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2025.12.08 (月) 印刷する

「いま対応すべき中国のレアアース戦略」 細川昌彦・明星大学教授

国基研企画委員の細川昌彦・明星大学教授は、12月5日、定例の企画委員会において、中国のレアアース戦略について発表し、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。機微な内容を含むため概要のみを記す。

【概要】
レアアースに関する米中対立は当面解決の目途が立っていないが、わが国はこの状況をしっかり理解して対応しなければならない。
まず念のため簡単にレアアースについて説明しておく。レアアースは産出量が少なく抽出が難しいレアメタル(希少金属)の一種で、全部で17種類あり、ハイテク製品の生産には欠かせない。世界の中で中国が生産で6割を、精製で9割を占めているが、その理由は豊富な鉱床だけでなく環境規制が緩いという側面があることは否めないが、当面その状況に変化は認められず、これを前提に話を進める。

〇米中貿易戦争の構図が変化
米中貿易戦争は、米国の一方的関税に対し中国が報復関税をかけるという構図から、米国の先端半導体輸出管理に対する中国のレアアース輸出管理へと既に移行している。

中国は米国への対抗措置として、レアアースの輸出管理を着々と実施してきた。当初は2020年の輸出管理法を制定しガリウム、ゲルマニウム、アンチモンなどを、2024年にレアアース管理条例により供給網全体を統制し、2025年4月にジスプロジウム、テルビウム、イットリウムなど7種のレアアース規制を具体化し、10月にエルビウムなど5種のレアアースに拡大した。

その中で、10月30日に米中首脳会談が行われた。その結果、米エンティティリスト(50%以上子会社ルール)の1年延長と、中国のレアアース規制(10月規制)の1年延期が取引されたが、中国の用意周到に対し米国の場当たりの対応が見てとれる。根本的な解決は先送りされたように、米中対立の主戦場はレアアースである。

〇中国の狙いはサプライチェインの独占
中国がレアアースを輸出規制する目的は、前述のような外交的取引材料にする他、サプライチェイン全体を掌握するため技術情報や顧客情報を入手、あるいは外国企業を国内に誘致し技術を搾取することなどである。

例えば、ガリウムのサプライチェインの流れは、中国が産出するガリウム地金を日本企業が入手して窒化ガリウムやヒ化ガリウムにしてLED照明やスマホなどの製品の製造企業に売るという流れがある。その際、日本企業に対して輸出許可の申請の際に、顧客情報や技術情報を要求され、渡してしまうという事態が生じている。また供給することを誘致の材料として技術を持った日本企業を中国国内に進出させ技術を入手しようとする事例も現に起こっている。かつての高性能磁石がそうだ。

〇いま日本が対応すべきはコスト管理
さて、この状況を転換するためには、供給サイドと需要サイドに対策が求められる。まず、供給サイド対策として中国に頼らない供給源を確保するために鉱山開発、精錬工場への投資を行う。これも必要なことだが、時間がかかり即効性は期待できない。これに対し中国はこうした動きが出てくるとこれをけん制するために安値攻勢を仕掛けて、より中国依存させようとする。だから、需要サイドで部品メーカーが割高になっても購入するとのコミットメントを行うことで上流での投資が促進される。例えば、政府による企業向け補助金の使い方に調達の多角化を条件とすれば、需要サイドの企業の調達の行動変容を促せるのではないか。

先般の日米首脳会談で交わされたレアアース供給網整備の覚書で重要な点は、採掘及び加工への投資もさることながら、価格メカニズムにあるのはそうした背景だ。

つまり、採掘・加工・取引のコストを反映する高い水準の市場を構築し、それを支援する価格面での措置を行い、サプライチェインを確保する。これは2国間だけでは効果が薄いので、国際的パートナーとともに取り組むことも明記された。効果を発揮させるため、早期の具体化と実施が期待される。 (文責・国基研)