路化が懸念される中、中国資本による再エネ施設からの電力供給は、中国の意図により電力供給が停止される危険性がある。このような懸念は、青森県の日照時間が全国最下位にもかかわらず、広大な太陽光発電所が設置されている理由に乏しいことからも理解できよう。
この問題認識にたち、次のことを政策提言したい。
まず平時から米軍・自衛隊地域周辺にある土地使用の規制を強化することである。防衛省は「防衛・風力発電調整法」により規制を強めているものの、発電事業者との調整が整わない場合の規定が緩い。また、現状、米軍基地、自衛隊基地・駐屯地、原発の周囲1km内にある土地の取得は、特別注視区域として調査はできるが、それ以上の規制強化は難しい。規制の内容、距離に関しても強化が必要である。
次いで、グレーゾーン事態以降有事に至る段階においては、緊急を要することからも、土地使用の差し押さえなど、より強くかつ実効性ある法規制及び実行措置が必要である。
〇宮本雅史氏
新聞記者としての取材体験に基づいて、この問題についてお話しする。まず皆さんに問いたいのは、この土地問題を自分のこととして捉えているかということ。四面を海に囲まれた島国・日本は国境の意識が少ないとされる。他方、タイ・ミャンマー・ラオス・カンボジアを歩いた時感じたことは、国境のメコン川沿いには銃を構えた軍人が1日24時間常駐して警備する。同じ文化を共有する地域でも、陸上には国境が厳然として存在するという事実を国民は身近に意識するのである。
一方、国境の意識が薄い日本では、国土が侵食されても気が付かない。例えば、日本の対馬で定点観測を始めると、興味深いことが分かってきた。少しずつ外国資本により土地が買われ、最初は点と点だったのが、だんだんと面になっていくのである。いざ有事の時は、どうなるのか想像がつかない。五島列島、佐渡、礼文などにも定点観測を広げたが、どんどん買われる地域が拡大している。土地を買われ続けている実態を新聞に書いても読者には響かない。それは読者が自分のこととして感じないからだろう。
2005年、国交省主催の研究会で、中国人事業者から北海道の人口を1000万人(200万人が中国人移住者)にするため不動産を買う外国人を優遇するなどの大胆な提案があり、衝撃を受けた。それから13年たった2018年、中国の李克強首相が札幌に来たことを契機に、北海道の門戸が開放され、土地の買われ方や規模が大きく変化した。その流れは北海道、東北に限らず九州にも拡大している。恐るべき流れは止まらない。
【パネリストの討論】
加藤:再度申し上げるが、国土、国民、統治機能、インフラは懸念国に委ねないことは国家の基本である。しかしわが国は、重要インフラである電力の4~5割を再エネで賄う計画で、その半分以上を外資が占めている。その再エネを推進するための再エネ賦課金は国民が負担している。再エネは、お天気任せ、風任せで、国家の屋台骨を支えるには脆弱極まりない。外資を利するだけの再エネは、国を豊かにしないばかりか、安全保障上のリスクは計り知れない。
宮本:再エネの中でも洋上風力発電は見落とされがちだが非常に重要である。再エネ海域利用法では業者の選定は入札方式で、たとえ落札しなくても全ての企業に海洋データを提供するという。落札するとその海域を30年間、自由に利用できるばかりか、設備維持のための拠点港も利用できるという。つまり日本列島は、所有権の及ばない海洋においても、外国資本が使いたい放題できる状態だとも言える。
岩田:国の安全保障は国家の責任だが、土地の問題は地方自治が担うという側面は否めない。それ故に、地方・市町村のレベルにも安全保障観を醸成していかなければ、この問題は前に進まない。それをリードしていくのも政治の責任ではないだろうか。
宮本:地方では高齢者が固定資産税を払えず山を売るという状況で、そこに外国資本が目を付ける。このような場合、土地利用の規制強化だけでは解決できない。だから経済支援と土地規制が両輪となる必要がある。
加藤:わが国の再エネ政策には巨額の予算をつけるが、日本の排出するCO2は世界全体でいえば3%でしかない。それを減らして効果があるのか大いに疑問である。予算の無駄遣いとしか言えない。
【会場との質疑応答】
Q:再エネ問題の一つ・メガソーラーは大規模に土地を利用して、大電力を発生させるが、有事にはブラックアウトを引き起こすことが可能である。このような観点からメガソーラー施設に行政目的の立ち入り調査ができる法整備が必要と思うが如何か。
A:今後議論が進むことが期待されるスパイ防止法の対象に、再エネ施設が入ることも必要と考える。
Q:地方では町工場の屋根を太陽光パネルにすると大きな融資を受けることができる。地方の金融機関が再エネの推進役になっているのは何故か。
A:政府の後押し(優遇措置)が原因の一つである。脱炭素を錦の御旗にして巨大な歯車が回っており、急に止められない状況とも言える。これを本気で変えるには国民の後押しが必要である。
櫻井理事長は最後に、自分たちが想像する以上に国家の危機が身近に迫っている中、国基研では月1回の頻度で、与党・野党に拘りなく政治家との研究会を開いており、今回の国土の問題も政治の世界と共有していくことが日本国を前に進めるためには重要であるとし、本セミナーを総括した。 (文責:国基研)





