公益財団法人 国家基本問題研究所
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第二回(平成27年度) – 日本研究賞 授賞式

寺田真理記念 日本研究賞

第二回「寺田真理記念 日本研究賞」授賞式

 国家基本問題研究所は、日本研究を奨励し、真の意味での知日家を育てるため、平成26年に「寺田真理記念 日本研究賞」を創設しました。

平成27年7月7日(火)、日本プレスセンターにて第二回授賞式を執り行いました。授賞式には約90名のゲストが参集して、受賞者や寺田真理さんを祝福、激励しました。


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(写真左から)田久保 忠衛、デイヴィッド・ハンロン、寺田 真理、エドワード・マークス、櫻井 よしこ(敬称略)

受賞式の様子1
受賞式の様子2

櫻井よしこ理事長 - あいさつ

櫻井よしこ 皆さまこんにちは。今日はおいで下さいましてありがとうございます。私たちがこのような賞を、なぜ、設けたかということを少しお話させていただきたいと思います。

国際社会の中で、本当に日本が正しく理解されれば、私たちは世界でもっともっと好かれるのではないか。私たちの文化、文明は本当に穏やかで、排斥するというより抱擁するような価値観をもっています。私はこの日本の文化、文明に大変な愛着と誇りを持っているものですから、なぜ、このような日本の文化が理解されないのかということが悲しみの一つであります。

特にこのところ、他の国々との軋轢が目立つ中で、一つ一つのことに反論してもキリがありません。それより、世界に日本を理解してくださる方々が増えればいいということに思い至りました。そして、そのためには、日本に関心を持ってくださる多くの若い研究者がいらっしゃるはずですから、その方たちのためにささやかなアワード(賞)を作れればいいなと考えていました。

そんなときに、寺田真理さんはじめ、幾人かの篤志家の方々にお会いいたしまして、みなさまのご協力によりこの日本研究賞をつくることができました。今年はその二回目です。まだまだ日は浅いとはいえ、ほかのシンクタンクが目をつけないような本当の意味で日本理解を進めてくださる方々に、私たちは出会えていると思います。民間の小さなシンクタンクですが、本当に多くの草の根の日本を愛する日本人によって支えられていると自負しています。この心を忘れずに感謝の気持ちを持ちながら、これからもずっと日本と諸外国との理解増進に努めていきたいと思っております。

今日は皆さまおいでくださいまして本当にありがとうございます。受賞者の方おめでとうございます。そして、下村博文文部科学大臣、加藤勝信官房副長官、ありがとうございます。

寺田真理さん - あいさつ

寺田真理 櫻井理事長はじめ、国基研の先生方には、この一年また大変なご尽力をいただき、すばらしい作品を選んでくださいました。心からうれしく思います。そして、受賞者のお二方、おめでとうございます。

私は、今回の受賞作に登場するイサム・ノグチさんとはちょっとしたご縁がありました。もう五、六十年前の古い話ですが、嫁ぎましたところが代官山でした。しばらくすると、私の家の通りを隔てた横にイサム・ノグチさんがお家をお建てになったのです。白木造りの瀟洒なお家で、建築中のときから興味津々でした。完成して、お呼ばれをしたときに、すごいなぁと思ったのが、白木造りのお家の玄関に行くまでに五、六十㍍はあったと思いますが、そこに木がずっと植えられ、その木の表側になるところだけに青い葉がついていて、裏のほうは全部カットされていたことです。あぁ、やっぱり彫刻家のお宅だなぁと感じ入ったのを覚えています。

また、その頃はモルタル建築が流行っていたのに、白木造りのお家を建てられたので、とても心が弾みました。屋内に入って拝見すると、七つほどベッドルームがあり、まだ水洗トイレがほとんどなかった日本でしたが、それぞれの部屋に西洋式の水洗トイレが一つずつついているのにびっくりしました。

今回の受賞作によって、白木造りのお家と西洋の飾りとが見事にマッチしたすばらしい思い出が蘇ってまいりました。ありがとうございます。そして、本当におめでとうございます。今後ともどうぞ日本をご理解くださり、いい本をお書きください。

安倍晋三総理 - メッセージ

 本日は、「寺田真理記念 日本研究賞」授賞式が昨年に引き続き、盛大に開催されますことを、心からお慶び申し上げます。

私は、総理大臣として、この二年半の間に、五十を超える国々に足を運んでまいりました。アジアやアフリカで、国際協力に汗を流す日本人の姿を目の当たりにしました。アメリカ、中南米では、日本とのつながりに誇りを持ちながら、持ち前の勤勉さや、献身的な努力によって、地域の皆さんから大いに尊敬されている、たくさんの日系人の皆さんともお会いしました。

日本人は、昔から、ためらうことなく世界に雄飛し、世界の人々と交わりながら、大いに活躍してきました。その一人ひとりの偉大な足跡が、日本の国際的な高い評価につながっている。私は、そう確信しています。

日本人と出会い、日本で生活し、そして、イサム・ノグチという偉大な芸術家を育て上げた、アメリカ人女性レオニー・ギルモア。南太平洋に浮かぶたくさんの島々を一つにまとめ、ミクロネシアの独立と国家建設に身を尽くした日系人、トシヲ・ナカヤマ元大統領。

それぞれ壮大な人生が織りなすストーリーは、今を生きる、私たち日本人にも、日本と世界との、長く、深い交わりに、改めて思いを致すきっかけとなり、大きな感動を与えてくれます。そうした意味で、エドワード・マークス准教授、デイヴィッド・ハンロン教授、お二人が、国際的な視点から、日本と日本人の歴史に光を当ててくださったことに、心より敬意を表する次第です。本日の栄えある御受賞、誠におめでとうございます。

どうか、これからも、日本についての研究を深めてください。そして、日本の真の姿を、世界に向けて発信していってくださることを願ってやみません。お二人の益々の御活躍に、大いに期待しております。

本日、七月七日は、七夕の節句です。古来、我が国では、この日に相撲を行い、その年の農作物の収穫を占ってきました。この晴れの日に、見事、この素晴らしい賞を射止められた、お二人の未来は、必ずや実り多きものに違いない。私はそう確信しています。

最後となりましたが、櫻井理事長をはじめ、国家基本問題研究所の皆さんの日頃からの活動に、改めて感謝申し上げます。そして、この「寺田真理記念 日本研究賞」が、世界中の日本研究者たちの大きな「希望の光」として、一層発展されていくことをお祈りして、私のお祝いのメッセージとさせていただきます。

平成二十七年七月七日 内閣総理大臣 安倍晋三

下村博文・文部科学大臣 - 来賓祝辞

下村博文 第二回国基研の「寺田真理記念 日本研究賞」誠におめでとうございます。本来は文部科学省あるいは文化庁がしなければならないことを、国基研にしていただき、また寺田真理さんという、すばらしい方との出会いの中で、今回、二回目を開催されることに対して、本当に敬意と感謝、また、政府もしっかり頑張らなければならないとの自戒を込めて申し上げたいと思います。

受賞されたエドワード・マークスさん、そしてデイヴィッド・ハンロンさん、誠におめでとうございます。先ほど田久保さんから詳しいお話をお聞きしまして、われわれはもっと勉強しなければならないと思ったところでございます。

私も最近、日本についての本を書きました。伊勢神宮、熊野三山に行ったのをきっかけに、世界を照らす日本の心ということで、聖徳太子の和の精神、そして、古神道的な共生の精神を書きました。「こういうのはどうでしょう」と先ほど櫻井さんに話しましたら、残念ながら「日本人は賞の対象になりません」と言われました。来月には、英文で世界二十五ヵ国に電子書籍を出す予定です。

確かに、われわれが自己満足で「日本はすばらしい」と言ったところで、あまり意味がありません。特に日本は外圧といいますか、外国人に評価されると、自信につながることも多いわけですから、お二人のように日本人でない方が、日本人以上に日本のすばらしさを研究していただいていることは、本当にありがたいことでございます。

特に戦後七十年の中で、日本が自信を喪失しつつあり、また、多くの日本人が失いつつある日本のすばらしい文化、伝統あるいは日本人の精神をいろいろと発掘され、研究されていることに対して、心から敬意を表したいと思います。

国基研のもとで、これから三回、四回と寺田真理賞がますます世界の方々の日本に対する評価を高めていく機会として、発展されますことを祈念申し上げ、挨拶とさせていただきます。おめでとうございます。

加藤勝信・内閣官房副長官 - 来賓祝辞

加藤勝信 今日は「寺田真理記念 日本研究賞」を受賞されたマークスさんとハンロン教授それぞれ大変おめでとうございます。心からお祝い申し上げたいと思います。

日本の姿をしっかり外国の方から見ていただいて、ありのままを知っていただき、ありのままを書いていただくということが、本当に大事であろうと思います。

私も総理が多くの外遊をいたします中で、半分ぐらい一緒に行かせていただいています。先日、アメリカに行ったときには、まさにアメリカにおける日本研究を進めようということで、五百万ドルのファンドをコロンビア大学、ジョージタウン大学、スタンフォード大学という三つの大学にそれぞれファンディングしました。

日本の特に近代・現代の政治、外交を中心とした研究をしていただくということを発表し、進めさせていただいております。それも、櫻井先生はじめ皆さま方がこうして、本当に地道にやっていただいている日本研究賞に触発されたものだと思います。

どうか、このようにすばらしい試みをさらに進めていただき、また、日本研究をしておられる海外の研究者の方を発掘していただきたいと思います。その中で、われわれも広く勉強させていただく機会を作っていただけますことを心からお願いいたします。

渡辺利夫選考委員(国基研理事)- 祝辞

曾野綾子 「寺田真理記念 日本研究賞」に輝いたエドワード・マークスさん並びに「日本研究奨励賞」のデイヴィッド・ハンロンさんに、心よりの祝意を申し述べます。

私どもの世代の日本人であれば、少なくともイサム・ノグチの名前は知っておりますし、その内の多くの人々が、イサム・ノグチが二十世紀を代表する彫刻家として国際的な名声を得た在米の日系人であることに強い誇りを感じているはずであります。もちろん、私もその一人です。

しかし、この偉大なる芸術家を育てた両親や家族がどんな人物であったか、イサム・ノグチの才能を開花させるのに影響を与えた者の存在などには、関心が中々向かうこともなかったように思います。私も、本書を読む前は、そういう者の一人でした。

日本人排斥運動の渦中のアメリカにおいて、しかも母子家庭の中にいながらイサムの才能を見抜き、イサムを芸術家の道に進ませようと辛苦の人生を送ったレオニー・ギルモアという母親がいたことを私は本書でよくよく知ることができました。彼女レオニー・ギルモアの波動に満ちた人生を、厖大な書簡群を素材に描き出したエドワード・マークスさんの鮮やかな手法と筆力には、私も目を開かさせられる思いであります。

評伝として読むこともできますが、一つの大河小説を読んだような感じさえ抱かされました。原文執筆と同時に翻訳の作業が進められ、出版にいたったそうであります。翻訳に当たられたお三方の努力にも深い敬意を申し述べます。私は原文を読んでいるわけではありませんが、おそらく原文の情感を十分に伝える日本語となっているのではないかと想像されます。

デイヴィッド・ハンロンさんの“Making Micronesia : a political biography of Tosiwo Nakayama”にも私は実に多くのことを教えられました。何より、よほどの専門家でなければ知らないミクロネシア建国の現代史にスポットを当て、しかもその中心人物としてのTosiwo Nakayamaという人物のパーソナルヒストリーを通して、日本による委任統治時代に始まり今日にいたるミクロネシアの歴史を、デイヴィッド・ハンロンさんは精細に描いております。

研究室で歴史を学んでいる人間には描きえないような、生き生きとしたスタイルで本書を仕立てたデイヴィッド・ハンロンさんのこの著作に私は深い感動を覚えました。親日的な日系人がなお多く居住するミクロネシアを初めとする南洋諸島は、日本とは何かを考える場合に、私どもが忘れてはならない国々であることを本書は教えています。本書の貢献には大変に大きなものがあるといわざるをえません。日本語での翻訳が切に望まれます。

エドワード・マークスさん並びにデイヴィッド・ハンロンさんの懐の深い研究に、改めて深い敬意を表します。

最後に、海外での日本研究にはかつてのような元気がなくなっているようにみえます。まことに残念なことであります。国力の低下によって、日本の魅力が薄くなってきたということなのかもしれません。そういうこともあって、お二人には日本研究において、なお一層のご精進を心からお願いしたいのであります。