朝鮮半島有事に際しての在日米軍基地からの米軍出動について「日本が了解しなければ韓国に救援に駆け付けることはできない」趣旨を安倍首相が国会答弁したとして、問題視する記事を韓国の聯合ニュースが配信した(2014年7月16日付)。
同記事によれば、韓国軍関係者が、「朝鮮半島を直接防衛する役割を持つ在韓米軍が紛争地域に投入されるには韓国政府と協議し、了解を得なければならないが、在日米軍は異なる」「日本政府が朝鮮半島有事の際に、在日米軍の投入について介入できる根拠がない」などとコメントしたという。
まず基本的事実を押さえておこう。1960年の日米安保条約改訂の際の岸首相・ハーター国務長官交換公文で、「合衆国軍隊の…日本から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」とする、いわゆる「事前協議」規定が置かれた。
その後、1969年11月21日、沖縄返還合意に当たってワシントンを訪れた佐藤栄作首相が、「万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため、米軍が日本国内の施設、区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては……事前協議に対し前向きに、かつすみやかに態度を決定する方針であります」との演説を行った。
すなわち、朝鮮有事の場合は「事前協議に対し前向きに、かつすみやかに態度を決定する」が日本政府の公約であり、それ以上でも以下でもない。
韓国政府が、ありもしない慰安婦強制連行を掲げ、国際的な日本中傷キャンペーンを展開し続けるなら、日本世論の大勢は、「なぜ、日本国民の生命財産を危険にさらしてまで、韓国を軍事的に支援せねばならないのか。事前協議でノーと言うべきだ」との方向に傾くだろう。
韓国が慰安婦問題で「良心的日本人」と位置づける左翼勢力は、そもそも在日米軍の存在自体に反対で、朝鮮有事の際の在日米軍出動など「絶対反対」という姿勢で一貫している。それに対し、安倍氏を含む日本の保守派は、「事前協議に対し前向きに、かつすみやかに」イエスと言う立場を暗黙のうちに明らかにしてきた。リスクはあっても抑止力強化につながるからである。
集団的自衛権の解釈変更をめぐる世論の動向に鑑みても、日本の首相が米軍の戦闘行動に積極協力するにはかなりの政治的エネルギーを要しよう。
ところが、他ならぬ韓国がその足を引っ張っている。韓国の保守派にとって「日本軍による慰安婦強制連行はフィクション」と声を上げるのは、今や簡単ではないかも知れない。しかしせめて、朝鮮有事に関し協力的なのは日本国内の(韓国のおかげで減りつつあるとはいえ)どの勢力であり、非協力的ないし妨害的なのはどの勢力なのか、そしてその各々と慰安婦問題の関わりはどうなのかを発信していく責任はあろう。でなければ、日本の保守派は韓国の保守派に深く失望することになる。事態は重大な岐路に差し掛かっている、と韓国の友人たちに伝えたい。
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