公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2014.05.07 (水) 印刷する

テロ公式情報が封殺するウイグル難民問題 三浦小太郎(評論家)

 4月30日、新疆ウルムチで起きた爆破事件を、中国公安当局は「ウイグル独立勢力によるテロ事件」と断定した。筆者は事件の真相について判断できる情報を持たない。しかし、中国政府自身による「ウイグル・ジェノサイド」「国家テロ」が、いまウイグルから東南アジアへの難民流出をもたらしていることを強調しておきたい。中国政府は自らの行為を隠すために、テロ報道を利用しているのだ。
 3月14日、タイにて200人以上のウイグル難民が保護されたことが報じられた。しかし、実はウイグル難民はこれだけではない。さらに危険な状態で、数千人のウイグル難民が東南アジア諸国に潜伏、或いは逮捕・収容されているのだ。その中には妊婦や子供が多く含まれており、不衛生な環境で病死した子供や、妊婦が留置場で、病院に行くこともできず出産を強いられたという情報すらある。彼らはウイグル語しかしゃべれず、現地のウイグル人や支援者のもとに集団で匿われる中で、伝染病の危機にもさらされている。
 一刻も早い治療や保護が必要なのだが、難民自身も恐怖から外部に救援を求めるのをためらう傾向があり、彼らの安全を守るため公的に救援を求めることも難しい。支援者たちがひそかに救援体制をとりつつあるが、まだ具体的に発表できる段階ではないのが現状である。
 新疆での事件をテロと宣伝する中国の偽善と非道を最も明らかにしているのは、中国政府の「テロ」「ジェノサイド」から逃れ、子供たちの未来を守るために脱出した難民たちの姿である。