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2017.07.07 (金) 印刷する

北のICBM成功は米国以上に日本の脅威だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 敢えて7月4日の米独立記念日に合わせて北朝鮮は高高度で打ち上げるロフテッド軌道により大陸間弾道弾(ICBM)を発射、成功させた。
 6月19日付の「ろんだん」で筆者は次のように指摘した。
「北朝鮮は4月15日に行なった軍事パレードで新しく登場させた弾道ミサイル5種類のうち、既にKN-17は4月29日に、火星12号は5月15日に、北極星2号は5月21日に、それぞれ発射・成功させた。残る2種類はICBMだ」
 今回、そのICBMである火星14号(二段式・液体燃料)が発射され、成功したのだ。次は複数弾頭を搭載したMIRV(Multiple Independently-targetable Reentry Vehicle)の発射試験も行うだろう。こうした事態が我が国の安全保障にどのような影響を与えるか。2点指摘しておきたい。

 ●早急に再検討必要な非核三原則
 北朝鮮が我が国を核弾頭付の弾道ミサイルで攻撃する場合、米国はこれまで政府要人が「核の傘」と呼ばれる拡大抑止で守ると約束してきた。しかし、自国の大都市が壊滅するような危険を冒してまで、米国が同盟国のために報復核攻撃を行ってくれるだろうか。特にアメリカ・ファーストを標榜するトランプ大統領であればなおさらのことである。日本政府は口先だけの約束を真に受けて、国民を犠牲にする愚は避けなければなるまい。
 6月1日に国家基本問題研究所を訪れた米シンクタンク「38ノース」の研究者は、「北朝鮮は2020年までに50〜100発の核兵器を保有するであろう」と述べていた。半世紀前の1968年に当時の佐藤内閣が表明した非核三原則(持たず、作らず、持ち込ませず)を堅持したまま、いまでも自国の安全保障を維持できるのか、早急に再検討すべき時にきている。

 ●ミサイル防衛にも専守防衛の呪縛
 ロフテッド軌道で高速に落下してくる弾道ミサイルはマッハ10にもなる。こうした超高速弾道ミサイルの迎撃に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)は無力だ。イージス艦搭載の迎撃ミサイルも、今回のようにロフテッド軌道で高高度に打ち上げられた弾道ミサイルには、到達できなくなる可能性が高い。
 従って、弾道ミサイル発射の兆候をいち早く察知する機能を備えた情報収集衛星と、発射源を攻撃できる対地巡航ミサイルの導入は急務であろう。
 5日に韓国が米軍と共同して発射訓練した玄武2号は北朝鮮に届く対地巡航ミサイルである。また中国海軍は数日前、中国版イージス艦である排水量12,000トンの055型駆逐艦を進水させたが、その垂直発射ランチャーには当然対地巡航ミサイルが装備されている。米イージス艦に至っては言わずもがなである。同じMk41垂直発射システムを装備している我が国のイージス艦だけが専守防衛の呪縛に囚われて装備していない現状は早急に改善する必要があろう。