公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

国基研ろんだん

  • HOME
  • 「国基研ろんだん」の記事

2021年10月の記事一覧

総選挙さなかの日本を威圧するように、中国とロシアの海軍艦隊が「巡視活動」と称して列島をほぼ一周した。軍事行動による民主国家への威嚇行為は、1996年の総統選挙中の台湾に対し、中国が台湾海峡に向けたミサイル演習で揺さぶった海峡危機を想起させる。 あの時、台湾人は脅しに屈することなく結束を見せたが、安全保障に鈍感な日本の政治家たちの反応は鈍い。岸田政権は中露による威嚇行動に、日米同盟の抑止力強化...

続きを読む

衆院選は31日の投開票を目前に、各党の訴えが一段とヒートアップしているが、共産党の志位和夫委員長の外交・安全保障政策を聞いていると納得がいかないことが多い。   テレビの司会者が、拡張政策をとる中国に対してどう立ち向かうかについて問うと、志位氏は、国際法違反であると責め、国際世論に訴えて拡張を止めるべきだと答えている。 しかし、権威ある常設仲裁裁判所が、中国の南シナ海での埋め立てに関して...

続きを読む

世界的に原油や天然ガス、石炭のエネルギー価格が高騰を始めている中、「原子力発電所の進歩に関する国際会議」(ICAPP)が10月16日~20日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催され、筆者も総会での講演を頼まれ、オンラインで参加した。 この会議は、世界中の原子力コミュニティーのリーダーたちが、新しい原子力発電の展開と将来の方向性やニーズについて議論するフォーラムだが、すでに再生可能エネ...

続きを読む

防衛省は18日、中国とロシアの駆逐艦など計10隻が津軽海峡を通過したと発表した。領海への侵入はなかったというが、中露の艦艇が同海峡を同時に航行するのが確認されたのは初めてである。 同省統合幕僚監部によると、同日午前8時頃、中国艦とロシア艦各5隻が北海道・奥尻島の南西約110キロの海上で発見され、10隻はその後、東に進み、太平洋に抜けた後、大隅海峡を西行して東シナ海に入った。 ロシア極東...

続きを読む

北朝鮮は9月上旬から10月中旬の約1カ月余りの間に、相次いで最新ミサイル発射を行った。①9月11-12日「新開発した新型長距離巡航ミサイル」②9月15日「鉄道機動ミサイルシステム」③9月28日「極超音速ミサイル『火星8』型」④9月30日「新規開発の対空ミサイル」⑤10月19日「新型潜水艦発射弾道弾」―の5件だ。 なお、②だけがすでに実戦配備されていることを意味する軍による「射撃訓練」で、残る...

続きを読む

日本製鉄が大口顧客であるトヨタ自動車と電磁鋼板の提供元である中国鉄鋼最大手・宝武鋼鉄集団の子会社、宝山鋼鉄を特許侵害で提訴した。両社にそれぞれ約200億円の損害賠償を求めるとともに、トヨタに対しては対象製品を使った電動車の製造販売差し止めの仮処分を申し立てた。国内の鉄鋼最大手が、長年の盟友関係にある最重要顧客を提訴するのは極めて異例だが、この電磁鋼板は2050年カーボンニュートラル(二酸化炭素排出...

続きを読む

アフガニスタンからの撤収で戦術的な痛手を受けた米国は、すかさず戦略転換して「対中国リバランス(再均衡)」に舵を切った。途端にインド太平洋地域では、米中大国間競争がめまぐるしく回転を始めた。特に、インド太平洋の南シナ海や東シナ海で、米中が空と海で一触即発の火花を散らしている。特に中国軍機による台湾の防空識別圏への派手な侵入が耳目を集めるが、実際には米主導で対中包囲を恐れる習近平国家主席が国内の危機か...

続きを読む

安倍晋三元首相の対露外交が失敗に終わったことを受けて、岸田文雄首相は安倍氏の「2島返還」路線を改め、国是の「4島」に戻す意向を示唆している。当面、日露交渉が進展する可能性はなく、この機会に対露外交の再構築が望ましい。 岸田氏は官邸官僚に批判的 日露平和条約締結を悲願とした安倍氏は2018年、歯舞、色丹2島の引き渡しをうたった1956年日ソ共同宣言を基礎にした交渉でプーチン大統領と合意し...

続きを読む

9月28日、米上院軍事委員会で、「戦略的失敗」に至ったアフガニスタン問題をめぐる公聴会が開かれた。「戦略的失敗」とは他ならぬ軍制服組のトップ、マーク・ミリー統合参謀本部議長が、アフガニスタン撤退時の混乱を総括した言葉である。公述人は、ミリー氏の他にロイド・オースティン国防長官、アフガニスタンを含む中東地域を担当するケネス・マッケンジー中央軍司令官の軍政、軍令幹部3人であった。 2001年10...

続きを読む

10月4日、岸田文雄政権が誕生した。岸田首相は、これまでの成長に偏重した結果、格差を生んだ新自由主義からの転換を図り、「成長と分配」の好循環を実現するための「新しい日本型資本主義」を掲げる。 新政権には、コロナ禍の終息が依然不透明な中、コロナ感染拡大以前から日本経済の抱えていた課題、すなわち経済成長の回復と財政再建に抜本的に取り組む政策の立案、実行が求められる。「新しい日本型資本主義」がこれ...

続きを読む

またか。この報道を目にした時の私の最初の感想だ。大阪府摂津市で起きた3歳児熱湯殺人事件。犯人はシングルマザーの交際相手だった。こうしたシングルマザーの連れ子に対する交際相手による虐待死事件が多発している。3年前の2018年、東京目黒で起きた5歳女児虐待死事件もメディアに大きく取り扱われたが、その後もこうした事件は頻発しており、もはや感覚が麻痺してしまいそうなくらいだ。 警察、児相を責めても解...

続きを読む

CNNや米誌ニューズウイーク、NHKなどのほか、中国紙までが、中国各地の深刻な電力危機と工場への操業に影響が出ていることを報じている。猛暑とエネルギー価格の高騰が原因で、石炭火力発電でもこの危機が長期化する見通しだ。このような電力危機や停電は、我が国でも1月に発生した他、米国のカリフォルニア、テキサス両州のほか、オーストラリア、フランスでも多発している。 再エネ優先策も一因か 報道によ...

続きを読む

「我が国の民主主義が危機にあると、強い危機感を感じ、我が身を顧みずに立候補表明させていただいた」―9月29日の自民党総裁選後、当選した岸田文雄氏はこう述べた。強い違和感を覚えた。岸田氏には言いたい。「危機にさらされているのは民主主義ではなく、国家主権そのものである」と。岸田氏は早急に軍事力強化に取り組むべきだ。 「民主主義の危機」発言 「民主主義が危機にある」というのは、安倍晋三、菅義...

続きを読む

北朝鮮がミサイルを発射する度に、官房長官は「情報の収集・分析に万全を期す」「北朝鮮に対しては厳重に抗議する」と、北にとってみれば〝蛙の面に水〟の声明しか出さない。報道も金正恩が立ち会っていたのかとか、専門家の意見として何故この時期に発射したのかといった北の政治的意図等を分析するのに忙しく、最も肝心な「これらのミサイルにどう対処すべきか」といった議論が全くなされないのはどうしたことか。 迎撃難...

続きを読む