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2021.06.01 (火) 印刷する

【韓国情勢】「よくわかる慰安婦問題」の韓国語版出版 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授・国基研企画委員)

 韓国の自由保守派ネットメディア「メデイア・ウォッチ」は4月16日に拙著「よくわかる慰安婦問題」(草思社)の韓国語版を出版し、それを記念して5月24日、私との長文のインタビュー記事をネット上で発信した(한국어)

インタビューはメデイア・ウォッチが比較的長文の質問を10、西岡に送付し、それに書面で答える形式で実施された。質問が長いため、インタビューというより、韓国保守ジャーナリストと西岡の慰安婦問題や日韓関係をテーマにした対談になっている。

すでに日韓の自由保守派の間ではこのような率直な議論ができるのだ。ぜひ、日本の自由保守派に読んで欲しいとねがい、その主要部分を以下、紹介したい。

過去の記事はこちら


単独インタビュー
「事実」で爆弾の雷管を除去する、韓日歴史EOD西岡力

爆発物処理班(Explosive Ordnance Disposal)のように事実を通じて歴史葛藤の雷管除去のために一生努力
 

爆弾のような韓日歴史問題の雷管を除去する根本的な解決策は「事実」だけだと論破してきた日本の知識人、西岡力教授が本紙のインタビューを受けた。インタビューは書面で行われた。

西岡教授は昨年12月24日「捏造した、徴用工のない徴用工の問題」に続いて今年4月15日「韓国政府とマスコミが語らない慰安婦問題の真実」を韓国で連続して発刊した。

彼は敏感な韓日歴史問題を扱う日本の知識人だが、韓国と韓国人に対する愛情が深い愛韓派だ。しかし韓国メディアは彼の主張に対して事実関係を問い詰めて論争するよりは簡単に彼を「極右知識人」と烙印を押すのが常だった。

彼は本紙とのインタビューで「30年この(慰安婦)問題の嘘と戦い続けて来ました」「日本の反日知識人が韓国の従北左派と組んで作り上げた嘘は特に、日本統治時代を知らない韓国人の中で巨大な城となってそびえ続けた」と語った。

続いて「まさか、私の戦いの記録であるこの本が韓国で出版される日が、私が生きている間に来るとは想像もできなかった」とし「嘘と戦っている韓国の友人たちに心から感謝する」と明らかにした。

彼は「強制動員説は日本の反日左派を代表する朝日新聞が1991年、社を挙げて展開した『女子挺身隊の名で朝鮮人女性20万人を強制連行した』とする『慰安婦強制連行プロパガンダ』の結果、日本社会を一時だまし、それが韓国に伝播して広がったもの」と説明した。

実際は「慰安婦は年季奉公契約を結んだ公娼の一種であることが、様々な資料から明らかになった」とし、彼は次のような根拠を提示した。

「彼女たちは性行為に対して対価をもらい、それを前借金の返済に充てていました。軍の慰安所では業者が搾取しないように厳しく取り締まりをしていたので、通常、契約期間の2年の間に前借金を返すことができ、多額の貯金や送金をしたものも多数いました。これは人格を認めず、売買の対象になる奴隷とは異なっています」

彼は、引き続き、慰安婦の証言が変化し続けていることと朝日新聞記事の誤報問題を具体的事例を挙げながら詳しく説明した。また、韓国内の従北左翼勢力が日帝時代に関して、どのような目的で様々な嘘をついているのかも提示した。

彼は「日本の自由保守勢力は、安倍晋三首相の発言に代表されるように、韓国による自由統一を支持する」とし「日韓の自由保守勢力は歴史問題では、アグリー·トゥ·ディス·アグリー(Agree to disagree、不一致を認め合いながら一致することを要求しない)という1965年の日韓基本条約の知恵に戻り、中国共産党の一党独裁と北朝鮮の独裁勢力とともに戦っていかなければならない」と強調した。

彼は1956年に東京で生まれ、国際基督教大学と筑波大学で韓半島地域について学んだ。さらに1982年から1984年まで、日本外務省専門調査員として駐韓日本大使館に勤めた。 1990年から2000年まで「現代コリア」編集長を務め、1991年から2017年まで東京基督教大学助教授と教授を歴任した。現在モラロジー道徳教育財団教授で歴史研究室長、麗澤大学客員教授だ。拉致被害者家族会を支援する「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)の設立に参加し、「救う会」会長、「歴史認識問題研究会」会長、「国家基本問題研究所」の研究員や企画委員としても活動している。

日本国内の著書は『日韓誤解の深淵』(亜紀書房、1992年)、『闇に挑む!拉致、飢餓、慰安婦、反日をどう把握するか』(徳間文庫、1998年)、『テロ国家・北朝鮮に騙されるな』(PHP研究所、2002年)、『拉致家族との6年戦争 敵は日本にもいた!』(扶桑社、2002年)、『日韓「歴史問題」の真実』(PHP研究所、2005年)、『横田めぐみさんたちを取り戻すのは今しかない』(PHP研究所、2015年)など20冊余りがある。

質問1 以前に別の本で扱われた徴用工問題と比較しても、この慰安婦問題は西岡教授の命と人生により直接的な関係がある問題だったという事実を今回の本を通じて知らされました。慰安婦問題の嘘を看破し告発した最初の知識人であり30年間この問題に取り組んできた知識人として韓国語版発刊の所感を明らかにして欲しいです。

答え 30年、この問題の嘘と戦い続けて来ました。その中で、日本の反日知識人が韓国の従北左派と組んで作り上げた嘘は特に、日本統治時代を知らない韓国人の中で巨大な城となってそびえ続けていました。

まさか、私の戦いの記録であるこの本が韓国で出版される日が、私が生きている間に来るとは想像もしていませんでした。嘘と戦っている韓国の友人たちに心から感謝しています。

質問2 韓国の慰安婦被害法は「日本軍慰安婦被害者」を「日帝によって強制的に動員され性的虐待を受け、慰安婦としての生活を強要された被害者」と定義しています。この本では(1)強制的に動員された(強制動員説)、(2)性的虐待を受け慰安婦としての生活を強要された(性奴隷説)、この二つを様々な根拠を挙げて否定しています。この機会にその主要論旨をわかりやすく説明して下さい。

答え 強制動員説は日本の反日左派を代表する朝日新聞が1991年、社を挙げて展開した「女子挺身隊の名で朝鮮人女性20万人を強制連行した」とする「慰安婦強制連行プロパガンダ」の結果、日本社会を一時だまし、それが韓国に伝播して広がったものです。

その時、朝日が根拠にしたのが①加害者である吉田清治証言②被害者である金学順証言③日本軍文書-の三つでした。しかし、それを一つ一つ検討すると強制連行の証拠として使えるものではありませんでした。

①の吉田証言は、日本軍の、済州島で女子挺身隊の名で朝鮮女性を強制連行して慰安婦にせよ、という命令を受けて日本軍と一緒に暴力的な連行とレイプを行ったというものでした。この吉田証言の悪影響で、1980年代から日本の歴史学会では女子挺身隊という勤労動員のための公的制度が、朝鮮では慰安婦強制連行に使われたという間違った学説を生み出しました。しかし、済州島の現地の新聞や秦郁彦先生の調査の結果、嘘証言と判明しました。朝日新聞も2014年に吉田証言を嘘と認め、記事を取り消しました。

②の金学順氏は1991年8月、初めて名乗り出た元慰安婦ですが、彼女は貧困の結果、母親にキーセン検番に売られ、検番の養父に連れられて中国の日本軍慰安所に行ったと最初から証言していました。ところが、朝日新聞の植村隆記者が「女子挺身隊の名で戦場に連行された元朝鮮人慰安婦」と彼女が話していない経歴を捏造し、そのことを私が1992年に指摘しました。その後、名乗り出た元慰安婦たちの証言も言うことが大きく変化したり、歴史的事実と合致しなかったりするものばかりで、強制連行の証拠として採用できないものばかりでした。

③吉見義明教授が発見して朝日が1992年1月に大きく報じた軍文書も、日本国内で軍の名をつかって民間業者が不法な慰安婦募集をしていることを取り締まって欲しいという内容で、朝日は「慰安婦に日本軍が関与していた証拠」と大きく報じましたが、日本人慰安婦を犯罪から守るという関与で、強制連行の証拠ではありませんでした。

性奴隷説は、私や秦郁彦先生の研究などにより強制連行が証明できなくなったあと、朝日や日本人左派弁護士・学者が言い始めたものです。しかし、慰安婦は年季奉公契約を結んだ公娼の一種であることが、様々な資料から明らかになっています。彼女たちは性行為に対して対価をもらい、それを前借金の返済に充てていました。軍の慰安所では業者が搾取しないように厳しく取り締まりをしていたので、通常、契約期間の2年の間に前借金を返すことができ、多額の貯金や送金をした者も多数いました。これは人格を認めず、売買の対象になる奴隷とは異なっています。

質問3 徴用工問題に続いて慰安婦問題も日本の左派知識人たちが主導して作り上げた歴史捏造だという事実に驚きました。特に韓国で権威ある日本のメデイアとして常に引用されてきた朝日新聞が慰安婦問題に関する「捏造の城」だったという点は驚くべきことです。主要なマスコミがこうした超大型外交惨事を引き起こした原因だという事実が明らかになったのなら、国民的不買運動や、政治的な責任を追究する何かがあってもおかしくないと思いますが、日本での動きはどうですか。性奴隷説を固守している吉見義明教授のような人も依然として影響力を持っていますか。

答え 朝日の慰安婦捏造報道に対する批判の声は2014年以降、かなりあります。朝日の部数はそのころから急速に減っています。しかし、彼らは女性の人権問題が事柄の本質だなどという詭弁を弄して責任を回避しています。

それどころか、朝日で慰安婦報道を担った植村隆・元記者が、捏造報道を批判した私やジャーナリストの櫻井よしこさんを名誉毀損で訴えるなどの悪あがきをしています。しかし、裁判は私と櫻井さんの勝訴で終わりました。

特に私の裁判では、私が植村氏の書いた金学順氏に関する記事を捏造と評したことについて「(植村は)意図的に事実ではないことを書いたことが認められる」として西岡の捏造という評価に「真実性が認められる」と判断しました(地裁と高裁判決)。つまり、朝日が最初に名乗り出た慰安婦に関する記事が捏造だと裁判所が認めたのです。しかし、朝日はその責任をまだ認めていません。これからも朝日への告発を続けるつもりです。

性奴隷説をいまだに固守している吉見教授の一般社会での評価は低くなりました。しかし、日本の学界は反日左派が強い力を持っているので、まだ、学会での地位は揺らいでいません。

質問4 元慰安婦として最初に名乗り出た金学順氏に対する特ダネ報道で慰安婦問題を触発した朝日新聞記者植村隆氏との訴訟で、結局、最高裁判所で最終勝訴されたと聞きました。この韓国語版の本の発刊の直前の良い知らせであり、一層意味深いと考えます。この訴訟の背景と内容についても少し説明して欲しいです。それ以前には金学順氏の弁護士である高木健一氏からも、やはりこの本の記述によって訴訟を起こされたと聞きましたが、その事情も一緒に聞かせて下さい。

答え 植村氏は1991年8月と12月に金学順氏に関する2本の記事を書きました。それに対して私は次の三つの理由で捏造記事だという批判をしてきました。

①話していない履歴を付け加えたこと。すなわち8月記事で植村氏は上述のように「女子挺身隊の名で戦場に連行された元朝鮮人慰安婦」だと書きましたが、金氏は自分の経歴を語る中で、当時から死亡するまで一度も、女子挺身隊という勤労動員制度の下で慰安婦にさせられたということは話していません。植村氏も彼女が女子挺身隊として連行されたのではないことを、記事を書いた時点から知っていたと認めています。

②繰り返し話していた経歴を書かなかったこと。彼女はくり返して自分は貧困の結果、母親にキーセン検番に売られ、そこでキーセン修業したあと検番の養父に連れられて慰安所に行ったと語っていましたが、そのことを隠しました。

③利害関係者だったこと。植村氏は日本政府を相手に賠償を求める裁判を起こした太平洋戦争被害者遺族会の幹部の娘と結婚していました。その裁判の原告の1人が金学順氏でした。自分の義母が関係している裁判が有利になるように事実に反する記事を書きました。

植村氏は2015年1月9日、「捏造」と批判され続け、家族や周辺にまで攻撃が及ぶとして、代理人として170人近い弁護士を立て、西岡と出版元の文藝春秋に対して計1650万円の損害賠償などを求める名誉毀損訴訟を東京地裁に起こしました。2019年6月26日、東京地裁はこの私の主張の①について真実性を、②と③について真実相当性を認めて植村氏の賠償請求を退けました。2020年2月6日に高裁が、2021年3月3日に最高裁がこの判決を支持して私が勝訴しました。

植村氏は記者出身であり、現在は朝日を退職して週刊金曜日という左派の週刊誌を出す出版社の社長兼発行人をしています。言論には言論で反論するという自由民主主義の原則を守らず裁判に訴えたやり方に対して批判の声が多く上がっています。

ご指摘の通り、私は金学順氏の弁護人だった高木健一氏からも名誉毀損で訴えられ、やはり最高裁まで行って2015年1月14日に勝訴しました。

高木氏に対して本書で私は、金学順氏の人権を本当に考えているなら、強制連行の被害者ではなく親に売られた被害者であることを知った時点で、裁判を止めるように説得すべきだったと指摘し、それをせずに金氏を先頭に立てて慰安婦強制連行だという嘘の主人公であるかのように使い、私が批判したら新しい原告を探しに行くなどという行動を取ったことを、「反日日本人」という言葉を造語して批判しました。

そのことなどを理由に高木氏は裁判を起こしたのですが、2014年2月東京地裁は「記述の前提事実の重要な部分が真実であるか、または真実と信じたことに相当な理由がある。公益を図る目的で執筆されており、論評の域を逸脱するものではない」として訴えを退け、東京高裁と最高裁もその判決を支持しました。

質問5 慰安婦問題の嘘はすでに金学順氏が最初の証言をした1992年と93年頃に西岡先生がまさに摘発されました。その後、数多くの知識人たちが賛反の論戦に加わって、概ね1997年頃には日本では「慰安婦の強制連行はなかった」が大勢になりましたね。このような論議を最終的に整理して秦郁彦氏の『慰安婦と戦場の性』が1999年に出されたものと思います。

ところが韓国では1990年代はもちろん、2000年代にも、2010年代にも一切、日本でのこのような論議が知らされませんでした。韓国で数多くの日本書籍の翻訳本が出ているにもかかわらず、韓国の言論と出版は「日本極右」というレッテルが貼られると、彼らの主張だけをそのまま紹介するだけで「論拠」は絶対に紹介しませんでした。韓国のこのような検閲文化と、率直なコミュニケーションチャンネルを築こうとする両国の努力不足が慰安婦問題の重要な原因になったと思いますがどう考えていらっしゃいますか。

答え 先に書いたとおり、韓国に強固に築かれた嘘の城があまりにも巨大に見えたので、慰安婦に関する私たちの主張が韓国で紹介される日は来ないと絶望していました。2019年の『反日種族主義』出版と慰安婦像撤去運動の開始、2020年の挺対協と元慰安婦の内紛などを経て、韓国の中に真実の上に日韓友好があるという信念に立つ心ある学者、ジャーナリスト、運動家、政治家が出現していることを心から喜び、敬意を表します。

質問6 立場表明文に過ぎない「河野談話」が韓国では慰安婦問題で強制連行説と性奴隷説を支持する「証拠の王様」として扱われています。欺瞞と強要によって出された自白(?)ではありますが、とにかく加害者側が自ら認定(?)したというものの影響は大きいですから。河野談話と関連して日本で継承、撤回、修正など多様な論議が出ていますが、西岡先生の立場はどのようなものでしょうか。一方、いまだに極少数派ですが韓国には「韓日慰安婦合意」も河野談話の延長線上にあり、歴史的真実による問題解決ではなかったと残念がる動きがあります。

答え 韓国をはじめとする国際社会で河野談話は誤読されています。河野談話でも日本政府は権力による強制連行や性奴隷説を認めていません。

ただ、当時の金泳三政権が補償は韓国で行うから強制性を認めてほしいと水面下で強く要求したので、外交文書としてわざと誤解を受ける余地を作る文書にしました。ところが、歴代の韓国政府がその約束を破ったので日本社会では強い嫌韓意識が生まれました。

日本政府は2019年に「外交青書」で強制連行、性奴隷、20万の3つの嘘について、明確に反論をし、その反論を外務省HPや国連等で繰り返し広報しています。日本は官民が協力して河野談話の誤読を止めさせるための国際広報に、より一層力を入れるべきだと私は考えています。

質問7 「河野談話」に引き続いて、やはりただの報告書に過ぎない「国連クマラスワミ報告書」も慰安婦問題で強制連行説と性奴隷説を支持する証拠としてしばしば挙げられる。クマラスワミ報告書は事実関係がひどくでたらめで慰安婦問題の真相を知っている人々の中で廃棄すべきだということについてほとんど意見の違いはないように思います。クマラスワミ報告書廃棄のために韓国、米国、日本の知識人たちや市民たちがともにできることがありますか。参考のため、やはり韓国で極少数派ですが「慰安婦被害者法」こそが強制連行説と性奴隷説の源泉であり、「国連クマラスワミ報告書」といっしょに廃棄しなければならないという運動もあります。

答え クマラスワミ報告書はすでに国連人権委員会(当時)に提出された歴史的文書です。そしてクマラスワミ氏もすでに国連調査官ではありません。ですから、たとえクマラスワミ氏が望んだとしても報告書を廃棄することはできません。

私は当時明らかになっていなかった研究成果を反映した新たな報告書を出させることが良いと考えています。報告書の上書きです。

今年1月、ソウル地裁が国際法に違反して、元慰安婦らが起こした損害賠償裁判で日本政府に賠償金の支払いを命じる判決を下しました。日本政府は裁判そのものが主権免除という国際法に違反するとして、最初から裁判に参加しなかったので判決は確定してしまいました。

もし、韓国国内の日本国の財産が差し押さえられることになれば両国関係は国交断絶直前まで悪化するでしょう。そのとき、日本は国際司法裁判所に提訴する可能性が高いです。一方、韓国の元慰安婦の中にも慰安婦問題を国際司法裁判所に持ち込むことを求める意見が出ています。

私は十分に準備した上で日本政府が国際司法裁判所での訴訟に臨み、そこで歴史的事実について十分な論証を行えば、強制連行・性奴隷説を否定する判決が出る可能性があると判断しています。それが出ればクマラスワミ報告書よりも断然権威がある国際文書になります。あるいは、事実関係については日韓の両論併記になるかも知れませんが、それでも判決に日本の立場がしっかり書き込まれれば、やはりクマラスワミ報告を事実上否定できると思っています。

質問8 今回の本を通じて、韓国では「日本の右翼の首魁」として扱われている安倍晋三前首相が、日本では日本の国益のために原則を守る勇気ある政治家だという評価を受けていることを知らされ、その理由も理解ができました。拉致被害者問題と慰安婦問題がどのように関係し、またこの問題によって安倍前首相が中国と韓国から非難を受ける状況と構造も理解できました。安倍前首相が退任したことと関係なく、彼の政治的遺産は今後の日本の外交安保問題に継承され続けると見えますが、いかがですか。韓国ではよく知られていない安倍前首相の日本内の影響力と立ち位置についても教えて下さると幸いです。韓国人もよく評価できる安倍前首相の肯定的側面を中心に。

答え 安倍晋三前首相は日本の歴代首相の中で唯一、首相在任中に韓国による自由統一を支持すると明言しています。2013年3月、首相公邸で安倍氏は韓国のジャーナリスト趙甲済氏のインタビューを受け、そこで次のようなやりとりがありました。

趙甲済 韓国には北朝鮮が行った核開発、強制収容所などの人権弾圧と拉致など国際犯罪を最終的に解決するには大韓民国が主導する自由統一を通じて北朝鮮政権を消滅させる道しかないという主張があります。 韓国主導の韓半島自由統一に対する総理の考えをお聞かせ下さい。

安倍 北朝鮮においてはまさに人権が弾圧をされているわけであります。私は朝鮮半島が平和的に統一をされて、民主的で自由な、そして資本主義で法の支配を尊ぶ、そういう統一国家ができることがふさわしいと、このように考えております。いずれにせよ、北朝鮮の現状というのは、文化的な生活を維持することを多くの国民ができないという状況になっている、そして人権が著しく侵害されているという状況に、私も胸が痛む思いです。

また、同じインタビューで安倍前首相は韓国マスコミが自身のことを極右と批判していることについてこう答えている。

趙甲済 韓国の言論は概して日本が右傾化されていると報道しており、一部言論は現日本政権を極右だと表現することさえしていますが、自民党が参議院選挙でも勝てば自衛隊の名称変更および集団自衛権行使のための改憲を試みるつもりですか。

安倍 よく韓国のマスコミとかは私の政策自体が極右という批判を受けるわけであります。私が、かつて前の政権において、防衛庁を防衛省に昇格をさせたこと、そして今、集団的自衛権の行使についての解釈の検討を始めたこと、そして、自民党において憲法を改正した後に自衛隊の名称を国防軍と改めることに決定をしたことに、そのような指摘を受けました。 私はかつてソウル大学で少人数の皆さんを前に講演をしたことがありますが、この時も「安倍さんは防衛庁を省に昇格をさせて集団的自衛権の行使を認めさせようとしている」と。まさに「日本を右翼的な軍国主義国家にするのですか」と聞かれたものでありますから、私はこう答えたのです。「では韓国は集団的自衛権が行使できないのですか、そして韓国の防衛をつかさどる役所は他の省庁より格が下の役所ですかと、そうではないですよね」と。まさにそれは韓国を含む多くの国々が考えている、あるいはとっている安全保障の体制に近づける行為に過ぎないわけでありまして、名称においても韓国も軍隊になっているわけでありますが、もし私の主張が極右であれば世界中の国々は極右国家でありましょう。

安倍首相のこの発言は、自身が2回目に首相になった2カ月後のものであり、朴槿恵大統領が大統領に就任した直後のタイミングのものです。この安倍メッセージに朴槿恵政権は真剣に答えませんでした。そのため、朴槿恵政権時代に日韓関係が改善しなかったと私は考えています。

質問9 拉致被害者の横田めぐみさんが13歳の未成年者だったため、それで暗闇の共産党勢力が追究を避けるために慰安婦問題で未成年者云々の捏造を強調したという思いを持ちます。慰安婦問題とセットで日本が批判されてきた南京事件問題もそうです。西岡教授の本を通じて、「現在の人権問題」を隠すために「過去の明らかでない人権問題」を引きずり出して議論の混乱を作り出すのが、まさに中国と北朝鮮の共産党が使う常套手段であることを知らされました。そうであるならば、慰安婦問題を確実に終結させるためにも、ただ嘘と戦うことだけでなく、韓国と日本が共同して拉致問題、北朝鮮人権問題をより攻勢的に提起しなければならないという教訓も得ることができると思いますが、どのように考えられますか。

答え 同感です。日本の自由保守勢力は安倍晋三首相の上記の発言に代表されるように韓国による自由統一を支持しています。日韓の自由保守勢力は、歴史問題ではアグリー・トゥ・ディスアグリー(不一致を認め合いながら一致することを要求しない)という1965年の日韓基本条約の智恵に戻り、中国共産党一党独裁と北朝鮮世襲独裁勢力と一緒に戦うべきです。

質問10 ハーバード大学のラムザイヤー教授の論文の問題で韓国では連日、マスコミの報道がなされています。その中で興味深かったものの一つが「韓国と日本、米国で公然と歴史修正主義者たちが猛威をふるっていて、彼らがお互いに支え合い協力しながらネットワークが作られている」という記事でした。修辞や表現はイデオロギー的な色合いがありましたが、各国の自由保守派を中心にした韓米日真実同盟が徐々に結ばれていることに対する、慰安婦問題で捏造を行ってきた親中、親北勢力の恐怖というか、そのようなものが反映されたと見ても良いと思います。ラムザイヤー教授の論文問題をうまく乗り越えれば韓米日真実同盟の最初の勝利になりそうです。日本でのラムザイヤー教授論文問題の議論がどのようになっているか知りたいです。また、この問題を逆説的にどのように肯定的に発展させられるかについて西岡教授の知恵も知りたいです。

答え ラムザイヤー論文に対する韓国と米国の言論と学者の批判の大部分は、すでに日本国内の論争で決着がついている問題が多いです。日本語で公開したらたちまち多くの批判が集まり、恥をかく水準のものです。その点について、日本の真実を尊重する学者、ジャーナリスト、政治家らはよく理解しています。その意味で、慰安婦問題に関する日本における研究成果を韓国語や英語にして紹介する作業が大変急がれます。今回の拙著の韓国語訳はその意味で時宜にかなっていると思います。
 

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