中国国営の新華社通信は5月23日「中国が最高時速600キロのリニアモーターカーのプロトタイプ(原型モデル)を発表した」と伝えた。中国は独自の開発技術だとしているが、本年2月28日の国基研「月例研究会」で自民党の萩生田光一幹事長代行は「日本のリニア新幹線の技術者がごっそり中国に引き抜かれてしまった」と語っていた。新幹線同様、中国はリニアモーターカーについても日本の技術を剽窃して開発を進めている可能性が強い。
●止まらぬ日本技術者の引き抜き
新華社によれば、リニアは今年の後半に稼働実験に入り、2020年から生産体制に入って2021年に総合的な実証が行われると言う。
日本のリニア新幹線が品川—名古屋間で開業するのは2027年である。日本のリニアは実験走行で時速603キロの世界最速を記録している。中国リニアの時速600kmは、それに匹敵する。
嘗て、日本の新幹線技術が川崎重工など日本の企業連合から、中国に技術供与されたが、中国は、それを独自に開発した高速鉄道システムとして、より安い価格でインドネシア等に輸出契約を結んでいる。原子力発電技術についても、三菱重工業、東芝、日立から中国に移転され、本家の日本では原子力発電技術が途絶えようとしている。
技術者にしてみれば、自分たちの技術が具現化され、しかも高い給料で雇われれば、相手がどこであろうと喜んで技術移転に協力してしまうであろう。しかし、その結果日本の海外における競争力は失われて行くのだ。
●技術移転強要には断固たる姿勢を
在中国の欧州連合(EU)商業会議所は20日、欧州企業が中国で技術移転を強要されるケースが増えているとする報告書を纏めている。また、今年の1月に米議会では中国の技術盗用を防止する組織を設置するための法案が、民主党のマーク・ワーナー、共和党のマルコ・ルビオ両上院議員の超党派で提出されている。
日本の場合、こうした技術移転の強要に対抗する法律を作成するとすれば経済産業省になる。2009年の第171回通常国会では、「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律」と「不正競争防止法の一部を改正する法律」が成立したが、これは筆者もメンバーであった「技術情報等の適正な管理の在り方に関する研究会」の成果であった。
日本は、米中貿易摩擦による経済の減速といった短期的な視野ではなく、長期的な見地から中国の知的財産盗取や技術移転強要に対して厳しい態度を示している米トランプ政権を支持していくべきではないか。