2019年1月の記事一覧
ベネズエラ問題で割れる米民主党 島田洋一(福井県立大学教授)
ベネズエラ情勢が緊迫している。 反米を声高に掲げたポピュリスト左翼のチャベスの死後、大統領職を継いだマドゥロは、経済が混乱し社会が不安定化する中、野党連合が多数を占める国会の権限を奪う反憲法的措置を次々打ち出してきた。 これに対し今年1月23日、グアイド国会議長(35)が自ら暫定大統領に就任すると宣言、米国やカナダ、中南米諸国の大半が直ちにこれを承認した。一方、あくまでマドゥロ支持を打ち...
【韓国情勢】対日・米関係悪化憂う韓国保守派 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
韓国の金錫友・元統一部次官および大使経験者ら元外交官42名が1月15日付で、文在寅政権の対米、対日外交を批判する緊急声明を発表した。「伝統友好国との危篤状態の外交安保懸案を至急に解決しなければならない-韓・米・日の安保協力体制を早く復元せよ」と題した声明は、戦時労働者問題での大法院判決を批判し、補償は韓国政府が行えと主張している。以下はその全訳である。 過去の記事はこちら ◇ ...
韓国は一刻も早く「現実」に立ち返れ 黒澤聖二(国基研事務局長)
先月20日午後3時頃、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦が、能登半島沖のわが国の排他的経済水域(EEZ)内を監視飛行中の海上自衛隊のP-1哨戒機に対し、射撃管制レーダーを照射し威嚇した。 この問題に続き、今月24日、韓国国防省は東シナ海で監視活動中のP-3C哨戒機を撮影した画像を示し、「威嚇飛行」だと宣伝した。これには筆者も、かつて海自の対潜哨戒機に搭乗していた経験から、まさに「開いた口...
日本も対諜報対策の強化を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
22日に米国の国家インテリジェンス戦略が公表された。本文書は、4年に1回、米インテリジェンス・コミュニティーの代表である国家情報長官が作成するものである。なお米インテリジェンス・コミュニティーとは、陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊の情報部以外に、国務省、財務省、エネルギー庁、国土安全保障庁の各情報部門、そして連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)、国家安全保障庁(NSA)、国家偵察局(NRO)、...
中国走らす米のアジア再保証戦略 湯浅博(国基研主任研究員)
米国の政府・議会が一丸となって推進するアジア再保証戦略がスタートして、中国の習近平政権を慌てさせている。この裏付けとなるのが「アジア再保証推進法」(ARIA)で、米上下両院により全会一致で可決され、トランプ大統領が昨年12月31日に即時署名した。このARIAは、米中貿易戦争がハイテク覇権争いの様相を濃くしているところから、トランプ政権が安易な取引や妥協をしないようクギを刺した形だ。 法案の成...
日本の協議打ち切りは妥当だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
韓国艦による海上自衛隊のP-1哨戒機に対する火器射撃管制レーダー照射問題で、わが国防衛省は21日、韓国との実務者協議を打ち切ると表明した。韓国国防省に対しては何を言っても事実関係の解明が期待できないことから、止む得ない判断だと思う。 朝鮮人戦時労働者、慰安婦財団の解散、韓国観艦式での自衛艦旗掲揚阻止、竹島での軍事演習、今回の射撃管制用レーダー照射、そして防衛白書から北を「敵」とする表現削除と...
ファーウェイ問題の本質を考える(上) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
米司法省は2018年12月20日、中国ハイテク企業が米海軍、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所などにサイバー攻撃を仕かけて最新先端技術データを窃盗していたと発表した。また、米トランプ政権の中国脅威論にからんで、次世代移動通信システム(5G)分野での中国通信機器大手ファーウェイ製品の締め出しが表明されるなど、最近の米国の中国に対する姿勢は厳しい。 ●5Gに米国がこだわる理由 概...
ファーウェイ問題の本質を考える(中) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
ファーウェイの発展は、そもそも正規の流通ルートに乗らない廉価品(いわゆるパチモン)から始まった。2000年代初期、ネットワークの最重要器材の一つであるルーターは米国C社の一人勝ちだった。 当時、防衛省のシステム構築担当者の一人であった筆者は、日本の技術者に「多少高くても国産品を使いたいのでなんとかならないか」と話したことがあるが、「到底あの技術レベルのものは(自前では)作れない」と答えられた...
ファーウェイ問題の本質を考える(下) 伊東寛(元陸上自衛隊システム防護隊初代隊長)
では、ファーウェイに課せられた非難は事実無根の濡れ衣であろうか。中国からの我が国に対する脅威はないのであろうか。 ●政府が命じる不正アクセス 中国では、政府によって命じられれば、国内企業や市民、組織は治安当局に協力と支援をする義務があると法律で定められている。これはファーウェイのような企業であっても、政府に協力するよう命じられれば、どんな要請にも全面的に従う必要があるということだ。つ...
米中新冷戦を象徴する『中国の軍事力』 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米国防情報局(DIA)が1月15日、『中国の軍事力』を公表した。DIAが中国の軍事力に関する報告書を出すのは、これが初めてである。これまでは米国防総省が議会に対する年次報告書として『中華人民共和国に関わる軍事・安全保障上の展開(Military and Security Developments Involving the People's Republic of China)』を毎年公表してい...
常時同時配信に拘るNHKへの疑問 髙池勝彦(弁護士)
政府は、1月下旬に召集される通常国会で、放送法改正案を提出することを確認したといふ(産経新聞1月11日付)。これは、NHKがテレビと同じ番組を24時間インターネットで流す、いはゆる常時同時配信を可能にすることが目的のひとつである。この常時同時配信は、NHKが長年狙つてきた目標のひとつである。放送法では、NHKの業務の内容を限定してゐるため、放送法を改正する必要があるからである。 ●民放や...
「平和条約」に冷ややかなロシア 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)
安倍晋三首相が悲願とする日露平和条約締結に向けて本格交渉が1月から始まるが、交渉をめぐる環境は友好ムードとは程遠い。ロシア側は対日強硬発言を繰り返し、刺々しい雰囲気だ。交渉前に要求を高く掲げるロシア特有の交渉戦術の可能性もあるが、これでは平和条約を結んでも関係改善は難しいだろう。 ●強硬姿勢目立つ対日外交 ロシア外務省は1月11日、外相会談に先立って声明を出し、「4島へのロシアの主権...
いまこそ日本版「台湾関係法」を 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
1月2日に中国の習近平国家主席は中台関係に関する演説で、「平和統一、一国二制度」の基本原則を堅持する姿勢を示す一方、「武力行使の選択肢を排除しない」と述べた。これに対し、蔡英文台湾総統は同日「一国二制度による統一は絶対受け入れない」と応じた。香港での一国二制度が有名無実化している現状に照らせば当然であろう。寧ろ、北京が香港コントロールを強化しながら一国二制度を台湾に迫る無神経さに呆れてしまう。 ...
拡大抑止力に相次ぐ懸念 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
韓国軍艦の射撃管制用レーダー照射問題で揺れていた昨年末、米国の戦略抑止力に対する懸念を生じさせる事案が2つ生起した。1つは中国が南シナ海から米本土まで届く潜水艦発射ミサイルの試験を行ったことだ。もう1つはロシアが音速の27倍の高速で米ミサイル防衛(MD)を突破できるミサイルの発射試験に成功したことである。 ●開発進む中国の新型弾道ミサイル かねて筆者は、中国による南シナ海の軍事拠点化...