公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

国基研ろんだん

  • HOME
  • 「国基研ろんだん」の記事

2021年7月の記事一覧

 「米国の衰退」を確信する中国共産党が、このところ戦術的後退のポーズを見せはじめた。国際社会から香港情勢やウイグル弾圧、武漢ウイルス対応への批判が高まり、これ以上の対中包囲を避けるための一時的な退避である。他者を欺く外交は、「米中新冷戦」演説といわれた2018年10月のペンス前副大統領による対中非難直後にも採用されている。ただし、戦術的後退は対中批判をかわすための詐術であって、政策転換ではないから...

続きを読む

 北朝鮮は核ミサイルでわが国を攻撃する能力を既に保有している―。7月に公表された令和3年版防衛白書はそう書いた。衝撃的なこの内容について、マスコミはほとんど報じず、国会でも論じられなかった。危機を危機と感じられないこの安保不感症に戦後日本の病理をみる。 防衛白書も随所で危機指摘 日本を狙う北の核ミサイルについて白書は、4カ所で繰り返し書いている。まずそれを確認する。 白書は、第1...

続きを読む

 5月21日に北京政府が発表した「チベット白書」なるものに対して、1人のチベット人として真実を述べさせていただく。白書は嘘の連続だが、特に重要な3点について異議を唱えたい。 「17条協定」のまやかし 第一に北京政府は、白書のタイトルを「チベットの平和解放と繁栄発展」としているが、「解放」という言葉そのものが偽りである。 1949年の中華人民共和国成立の翌年、チベットを人民解放軍が...

続きを読む

 政府が見直しを進めている国の新たな「第6次エネルギー基本計画」原案概要が明らかになった。報道によると、その骨子は ①2030年度の総発電量に占める太陽光や風力など再生可能エネルギーの比率を、現計画の22~24%から36~38%に高める ②原子力については20~22%を維持し、「安全性の確保を大前提に、重要なベースロード(基幹)電源」と位置づけているが、新増設や建て替えについては明記せず、「可能な...

続きを読む

 イタリア・ベネチアで開かれていた主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は7月10日(日本時間11日未明)、新たな国際課税ルールで「歴史的な合意を成し遂げた」とする共同声明を採択した。 新ルールは、法人税の引き下げ競争に歯止めをかける15%以上の最低税率導入と、多国籍企業の税逃れを防ぐデジタル課税導入が柱になっている。新ルールは、経済協力開発機構(OECD)が7月1日に大枠合...

続きを読む

 5年前の7月12日、フィリピンと中国の間で争われた南シナ海の仲裁裁判で、中国惨敗という裁定が下され、当時は事態改善の期待が高まった。しかし、現実は期待通りには進んでいないようだ。 7月11日、ブリンケン米国務長官は改めて中国への非難声明を発出した。その内容は、「南シナ海ほど法に基づく海洋秩序が脅威にさらされている場所はない」との危機感を確認し、「5年前、国連海洋法条約の下で構成された仲裁裁...

続きを読む

 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が6月28日に発表した共同声明を読むと、中露は軍事同盟を避けながら、軍事的義務を伴わない「準同盟」の関係に入ったかにみえる。中露の結束は、歴史的、地政学的に日本の安全保障にとって脅威で、中露の対日共同圧力が今後強まりそうだ。 「核心的利益」を相互支援 両首脳は、2001年に調印された中露善隣友好協力条約が7月16日に20周年を迎えるのに際し...

続きを読む

 多くの国民が当時の自民党にお灸を据えるつもりで民主党に投票した平成21(2009)年の衆院選の結果、悪夢のような2年10カ月の日々が続いた。同じ轍は踏まないと過去3回の総選挙で安倍晋三前首相率いる自民党が大勝した。だが、この間に自民党は弛緩してしまったのか、「政治とカネ」の問題や相次ぐスキャンダル、各地の選挙区で起きている内紛、そして何よりも菅義偉政権のコロナ対策をめぐる混乱で国民の支持を失いつ...

続きを読む

 7月13日に公表された令和3年版防衛白書の記述で「イージス・アショアについては、2020年6月、配備に関するプロセスを停止した。同年12月、厳しさを増すわが国を取り巻く安全保障環境により柔軟かつ効果的に対応していくため、イージス・システム搭載艦2隻の整備を閣議決定した」と書かれている。 イージス・システム搭載艦2隻の整備が「柔軟かつ効果的な対応」であるかについては大いに疑問がある。 ...

続きを読む

 7月3日に発生した熱海の土砂災害に際しては、警察・消防・海保・自衛隊が救難活動を行った。彼らは、生存者を背負って救出する任務を帯びている。しかし、こうした危機管理や安全保障の責に任ずる人達に対する新型コロナウイルスのワクチン接種は、優先的に行われていない。熱海の土砂災害に関しては、多くのメディアがワイドショーで取り上げていたが、この件を指摘した識者は寡聞にして知らない。大雨による水害はこれから未...

続きを読む

 7月1日の中国共産党創建100周年に当たり、3年後の米大統領選で共和党の有力候補と目される政治家たちは、いずれも歯に衣着せぬ厳しいメッセージを出している。 常識と勇気ある米政治家のツイート まずポンペオ前国務長官のツイートである。 中共の100年は殺戮とジェノサイドの1世紀。これ以上に人を殺した政党はない https://twitter.com/mikepompeo/st...

続きを読む

 7月1日に櫻井よしこ理事長の「日本国の基盤・エネルギー問題」と題する講演会に参加し、その日の午前中に双葉町長の伊澤史郎町長とハッピーロードネットの西本由美子理事長の案内で、福島第一原発の敷地に隣接する双葉町の復興状況を詳しく視察することができた。 子供たちの笑顔をコンセプトに 2011年3月11日、福島県双葉町は、東日本大震災の地震と大津波の来襲、そしてそれに続く福島第一原発の事...

続きを読む

 政府の総合海洋政策本部参与会議(座長・田中明彦政策研究大学院大学長)は6月29日、現在の厳しい東シナ海の状況に対処するためには海上保安庁の巡視船や航空機の増強が必要だとする意見書を菅義偉総理に提出した。 しかし、増強の「強」には賛同するとしても、軍の機能、組織、訓練を禁じた現下の海保法25条の下での「増」は、税金の無駄使いだ。 海保法25条の限界 筆者は7月1日に某自民党国会議...

続きを読む