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2021.09.09 (木) 印刷する

29点の教科書記述正した菅内閣の功績 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授・国基研企画委員)

菅内閣がまた一つ、良いことをしてくれた。検定に合格し、使用されているか来春から使用が始まる5社の合計29点の教科書の不適当な歴史記述が訂正されることになったのだ。山川出版、東京書籍、実教出版、清水書院、帝国書院の5社が「従軍慰安婦」「(労働者)強制連行」に関する記述が不適切だと認め、9月8日付けで文部科学省が訂正を承認したのだ。

踏み込んだ4月の閣議決定

この背景には、4月27日、菅内閣が慰安婦問題と朝鮮人戦時労働者問題で重要な閣議決定を行ったことがある。維新の会の馬場伸幸衆院議員が提出した質問主意書への答弁として、「従軍慰安婦」という用語はたとえ「いわゆる」が付いても不適切であり、また朝鮮人戦時労働者について「強制連行」や「強制労働」という用語も不適切だと次のように明確に決定したのだ。

「政府としては、『従軍慰安婦』という用語を用いることは誤解を招くおそれがあることから、『従軍慰安婦』又は『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切である」

「『従軍』と『慰安婦』の用語を組み合わせて用いるなど、同様の誤解を招きうる表現についても使用しない」

「朝鮮半島から内地に移入した人々の経緯は様々であり、これらの人々について、『強制連行された』若しくは『強制的に連行された』又は『連行された』と一括りに表現することは、適切でない」

「国民徴用令により徴用された朝鮮半島の労働者の移入については(略)『強制連行』又は『連行』ではなく『徴用』を用いることが適切である」

「『募集』、『官斡旋』及び『徴用』による労務については、いずれも強制労働に関する条約上の『強制労働』には該当していないものと考えており、これらを『強制労働』と表現することは、適切ではない」

次の内閣も活用発展を

閣議決定は今後の教科書検定基準になる。すでに検定を終えている教科書に関しては教科書会社が申請すれば訂正が認められる。文部科学省は教科書会社に新たな検定基準となる閣議決定内容を説明し、訂正することが可能だと伝えていた。

今回、訂正が認められたのは中学校社会科1社1点、高校地理歴史科5社26点、高校公民科1社2点だ。

訂正される例は以下の通り。

「従軍慰安婦」→「慰安婦」

「(いわゆる従軍慰安婦)」との記述を削除

「強制連行された」→「徴用令などで動員された」あるいは「徴用された」

「(労働者)強制連行」「強制的に連行」→「強制的に動員」「動員」

わが国の学界、教育界は、いまだに反日左派が多数を占めている。その結果、歴史教科書でも常識に反するような反日自虐的な記述が多かった。それに対して志を持つ多くの関係者がさまざまなやり方で教科書改善運動を進めてきた。菅義偉内閣の閣議決定とそれによる教科書記述訂正は教科書改善に向けた大きな一歩だと言える。これを活用発展させていくことが次の内閣に与えられる使命だと強調したい。
 

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