今月の総合安全保障プロジェクトの月次報告会は、まず中川真紀・国基研研究員が中国軍の「全人代から見る今後の中国軍」を、続いて吉田正紀・元防衛大臣政策参与が「米国の安全保障戦略における中東戦略の変遷」を、岩田清文・元陸上幕僚長が「イラン戦争が与える日本への示唆」について、それぞれ報告した。

第1部は国会議員に向け、第2部は主要メディアに向け報告し、参加した議員、記者、企画委員らの質疑に応じた。以下、その概要を簡単に紹介する。
月次報告会議員向け(午前8時~9時30分)・メディア向け(午前11時30分~午後1時)
【報告概要】
メディア向け報告では、出席記者からの質問に答える形で補足説明が行われ、活気ある議論が展開された。質疑応答の一部を以下に紹介する。
【質疑応答】
Q: 兵器用濃縮ウランの保管場所が分かったとして、地上作戦で残存する濃縮ウランを持ち出すという選択肢はあるか。
A: 地上作戦の可能性は否定できない。ただしIAEAによると2か所に分散して保管されているとされるが、空挺作戦には高いリスク(人的被害など)を伴うというハードルがある。他方、大規模な爆撃をすると、完全に破壊したという確証を得ることは難しい。どこで線引きするか、米政権の判断が注目される。
Q: バイデン政権時に米国が中国の台頭を危惧してペーシング・スレット(pacing threat)という表現を使用したが、その意味を教えて欲しい。
A: 比ゆ的には前を歩く人の後にピッタリ付いて歩く様子を示しており、米国の軍事能力に対応して「ひたひた」と追随してくる脅威のことである。現実に核能力を増大させ、海軍力でも空母運用体制を充実させ、米国に追いついて凌駕する勢いは確かだろう。
Q: アメリカ・イスラエルのイラン攻撃を核不拡散の観点から評価する点で、日本政府はどのように発信したらいいか。
A:日本政府は一貫して「イランによる核兵器開発は決して許されない」という立場を表明しており、これを高市総理が日米首脳会談でトランプ大統領に示したわけで、これ以上の答えはないだろう。
Q: 現下のイランをめぐる戦闘を中国はどう見ているか。中国の報道を見ると日中戦争になぞらえて、イランが耐え忍ぶというイメージを植え付けているようだが如何。
A: 大戦中のことを利用するのは中国の認知戦の常套手段であるが、他方この戦争が長引いて喜ぶのは中国だということは指摘しておきたい。米国はすでに国防産業に対し増産を命じており、疲弊し始めたことは否めない。戦闘の長期化は米国を疲弊させ、中国が漁夫の利を得る機会を増大させる。
この総合安全保障プロジェクトの月次報告会・記者向け報告会は、今後とも継続実施していく予定である。 (文責 国基研)