私は昨年12月26日に本欄で「金総書記が娘を公開した理由」というコラムを書いた。そこで、北朝鮮労働党総書記の金正恩の随行秘書をしている労働党宣伝煽動部副部長の玄松月について、「金総書記の愛人であることと、玄副部長に息子がいることは間違いないものの、9月9日に出てきた少女が玄副部長の娘だとは確認できなかった」と記した。
その後、複数の筋から詳細な情報を得ることが出来たので、金正恩の乱れた女性関係について現段階で分かったことを報告する。最高指導者の個人生活は最高機密だから、一部、間違った情報が含まれている可能性は排除できない。その前提で読んでほしい。
北朝鮮権力中枢部の動向を知る複数の筋の話を総合すると、金正恩には現在、4人の女性(本妻と愛人)と7人の子どもがいるという。その情報を整理しよう。
①玄松月(ヒョン・ソンウォル)
最初の愛人は玄松月だ。金正恩との間に15歳(2022年現在、以下同)の息子と10歳の娘がいる。玄の生年については諸説あるが、韓国国家情報院は1978年生まれとしており、金正恩より6歳上だ。
金正恩は1984年生まれで、1996から2000年にスイスに留学した。そのとき、精神的に不安定になったので父親である金正日が旺載山(ワンジェサン)軽音楽団の歌手だった玄をスイスに随時派遣して話し相手にした。そこで玄は金正恩の恋人となり、帰国後も関係が続いた。
玄は息子を2007年頃に、娘を2012年頃に出産したことになる。なお、金正恩が本妻である李雪柱と結婚したのが2007年だから、結婚後も関係は続いている。玄は金正恩の愛人だという噂を否定するため護衛司令部軍人と結婚したが、その後離婚した。モランボン楽団団長を経て党宣伝煽動部副部長に抜擢され、金正恩の随行秘書となっている。一時期、幹部人事を玄が左右しているという話が平壌で流れ、金正恩の妹で権力ナンバー2の金与正が金正恩に玄を粛清せよと迫ったが、金正恩は聞き入れなかったという。
②呂シム(ヨ・シム、姓の漢字は推定)
2番目の愛人は在日帰国者出身ピアニストの呂シムだ。金正恩との間に15歳の息子がいる。呂の生年は不明。
金正恩がスイス留学から帰国後、熱愛したのが呂だ。呂は銀河水管弦楽団のピアニストだった。金正恩の叔母の金慶姫とその夫、張成沢が金正恩と呂の結婚に反対し、李雪柱を紹介したという。李雪柱との結婚後も呂との愛人関係は続いている。呂は金正恩の15歳になる息子を玄松月と同じ2007年頃に出産したことになる。
③李雪柱(リ・ソルジュ)
本妻は李雪柱だ。1989年生まれで、銀河水管弦楽団の歌手出身。2007年に金正恩と正式に結婚し、13歳の息子、10歳の娘、8歳の息子がいる。
長男は2009年生まれ、玄と呂が生んだ息子より2歳下だ。長女は2012年生まれ、玄の娘と同い年だ。名前はジュエ、金正恩がミサイル発射現場などに連れてきた写真が公開されて話題になった。次男は2014年生まれだ。
李は玄に対する激しい警戒心を持っているという。2012年、金正恩は最高幹部らを集めて、李が生んだ長男が後継者だと言明したというが、金正恩が死んだ後、玄が黙っているはずはないと最高幹部らは用心深く噂している。2022年9月、建国記念日の公演で北朝鮮テレビが画面で特別にスポットライトを当てた少女が玄の長女だった。韓国などのメデイアがその少女を金正恩の娘かと報じたので、本妻の李雪柱が怒って自分が生んだ金正恩の娘ジュエの姿を公開させたという。
④金オクチュ(キム・オクチュ)
3番目の愛人が国務委員会協奏団歌手の金オクチュだ。生年不明の息子か娘がいる。2002年9月に人民俳優称号を授与され、金正恩と腕を組む写真が公開された。玄が金正恩の愛人として斡旋したという。
(文中敬称略)