4月25日、訪米中の自民党の河井克行総裁外交特別補佐が現地シンクタンクで講演し、北朝鮮に対して「2020年まで」と期限を切って、「完全な核放棄」を迫るべきだと訴えた。期限については、「アメリカ大統領選挙と東京オリンピックが開かれる2020年までとすべきだ」と敷衍した。
●なぜ「即時」でないのか
なぜ「即時」でないのか。これが最初に湧く疑問である。
米大統領選挙も東京五輪も、速やかに実現すべき北の核・ミサイル廃棄に関し、時期的な目途となる何の合理的根拠もない。もし米大統領がこのような発言をすれば、無責任な引き延ばし、さらには核問題の政治利用といった批判に晒されるだろう。従って米側当局者からは、同種の発言は一切出ていない。
河野太郎外相も4月20日、日本経済新聞のインタビューに対し、「2020年に米大統領選がある。(北朝鮮の非核化の期限は)遅くともそこまでだ」「トランプ政権、文在寅政権、安倍晋三政権のうちにやりたい」と述べている。
東京五輪に言及していない分、河井氏よりはましだが、やはり2年間は北が非核化しなくとも容認すると言っているのと同じである。
●無意識の譲歩なら問題だ
米側では、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)らが、リビア方式での北朝鮮の非核化を主張してきた。
リビア・モデルの特徴の一つは、合意から実施までのスピードの速さである。カダフィ政権が大量破壊兵器の廃棄を正式に声明したのが2003年12月19日。1か月後の2004年1月には、米空軍のC−17輸送機がリビアに飛び、核関連の最重要物資およびミサイルの誘導システムなどを海外搬出している。
続いて3月には、大型船舶を入港させ、ウラン濃縮用の諸機械、遠心分離器やミサイル本体、ミサイル起立・発車車両などをやはり国外搬出している。合意成立から実施に2年も掛けるような悠長な対応はしていない。
もちろん北朝鮮がリビア方式を素直に受け入れるとは思えないが、米側が速やかな実施に向けて圧力を掛けようとしている中で、なぜ日本の政府、与党の要人が2年も先送りを認めるような発言をする必要があるのか。
無意識に譲歩モードに入っているのでなければ幸いだ。