公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.02.24 (金) 印刷する

的外れな国会の「戦闘」論議 島田洋一(福井県立大学教授)

 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊の日報に「戦闘」の文字があったことに絡み、稲田朋美防衛相が2月8日の衆院予算委員会で、「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と説明したことを一部野党が不適切と追及し、辞任要求にまで発展した。
 PKOは、紛争当事者間に停戦合意が成立していることが、日本の「PKO参加5原則」に限らず国際的にも活動開始の条件であり、停戦合意が破れたと言える「戦闘」状態が発生したなら、自衛隊は淡々と撤退すればよい。ここに憲法に絡む要素はなく、国際的にも何ら批判の対象とはならない。
 「戦闘」で真に問題にすべきは次の状況だ。
 2015年9月に成立した新安保法制で「重要影響事態」という概念が導入された。「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」を指し、例えば朝鮮半島で緊張が高まり、戦争前ではあるが危険な状況―などが該当するという。
 新安保法制では、この状況下で、米軍等への「後方支援」(弾薬の提供、戦闘作戦行動のため発進準備中の航空機に対する給油・整備等)が合憲とされ、実施可能となった。ただし武器の提供はできない。なぜ弾薬はよくて、「武器」は駄目なのか常識人には理解不能だが、それは比較的小さな論点である。

 ●心ある野党なら問題にすべきこと
 大きいのは、他国軍への後方支援は、「現に戦闘行為が行われている現場」では実施できず、それゆえ、戦闘行為が発生した場合、またはそれが予測される場合には、自衛隊部隊は実行中の支援活動を停止するとされている点だ。
 戦場での他国軍との「一体化」は違憲というわけだが、これは国際的には「敵前逃亡」とみなされるだろう。捜索救助活動についても、遭難者(脱出した米軍パイロットなど)が既に発見され、救助を開始しているときは継続できる(新安保法以前は、それすらできず、救助を止めねばならなかった)と一定の改善は図られたものの、救助開始前ならば活動を止めねばならない。
 トランプ氏ならずとも、米国民一般の理解を得るのは難しいだろう。心ある野党なら、こちらの「戦闘」規定、すなわち「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」(重要影響事態)において活動する米軍への後方支援を、「戦闘」が発生した途端停止するという規定をこそ問題にし、憲法改正に向けた安倍首相のリーダーシップを求めるべきだろう。