5月9日付本欄で岩田清文氏(元陸上幕僚長)が「ロシアの弱体化示すウクライナ戦争」と題する示唆に富んだコラムを寄稿された。私は、ロシアの侵略に対してウクライナの愛国的な戦いがプーチンの当初の目論見をくじいたことによって、東アジアの安全が守られたという情報を入手しているのでそれを紹介したい。
早期占領なら中国も台湾侵攻か
3月下旬頃、私は北朝鮮筋から次のような情報を聞いた。
ロシア大統領プーチンは開戦前に金正恩に対して、「1週間以内にウクライナを占領する計画だ」と通報した。
ロシアが計画通り1週間で戦争に勝利すれば、中国が台湾との戦争に突入し、北朝鮮は米軍を攪乱する局地戦を行うことが謀議されていた。中国は早ければ今年末か来年に台湾侵略を計画していた。その作戦にあたって、中国は北朝鮮に対して朝鮮半島で局地戦を起こして米軍を攪乱して欲しいと依頼していた。
北朝鮮人民軍は中国の台湾侵略と同時に西海5島地域での局地戦を検討していた。5島を同時に攻める作戦や白翎島を攻める作戦などが案として上がっていた。北朝鮮からすると5島は喉に刺さったとげであり、機会があれば占領したいと狙っていたからだ。
ところが、予想に反して戦争が長引いている。そのため、中国の台湾侵攻も計画修正が不可避で、北朝鮮も中国の戦争に加担したら自分たちだけが損害を受けると考えるようになった。
計画の練り直し迫られた中朝
4月末に出た『月刊正論』6月号の巻頭座談会で、矢板明夫・産経新聞台北支局長が、この情報を裏付ける次のような注目すべき発言を行っていた。
ロシア側の内部情報によると、習近平は今秋に台湾侵攻することを考えていたといいます。
ウクライナが二、三日で制圧されたら、同じように台湾もやれる、と習近平は選択肢の一つとして考えていたのだと思います。
(略)
しかし現在、ロシアは思いのほか苦戦しています。ウクライナの非常に強い抵抗に遭うし、国際社会がこれほどウクライナを支援するとはプーチンも習近平も考えていなかったはずです。習近平の引き出しの中には台湾侵攻のA案、B案…といろいろあると思いますが、全部いったん破棄してもう一度計画を練り直す必要があり、それには相当な時間がかかるでしょう。習近平の台湾攻略の野望が今回のロシアの失敗・苦戦によって完全に白紙に戻った、ということが中国への最大の影響になるでしょう
ウクライナ国民の英雄的な抗戦が東アジアの安全を守ったのだ。金正恩はロシア軍の予想外の弱さに戦慄している。なぜなら、朝鮮人民軍のほとんど全ての兵器はロシア軍の兵器よりも遙かに古い旧ソ連製だからだ。金正恩が核先制使用発言を2回も行ったのは、通常戦では米軍抜きでも韓国軍に勝てないことを悟り、核に頼るしかないと考えるようになったからだ。
ウクライナ戦争と東アジアの安全はつながっている。