公益財団法人 国家基本問題研究所
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第六回(平成31年度) – 日本研究賞 受賞者

寺田真理記念 日本研究賞
産経新聞PDF2019年6月21日付産経新聞に、 第6回「国基研 日本研究賞」の 記事が掲載されました。 内容はPDFにてご覧いただけます。【 PDFを見る 】

日本研究奨励賞 簑原俊洋(神戸大学大学院法学研究科教授)

「アメリカの排日運動と日米関係 『排日移民法』はなぜ成立したか」(朝日新聞出版,2016)

受賞のことば

蓑原俊洋  この度は拙書『アメリカの排日運動と日米関係――排日移民法はなぜ成立したか』(朝日新聞出版、2016年)が、国家基本問題研究所の日本研究奨励賞を受賞しましたことを大変光栄に存じます。本書は、日米関係を考察する際の従来の<国益>と<パワー>とのパラダイムから切り離し、時として感情の縺れがいかに国家関係を毀損させる場合があるかとのケース・スタディーとなります。
 事実、『昭和天皇 独白録』にも示されているように、カリフォルニア州を舞台とした排日運動が太平洋戦争の遠因となったのは間違いありません。モラル・リーダーシップを喪失したアメリカは、日本の国際協調主義者を幻滅させた上で彼らを沈黙させ、他方の右翼や軍部は奮い立ってアジア回帰を推進する原動力となりました。このように、対外関係は時としてハードポリティックス以外の要素によって維持されていることが分かります。
 本書の学術的価値を評価してくださった選考委員の方に改めて御礼を申し上げさせていただきます。

略歴

 1971年生まれ、カリフォルニア州出身の日系アメリカ人。専門は、日米関係・国際政治・安全保障。カリフォルニア大学デイヴィス校を卒業後、1998年に神戸大学大学院法学研究科より博士(政治学)。日本学術振興会特別研究員、神戸大学法学部助教授を経て、2007年より現職。2019年よりインド太平洋問題研究所(RIIPA)、理事長。その間、ハーバード大学、アイオワ大学(ノグチ卓越フェロー)、オックスフォード大学、ライデン大学、国立ソウル大学校、仁荷大学、国立台北大学、中央研究院(台湾)などで客員教授を務める。
主著に『排日移民法と日米関係――「埴原書簡」の真相とその「重大なる結果」』岩波書店、2002年(アメリカ学会清水博賞受賞)、『カリフォルニア州の排日運動と日米関係――移民問題をめぐる日米摩擦、1906~1921年』有斐閣、2006年、『ゼロ年代・日本の重大論点――外交・安全保障で読み解く(編著)』柏書房、2011年、『もう一つの日米交流史――日米協会資料で読む20世紀(監修・編著)』中央公論新社、『「戦争」で読む日米関係100年――日露戦争から対テロ戦争まで』朝日新聞出版、2012年、Tumultuous Decade, Empire, Society, and Diplomacy in 1930s Japan, University of Toronto Press, 2013 [editor], Decade of the Great War: Japan and the Wider World in the 1910s [editor], Brill, 2014、『アメリカの排日運動と日米関係――「排日移民法」はなぜ成立したか』朝日新聞出版、2016年、そしてThe History of US-Japan Relations: From Perry to the Present, Palgrave Macmillan 2017 [English translation editor]、など多数。  

日本研究奨励賞 ペマ・ギャルポ(拓殖大学国際日本文化研究所教授)

「犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る 侵略に気づいていない日本人」(ハート出版,2018)

 

受賞のことば

ペマ・ギャルポ  この度の受賞は身に余る光栄であり、櫻井よし子理事長はじめ国基研の関係者の皆様に心底より感謝申し上げたい。私が生を受けた祖国チベットの平和と独立は、中国の領土拡張主義の犠牲となり、120万の同胞の命が直接的間接的に奪われ今日は植民地として民族浄化の危機に直面している。自由な社会で温かく受け入れ育ててくださった日本にまで中国の脅威が及びつつあるのに日本の皆様が無自覚であることに危機感を抱き、私の第二の故郷日本が同様な悲しみと屈辱を味わわ無いように思い日頃から警笛を鳴らしている。この本はその一環である。
 今回の受賞は正に私に大きな励ましである事は言うまでもなく、この機会を持って編集者の三浦小太郎氏、ハート出版の日高裕明社長、担当の西山世司彦氏並びに私が自由に研究して仕事の出来る環境を与えてくださった各大学、日本の今までお世話になった皆様のお蔭と思い感謝申し上げると同時に、今後もアジアの自由と平和の為精進する所存である。

略歴

1953年6月、チベットのカム地方ニャロン生まれ。59年、中国軍の侵略によりインドに脱出。65年、十二歳の時、親元を離れ、来日。チベット支援者のバックアップで埼玉県下の公立中学、高校で学んだ後、76年、亜細亜大学法学部を卒業した。80年、ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表。91年、日本作家クラブ(現日本文芸家クラブ)初の外国人会員となる。96年、岐阜女子大学教授、2004年桐蔭横浜大学法学部教授に就任。2005年、日本に帰化した。現在、拓殖大学・国際協力学研究科教授、チベット文化研究所名誉所長、アジア自由民主連帯協議会会長のほかモンゴル国大統領顧問、ブータン王国首相特別顧問などを務めている。
 主な著書に「チベット入門」(日中出版)、「中国とたたかったチベット人」(同)、「国を捨てられない日本人の悲劇」(講談社)、「立ち上がれ日本!目覚めよ、麗しの国」(雷韻出版)、「中国が隠し続けるチベットの真実 仏教文化とチベット民族が消滅する日」(扶桑社)、「日本人が知らなかったチベットの真実」(海竜社)などがある。  

日本研究特別賞 秦郁彦(現代史家)

「Confort Women and Sex in the Battle Zone」(Hamilton Books, 2018)
(「慰安婦と戦場の性」新潮社、1999)

 

受賞のことば

秦郁彦  慰安婦問題は所詮、歴史の裏街道を流れる物語である。韓国外交省の担当官が、日本大使館の書記官に「白昼、まともな外交官が論じ合う題材ではないのに」とぼやきあう外交記録を読んだことがある。私も似た感懐を共有してきたのだが、はからずも現役引退を控えた私の最終著作はその慰安婦問題を白昼の陽光にさらすはめとなってしまい、ほろ苦い思いを味わっている。
 だが、裏街道から逃げだすつもりはない。歴史家には政治的思惑から事実を歪め国益を損じる動きを、封じ込める任務もある。対外発信力の弱点を痛感してきた私は、日本語の研究書を英訳刊行するに当り、(1)流通網を持つ欧米の一流出版社から刊行、(2)献本ではなく、必要とする読者に買ってもらう、(3)訳者は原著の領域に近いネイティブの専門家を選ぶ条件にこだわった。
 受賞対象となった英訳書は、幸いにもこうした条件を満たすものだった。出版社探しと交渉は森由美子氏が、私のエージェントとして渡り合ってくれたし、日本近代史の研究者であるジェイソン・モーガン博士が流麗な訳業を果たされた。
 また、プロジェクト全体の運営と財務は、日本戦略研究フォーラムの長野禮子事務局長と平川祐弘博士らの尽力に負うところが大きかった。あわせて感謝申し上げたい。
 ところで日韓関係は、過去最悪とされる季節を迎えている。「最終的かつ不可逆的に解決」したはずの慰安婦合意(2015)は、一方的に破棄されるも同然となってしまった。
 日本政府は「旧宗主国として韓国を『あやしてくれ(babying)』」という米国の要請もあり、甘やかしてきたのだが、もはや限界である。反撃に転じる時機に来ていると思う。

略歴

 1932年(昭和7年)山口県生まれ。現代史家(日本近現代史・軍事史)。1956年東京大学法学部卒業。同年大蔵省入省後、ハーバード大学、コロンビア大学留学、防衛研修所教官、大蔵省財政史室長、プリンストン大学客員教授、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授を歴任。法学博士。1993年度の菊池寛賞を受賞。2014年『明と暗のノモンハン戦史』(PHP研究所)で毎日出版文化賞を受賞。第30回正論大賞を受賞。
主な著書に、『南京事件 増補版』(中公新書)、『慰安婦と戦場の性』(新潮選書)、『慰安婦問題の決算』(PHP研究所)、『病気の日本近代史』(文藝春秋)、「Hirohito, The Shōwa Emperor in War and Peace」(Global Oriental,2007)などがある。