公益財団法人 国家基本問題研究所
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2021.01.08 (金) 印刷する

「数字で読む中国経済」 新宿会計士

 金融評論家の新宿会計士氏は1月8日(金)、国家基本問題研究所企画委員会において、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員と意見交換した。

【概要】
日本国内では日中友好論が語られる機会が多い。その内訳は、一衣帯水論、世界の工場論、巨大市場論に大別される。

一衣帯水論とは日中は地理的・歴史的に近い関係にあるから、切っても切れない関係だというもの。しかし、それは実際の関係の深さ、親密さを意味しない。世界の工場論は中国には安価で豊富な労働力があり、製造業の中国進出は当然というもの。しかし、現実には製造コストは上昇している。巨大市場論は中国14億人の市場を指す。しかし、貿易統計を見る限り、中国が日本にとっての顧客でなく、寧ろ日本が中国にとっての顧客といえる。

この2国関係を数字の流れで見てみると分かり易い。経済活動の基本構成要素は「ヒト、モノ、カネ」といわれる。

「ヒト」の面では、訪日外国人のうち中国人の割合は30%、逆に訪中日本人は全出国者の15%で、中国からの人的流れが圧倒的に多いということ。「モノ」の面では、対中輸出高は日本の輸出高の19%、逆に対中輸入高は23%、対中貿易収支は3兆7千億円の赤字とのこと。日本の輸入超過の現実は巨大市場論に大きな疑問符を投げかける。また、両国の直接投資額は、それほど大きなものではなく、「カネ」の流れはそれほど重要ではないことがわかる。

一般にサプライチェーンは広範囲に及ぶため、日本経済が中国に依存する側面がないとは言い切れないが、重要な関係であることは確かだ。しかし、中国でなければいけないものは、ほとんどないのが実態である。

さらに、日中関係で大きな問題は、基本的価値観という決定的な違いが両国にはあることだ。自由主義、民主主義、法治主義という点では、中国は共産党一党独裁で人治が支配する。基本的人権を無視し、平和主義より軍事主義を優先するのが中国であり、わが国の価値観との隔たりは大きい。

最後に、経済を政治利用する中国は、たとえば在韓米軍のTHAAD配備に対し韓国に経済制裁をかけ、人的往来も激減させた。対中依存度を高くすることのリスクは計り知れない。

【略歴】
都内の4年制私大出身。国家Ⅰ種(経済職)合格、2004年、公認会計士開業登録。監査法人や金融機関勤務を経て、都内で起業するかたわら、ペンネーム新宿会計士として専門評論ウェブサイト「新宿会計士の政治経済評論」(https://shinjukuacc.com/)を運営している。著書は『数字でみる「強い」日本経済』(ビジネス社2020.7)など。

(文責 国基研)