公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2022年6月の記事一覧

ウクライナ戦争は今、ルガンスク、ドネツクの両州からなる東部ドンバス地方の攻防が焦点となっているが、長期化の様相を強めている。ロシアにとって東部2州の併合は、ウクライナ侵略における最低限の目標であり、プーチン大統領は5月9日の戦勝記念日の演説で、東部ドンバス地方を「歴史的な土地」とも表現した。現状はロシア軍の攻勢が顕著であり、6月25日には東部の要衝セベロドネツクを陥落させ、隣接するリシチャンスクを...

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参議院選挙公示前日の21日、日本記者クラブ主催の9党党首討論会が開かれた。ロシアのウクライナ侵攻後、初の開催であったが、討論は総花的で、日本の国土、生命を守る安全保障問題が軽視された。 討論会には、岸田文雄首相(自民党総裁)、山口那津男・公明党代表のほか、野党は、立憲民主党・泉健太代表、日本維新の会・松井一郎代表をはじめ共産党・志位和夫委員長、玉木雄一郎・国民民主党代表、山本太郎・れいわ新選...

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ロシア海軍が黒海に敷設した機雷による海上封鎖により、ウクライナの穀物輸出ができなくなり、それによって引き起こされた世界的な食糧危機がロシア側の〝武器〟として使われている。 機雷は日露戦争の時代から使用され、日本海軍は機雷により、ロシア太平洋艦隊旗艦ペトロパブロフスクを撃沈し、座乗していた司令官で当時屈指の名将とされたマカロフ中将が死亡した。逆にロシアが敷設した機雷により、日本海軍も当時、保有...

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「台湾有事は日本有事」。安倍晋三元首相の卓見を待つまでもなく、中国による台湾への武力侵攻は、想定される意図や規模からも日本の安全保障にとって戦後最大の危機であることに疑いの余地はない。米軍との協力による自衛隊の活動も、全く新たなステージを迎えることになる。 とりわけ武力衝突の近傍にあたる我が国の南西諸島は、否が応にも直接その影響を受けるため、地域住民を保護し、いかにして安全な地域まで避難させ...

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ロシアのウクライナ侵攻を機に、欧州はエネルギー政策の大幅な見直しを迫られている。中でもドイツでは、メルケル前首相により石炭火力や原発に依存しないグリーンエネルギー政策を採ってきたことが、ここにきて大きく響いている。 一方のロシアは、短期のウクライナ占領には失敗したが、西側の経済制裁はしのいでいる。多くの経済学者が「ロシアはすぐにデフォルト(債務不履行)に陥り、経済破綻する」と言ったが、現実は...

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6月22日公示される参議院選挙に向け、各党の公約が出揃ったが、政権与党の安全保障に関する公約を見てみると、国民世論の動向よりも周回遅れのような気がする。岸田文雄総理大臣は16日、テレビ朝日の番組で「核共有」に関して慎重な姿勢を示すとともに、先月のNHK番組でも歴代政府の防衛政策である「専守防衛」を見直す考えがないことを改めて示したが、これも国民世論の動向からはかけ離れている。 「専守防衛見直...

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北朝鮮では、これまで考えられなかったことが起きている。金正恩政権が国内の世論の悪化を気にしているのだ。これまで北朝鮮の独裁政権にとって住民は統制と動員の対象であって、住民の声を意識することなどなかった。ところが、ここにきて食べ物が決定的に不足する状況が生まれ、いつ暴動が起きるか分からないくらい民心が悪化し、政権側が世論を意識して行動するという北朝鮮にとって破格の出来事が起きている。 独裁者も...

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米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅な第3次利上げに踏み切った。異次元金融緩和政策を続ける日本との金利差の拡大のために円安がさらに進行しかねない情勢だ。産業界やメディアの「悪い円安」論がさらに勢いづきそうだが、不毛な感情論である。円安は企業収益を嵩上げするし、国内生産を有利にする。産業界がそこで国内投資と大幅賃上げに動けば、日本経済再生の道が開けるはずだ。 内部留保だけがV字回復 円安...

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オーストラリアのマールズ国防相は6月5日、南シナ海の上空で5月26日、中国軍機が豪哨戒機に接近し、レーダー攪乱用のアルミ箔を含む「チャフ」を放出する危険な行動に出たとする非難声明を発表した。2月にも豪州北方のアラフラ海で中国海軍艦艇が豪哨戒機にレーザー照射をする無謀な行為があったばかりだ。また、4月から5月にかけ東シナ海上空でも中国軍機がカナダの哨戒機に繰り返し異常接近したとも報告されている。中国...

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中国がカンボジア海軍基地の改修に着手した。2年後に完成すれば、その一部を中国海軍が使用する見込みで、中国海軍にとって、アフリカ北東部のジブチに続いて2カ所目、インド太平洋地域では初の恒久的な海外拠点となる。中国の軍事拠点がインド太平洋地域でこれ以上増えないように、日本は米国、オーストラリアなどと調整しながら、域内途上国への援助戦略を再構築しなければならない。 「佐世保」の半分の広さ 6...

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ロシアのウクライナ侵略や、最近の中国の海洋進出に関して「認知戦」と言う新しい概念が出回っている。認知戦とは、偽情報により相手の認知を誤った方向に導き、判断を狂わせる戦いの手法であるが、別に目新しい概念ではない。 2500年前の孫子の時代に、すでに「兵は詭道(騙す事)なり」として、その実例を「能なるもこれに不能を示し (能力があっても能力がないふりをし)」「用なるもこれに不用を示し(用いている...

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ロシアのウクライナ侵攻以前に、それが全面軍事侵攻になると認識していたのは、事前に情報を掴んでいた米国とウクライナの当局者くらいであろう。軍事専門家を含め、ほとんどの者は、東部ドンバス地域への侵攻はあっても、まさか首都キーウまでとは思っていなかっただろうし、そしてまた戦闘がここまで長期化するとは想像もしていなかったであろう。 「力には力」の本質が明白に 人々を、半世紀以上、過去に引き戻し...

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ロシアのウクライナ侵略戦争は、形を変えた米露戦争の様相を濃くしている。バイデン米政権の戦略目標は、オースティン国防長官の言う「ロシア弱体化」という侵略の代償を独裁者に求めている。そのために、ウクライナに対する軍事支援、人道支援として330億ドルという巨費を米議会に要求した。この額だけでもロシア国防費の約半分にあたるが、議会がさらに上乗せして総計400億ドルを拠出することになった。 英紙フィナ...

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杉田水脈衆議院議員が大阪大の牟田和恵教授(3月から名誉教授)、同志社大の岡野八代教授ら4人から名誉毀損で訴えられていた民事訴訟で、京都地裁は5月25日、杉田議員の主張を全面的に受け入れて名誉毀損にはあたらないとする判決を下した。杉田議員の全面勝訴だった。 杉田議員は日本学術振興会の科学研究費(科研費)助成事業となった4人の共同研究について、政府見解と異なる慰安婦=性奴隷説に立っているなどと指...

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「台湾防衛のため軍事介入するのがアメリカの公約」という趣旨のバイデン米大統領の発言がその「真意」を巡って論議を呼んでいる。この発言は5月23日、東京で行われた日米首脳会談後の合同記者会見で、記者の質問に答える形でなされたが、はたして米国の対中強硬派にはどのように受け止められているか。ここでは、共和党きっての理念的ハードライナーとして存在感を増すトム・コットン上院議員(アーカンソー州選出)が5月24...

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