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2025.12.23 (火) 印刷する

『医療DXとサイバーセキュリティ』 松本尚・デジタル大臣

医師でもある松本尚デジタル大臣兼内閣府特命担当大臣(サイバー安全保障担当)は、12月19日、国家基本問題研究所の企画委員会にて、「医療DXとサイバーセキュリティ」と題して講演し、その後櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見を交換した。

【概要】
●医療DXとは

現代の日本は、世界に先駆けて超高齢社会に直面しており、国民の健康寿命の延伸のみならず、将来にわたる社会保障制度を持続可能とし、全ての国民が安心して暮らせる政策の実現が求められている。そのため特に、医療・介護・教育・交通分野の充実は欠かせない。医療DX(医療分野のデジタルトランスフォーメーション)は、これら準公共分野のデジタル化の一つであり、医療データの連携と活用が進めば、サービスの効率化・質の向上が大いに期待できる。

・マイナカードは医療DXの入口
医療DXの入り口として、マイナンバーカード(以下マイナカード)が重要な位置を占める。すでに国民の保有率が8割を超え、健康保険証がマイナカードを基本とする仕組み(マイナ保険証)に移行し、カード自体の普及は進んできた。しかし折角普及しても、それを利活用する道はいまだ開拓の途上である。

マイナ保険証の利用が進めば、個人の医療情報を全国の医療機関・薬局へ提供することが可能になり、さらに、全国医療情報プラットフォームの構築により様々なメリットが発揮される。マイナ保険証があれば、カード一枚で全国どこの医療機関でも受診でき、また、同じ医療情報が共有されることで、既往歴が分かり、検査の重複が避けられるなど、全体として医療サービスの質と量が向上する。

・カードが普及しても医療DXは遅れている
一方、まだ医療DXが進んでいるとはいえない理由に、医療機関側で電子カルテの整備が進んでいないという実態がある。さらにセキュリティの確保、他の医療機関との連接なども遅れている。これを推進するには財源を確保して、全国8千の病院、10万のクリニックに順次浸透させていく必要がある。

これらの施策のみならず、今後の医療DXには、オンライン診療、緊急搬送時の利活用(マイナ救急)、電子処方箋を使った遠隔地利用拡大、手術のロボット化・遠隔化・AI化への応用などが期待できる。

●サイバーセキュリティ
もう一つの課題はサイバーセキュリティである。これは、サイバー空間(電磁的なデータや情報が飛び交う仮想空間)への攻撃を防御することをいう。サイバー空間は、私たちの実生活に深く大きく入り込んでいる反面、実体が見えない領域だが、物理的な武器を使うことなく電子信号のみで発電所、銀行、鉄道、航空、病院などの重要インフラを停止することができる。

サイバー攻撃の手法は、攻撃者が保有する機器から直接行われるのではなく、乗っ取られた機器(いわゆる踏み台)を通じて行われる。その踏み台は何台も重ねられることから、複数の海外拠点を経由している場合が多く(約9割)、攻撃者の発見が極めて困難という特徴を持っている。

・国の対策は緒に就いたばかり
政府の対策の一つとして、被害防止を目的とした「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律(サイバー対処能力強化法)」及び「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(サイバー対処能力強化法整備法)」が本年5月に成立したばかりである。それによると、通信を監視し攻撃の予兆を検知したら、無害化措置を警察あるいは自衛隊が実施するというものである。基幹となる重要インフラ事業者とは事前に同意を取り、情報を共有し、加えて第3者機関である「サイバー通信情報監理委員会」を設置し、それらの運用を監督することとしている。

また、対象となる基幹インフラ事業者は、経済安全保障推進法で規定され、現在15業種、257事業者で、インシデント報告が義務付けられ、他の重要インフラ事業者2万社以上と区別して特定している。その中で現在、医療機関は基幹インフラ事業者でないことから、医療DXの進展とともに安全保障上の観点からも基幹インフラとすることが必要である。

いずれにしても、医療DXやサイバーセキュリティは、担当大臣としてスピード感をもって推進していきたい。

【略歴】
1962年、石川県金沢市出身。1987年金沢大学医学部卒業。専門は救急・外傷外科学、災害医療。日本医科大学救急医学教授、日医大北総病院救命救急センター長などを経て、2021年の衆議院議員選挙で初当選。2025年10月に成立した高市内閣において議員2期目でデジタル大臣に就任。日本医科大学特任教授。千葉県医師会顧問。フライトドクターとして医療に当たる日本のドクターヘリによる救命救急医療の第一人者。産経新聞「正論」執筆メンバー。 (文責国基研)