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2020.11.04 (水) 印刷する

日本学術会議と日本共産党の関係こそ解明を 有元隆志(産経新聞正論調査室長兼月刊「正論」発行人)

 菅義偉首相が日本学術会議の推薦した新会員6人を拒否した問題をめぐり、菅首相に対し就任直後にこの問題に手を付ける必要はない、あるいは政治的な労力を使うべきでないとの声が寄せられたという。メディアと「全方位」で付き合ってきた菅首相だけに、安倍晋三前首相を激しく批判してきたメディアの中にも期待感はあった。それでも、菅首相が6人の任命拒否を断行したのは、菅首相が掲げる「縦割り、既得権益、悪しき前例主義の打破」がこの日本学術会議にはそろっているからだろう。

説明ないのは学術会議の方だ

学術会議の人選をめぐっては、現会員が次期会員候補を選んで推薦した通りに任命される人事が続き、任命された会員は母体である学会の「利益代表」となってきた。中でも学術会議の元会長で、選考委員を6年間務めた広渡清吾・東大名誉教授(法社会学)は安倍政権下で、「安全保障関連法案に反対する学者の会」の呼びかけ人の一人で、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」にもしばしば登場していた。昨年の参院選では共産党候補との対談に登場し「安倍政治を倒すために、市民と野党の共闘に取り組んでいる」(京都民報2019年1月16日付)と述べている。

菅義偉政権となって、6人の任命を拒否されたため、学術会議側には混乱が広がり、政府に対し、6人が選ばれなかった理由を説明するよう強く求めている。

確かに、菅首相らが「総合的、俯瞰的」というだけでは抽象的すぎるし、わかりづらい。国会での論戦では、より丁寧な説明が求められる。

だが、同じことは学術会議側にも言える。約87万人いる科学者のなかで、会員の選考基準である「優れた研究又は業績がある科学者」がわずか210人しかいないことはありえない。学術会議の10月29日の記者会見では、「最終候補に漏れた科学者の間から『なぜ自分は選ばれなかったのか』という問い合わせがあったか」との質問に「あったとは聞いていない」と答えた。

学術会議は政権側には6人を除外した理由を説明するよう強く求めながら、「学問業績」のある多くの科学者から「新会員」を選考した理由の説明は自らすることはしていない。

朝日の言う「多様性」への疑問

朝日新聞は10月31日付社説で「法律が会員の要件とするのは『優れた研究又は業績』だけだが、多様性が大切だとしても、同じ大学に籍を置き、年齢も近い別の学者は任命されている。拒まれた人との違いはどこにあるのか。6人の中には多様性につながる女性や私大の教授もいる。そうした人材をなぜ排除したのか。論理の破綻は明らかだ」と、菅首相を激しく批判した。

果たしてそうだろうか。元日本共産党国会議員団秘書の篠原常一郎氏は月刊「正論」12月号に寄稿したなかで、6人について「いずれも安倍前政権の基本施策に反対する運動に熱心に取り組んでこられた」と紹介したうえで、そのうちの3人が民主主義科学者協会に参加していると指摘した。

篠原氏は略称「民科みんか」と呼ばれるこの協会について、「(昭和21年の)設立当初からマルクス主義の立場に立つ学者が中心となっており、少なくとも事務局、指導部は日本共産党の指導下にありました」と説明する。

そのうえで篠原氏は「日本共産党など左派勢力による『学術会議』看板の利用はそろそろ終止符を打たれるべきでしょう」と強調した。6人は朝日新聞が言うような「多様性」を持った候補とはいえないだろう。

菅首相が手を付けるまで長らくこの会議の異様さは浮き彫りにならなかった。大和大学准教授の岩田温氏が同じく月刊「正論」12月号で記したように「オールド・メディアを握っていれば世論を操作できる時代は終焉を迎えつつある」。自民党や国会の論戦で学術会議に関する議論を深めれば、この組織がいかに日本共産党の影響を受けてきたかが明確になるだろう。小手先の改革でなく、廃止に向けた議論をしてほしい。
 

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