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2026.04.27 (月) 印刷する

総合安全保障プロジェクト 政策提言発表・月次報告会

今月の総合安全保障プロジェクトは、まず岩田清文・元陸上幕僚長が、「核抑止力強化のための国民的議論形成を促す提言」を発表し、続く月次報告会では、中川真紀・国基研研究員が「中国ロケット軍の動向」を報告した。

第1部は国会議員に向け、第2部は主要メディアに向け発表及び報告し、参加した議員、記者、企画委員らの質疑に応じた。以下、その概要を簡単に紹介する。

政策提言発表・月次報告会:国会議員を対象に(午前8時~9時30分)
メディアを対象に(午前11時30分~午後1時)

【政策提言】
●『核抑止力強化のための国民的議論形成を促す提言』
岩田清文・元陸上幕僚長

この政策提言「核抑止力強化のための国民的議論形成を促す提言―戦略三文書改定を見据えた国民的理解の形成と政策検討の開始―」は、国家基本問題研究所で研究会を設け、検討を重ねてきた成果である。わが国の安全保障環境が急速に悪化し一刻も猶予が許されない現実を踏まえ、「二度と我が国に核攻撃をさせない」ために、これまで議論さえ疎まれてきた「核」について、国民的議論を促すことが必要と考え、今回政策提言を発表する運びとなった。

すでに国会内で与野党の一部国会議員に対し説明会を実施したところであるが、広く国民的議論を喚起する上で、より多くの議員及びメディアの皆様に説明するため、本日この機会を設けた次第である。

政策提言本文は、以下のURLにアクセスしていただきたい。

・提言の要旨
わが国が「核兵器のない世界」という理想を堅持することは当然としつつ、現下の安全保障環境が急速に悪化する中、理想だけでは対応できないという現実に向き合い、「再び核攻撃を受けないために何が必要か」を、国民が正面から議論すべき時を迎えている。

そこで、国基研総合安全保障プロジェクトは、本年末の戦略三文書改定にあたり、政府に対し以下の二点を求めたい。

1. 日本が再び核攻撃を受けないために何が必要かについて、政府が主導して国民的議論を起こすことを「国家安全保障戦略」に明記せよ。

2. 2032年以前のできるだけ早い時期に、日本に必要な核抑止の在り方について検討の上、必要な措置を講じることを「国家安全保障戦略」に明記せよ。

全文PDFはこちらから

 

【月次報告】
●『中国ロケット軍の動向』
中川真紀・国基研研究員

・ロケット軍の位置づけ
 中国人民解放軍ロケット軍は、かつて第二砲兵部隊として長距離ミサイルを運用するために1966年に創設され、その後、技術の発展及び戦力の増強に伴い、改編を繰り返し、2015年からロケット軍に名称を変更し、独立兵科から軍種(陸海空に並ぶ4コ軍種の一つ)に昇格した。

 ロケット軍は各戦区の作戦指揮を受けるが、核部隊は中央軍事委員会が直接統制する。その編成は、各戦区にあるミサイル基地を隷下に置き、核ミサイル部隊・通常ミサイル部隊・後方支援部隊等から成り、その保有ミサイルは、長距離の大陸間弾道ミサイル(ICBM)から短距離の地上発射巡航ミサイル(GLCM)まで多種・多様な選択が可能である。

・訓練の状況
訓練サイクルは他軍種と同様、1月に訓練開始式を行い、基礎訓練から始め小部隊訓練、転地・実射を行い、夏ごろには総合訓練(旅団級・戦区級)へと拡大し、年末に検閲を実施するという流れである。

基礎訓練では、隊員個人や班単位での装備の取り扱い技量や戦闘能力向上を訓練し、小部隊の訓練では、主に基地内や近傍で小隊・中隊規模の訓練を実施する。転地・実射訓練は大隊以上が実射訓練場まで長距離移動して行う訓練で、総合訓練は旅団規模の演習で、2012年から実施して2018年までで全ロケット軍旅団が参加済との報道があった。

例えば2025年12月の統合演習「正義使命2025」で613旅団(江西省上餃市)は、240km離れた台湾正面にある前方展開基地でDF-15Bと思われるSRBM模擬射撃を実施したことが衛星写真で確認された。また、各旅団はミサイルの保管・整備のための地下施設(ミサイル陣地)を保有し、ICBM部隊では他国からの核攻撃を想定した反撃訓練も実施している。

・ミサイル発射試験・訓練場の状況
中国の主なロケット軍ミサイル発射場はゴビ砂漠周辺のIRBM等の発射試験を行う酒泉衛星発射センター(甘粛省)、ロケット軍部隊訓練を行う吉蘭泰ミサイル発射試験訓練場(内モンゴル自治区)、ICBM等の発射試験を行う太原衛星発射センター(山西省)などがあり、射爆場は西部のタクラマカン砂漠周辺に点在している。

中でも酒泉では、弾道ミサイル用の可能性のある大型発射パッドが点在し、対空ミサイルを含め様々な施設が設置されている。加えて吉蘭泰では、発射パッド上にTEL(輸送起立発射機)を展開し、サイロ群に装填するICBMの発射試験・訓練を実施する模様が衛星画像から確認できる。現認できるサイロ群3個(玉門、哈蜜、杭錦)で320基(内100基に装填)、その他の発射機142基を加えると総数462基という数字は、米国のICBMサイロ400基にほぼ匹敵する。

・日本への影響
日本本土への攻撃可能なミサイルの種類は、中距離弾道ミサイル(IRBM)のDF-26(dual)、準中距離弾道ミサイル(MRBM)のDF-21A/E、DF-17(HGV)、DF-21C/D、地上発射巡航ミサイル(GLCM)のCJ-10/CJ-10A、CJ-100、CJ-1000などが想定される。

例えば、DF-17(MRBM)はHGV(極超音速滑空兵器)を搭載し、大気圏内を極超音速で滑空飛翔し、軌道予測が困難で探知が遅れるため、弾道ミサイルより迎撃が困難で、日本のBMDを突破する能力があると考えられる。このミサイルを保有する対日指向可能な部隊は、655旅団(吉林省通化市)が日本全土を、614旅団(福建省三明市)、627旅団(広東省掲陽市)が西日本・九州・沖縄を射程圏内とする。

次に巡航ミサイルのCJ-10、CJ-100だが、長距離(3000~4000km)を自律して低高度を飛翔し命中精度が高い反面、低速なので迎撃されやすいが、CJ-100は最高速度マッハ4でBMD突破能力も高い。これが配備されている656旅団(山東省済南市)からは日本全土が、CJ-10が配備されている635旅団(江西省宜春市)からは南西諸島が射程圏内に入る。

そしてDF-26中距離ミサイルは核・通常弾頭搭載の対地・対艦ミサイルであり、611旅団(安徽省池州市)、626旅団(広東省清遠市)、654旅団(遼寧省大連市)、666旅団(河南省信陽市)が対日指向可能部隊と考えられる。中でも611旅団は2024年10月に習近平主席の視察の際、DF-21AからDF-26に更新されたことが判明している。

上述のとおり、複数のロケット部隊が対日指向可能だが、車載型はどこからでも撃てる上、どの部隊が核・通常のいずれのミサイルを発射するか判別が困難であり、わが国の対応が遅れる恐れがある。

資料PDF 中国ロケット軍の動向

 
メディア向け報告では、出席記者からの質問に答える形で補足説明が行われ、活気ある議論が展開された。質疑応答の一部を以下に紹介する。

【質疑応答】
・政策提言関連

Q: 核に関する提言だが、議論が進まない現実は確かだが、そもそもジレンマがある。議論するということは、米国の核の傘が機能していないことを裏付けるのではないか。
A: 慎重な議論が必要な理由はそこにもあるだろう。現実を見れば核弾頭の数量的には、ロシア、中国、北朝鮮を合算すると米国を凌駕する。米国一国のみではどうにもならない時代になったという認識こそ重要である。核の傘が機能する上で何が必要かを議論の俎上に上げる意味がある。

Q: 提言に関し非核三原則を含めた議論が必要ということだが具体的には何か。
A: 非核三原則の表現に関する具体的な内容については、特に「持ち込ませず」が対象になるものと考えるが、その意義も含め今後示したいと思う。

Q: 日米間で行われている拡大抑止の協議と今回の提言に関係はあるか。
A: 拡大抑止の協議はレベルを上げて継続されているが、その内容は部外者が知ることはできず、したがって直接的な関係性はない。

Q: 核はデリケートな問題で国民的議論を起こした結果、非核三原則を見直さないとなった時に日本の核抑止にマイナスになると考えるか。
A: 一時的にはご指摘の通りかもしれない。ただし現状と変化がないことが、本当に日本のためになるかを議論すること自体に意味があり、総合的に見るという視点も大事である。

・中国ロケット軍関連
Q: 中国軍が報道等を通してロケット軍のミサイルを外国に公開する意図は何か。
A: 中国は孫氏の兵法にあるように、戦わずして勝ちたいのである。圧倒的な力を誇示して相手の意思を事前に打ち砕くという意味がある。

Q: DF-26ミサイルが核搭載可能という根拠について教示願いたい。
A: 米国でも評価が公表されているように、射爆場の様子などを見て総合評価する。

Q: ミサイル発射パッドで訓練する模様は分かったが、発射パッドがないところで発射することは可能なのか。
A: 発射パッドがなくても発射は可能である。ただし、発射地点で水平を採ることが可能で地面が堅牢なことが必要だろう。北朝鮮でも飛行場を利用した発射訓練が実施されているように、飛行場なら水平と堅牢が確保される。

この総合安全保障プロジェクトの月次報告会・記者向け報告会は、今後とも継続実施していく予定である。 (文責 国基研)