戦後の日本は、国際平和や国際交流、国際協力には熱心に取り組んできたが、国際情報戦を戦える人材育成には全く無関心であった。先の大戦でも日本は米国に情報戦の面で一方的に敗北した。その反省として情報面の強化を志したかといえばさにあらず、日米安保という湯たんぽの中で平和ボケを続け、情報は価値とみなされずにきた。
仕掛けられた情報戦に政府は受動的にしか反応せず、関係が悪化しないよう丸く収めようとしてきた。多くのマスコミが情報戦を仕掛けた側に同調的な記事を書き、それが世論に支持される風潮すらあった。
そして今、中国や韓国が広報する歴史認識・従軍慰安婦問題など事実でないものが事実として国際社会にまかり通るようになった。さらに政府は、他国の力による領土拡大策にも積極的な対応を回避してきた。
このような現状に対し、筆者は国際社会の最前線で活躍したい青年たちへの特別教育システム構築を提言したい。
安倍首相は、「国際宣伝戦を強化する」と、2014年2月28日の衆院予算委員会で述べた。それも大いに進めていただきたい。同時に「情報の価値」を尊重する教育と制度を作り、新人官僚の教育にもこのような観点に着眼した特別教育システムを構築してほしいものだ。
民間でも国際情報戦に対抗できる人材を育成すべきだ。日本を知り、外国人に日本が発信すべき情報や技術を身に着け、その上で外国の大学院への留学を支援し、語学を身に着け、当該国を知るとともに、多くのネットワークを作ってもらう。
育成後は国際組織の最前線で活用できる様々な民間の企業、組織が雇用できるような組織も必要になる。人材を育成する大規模財団のようなものを作り、青年にとってあこがれの進路とみなされるような機会を提供し、また社会に送り出す。このような財団を国家が支援することも望ましい。
教育には時間がかかる。それだけに待ったなしの対応が必要である。
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