公益財団法人 国家基本問題研究所
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第九回(令和四年度)国基研 日本研究賞-授賞式

国基研 日本研究賞

第九回 国基研 日本研究賞 授賞式

令和4年7月13日 東京・内幸町イイノホール カンファレンスルーム

外国人による優れた日本研究を顕彰、奨励する第九回「国基研 日本研究賞」の授賞式及び記念講演会を7月13日、東京・内幸町のイイノホールで開催。日本研究賞の受賞者はエヴァ・パワシュ=ルトコフスカ・ワルシャワ大学教授、特別賞は韓国人の李大根・成均館大学名誉教授及び米国人のジェイソン・モーガン・麗澤大学准教授が受賞しました。

左から日本研究賞を受賞した『【増補改訂】日本・ポーランド関係史―1904―1945』、日本研究特別賞を受賞した『帰属財産研究 韓国に埋もれた「日本資産」の真実』、『LAW AND SOCIETY IN IMPERIAL JAPAN Suehiro Izutarō and the Search for Equity』

櫻井よしこ国基研理事長(選考委員長)は授賞式挨拶の冒頭で、七月八日の安倍晋三元首相暗殺について「大変な衝撃です。日本国にとってだけでなく、国際社会も非常に大きな動揺を受けています」として安倍元総理と国基研の関係について次のように語りました。

「安倍総理と国基研の関係は深いものがあります。

そもそも安倍総理がなぜ歴史問題にこだわったか。拉致問題にこだわったか。安全保障において、我が国の独立を強めなければならないという点にこだわったか。

これは、第二次世界大戦において我が国が敗北し、裁かれ、国家の形を変えられたことによる我が国の質的な変化に抗うものでありました。日本国の本当の姿を取り戻すことによって、より良い日本の未来を開拓していきたい。そのために我が国は真っ当な民主主義の国として、国際社会の中できちんとした役割を果たしていきたいし、果たしていくのが務めであると安倍総理はお考えでした。

しかし、日本は非常に誤解されているという実態があります。何をしても過去の歴史を悪と結びつけて、誤解の構図の中に我が国を落とし込んでしまう国内世論、国際世論がありました。そのことに安倍総理は最も激しく抵抗した人です。私たちもこの構図を打ち破ることなしにはまともな道を歩むことが難しいと考え、国基研は十五年前、憲法改正を大目標として設立されました」

その上で櫻井理事長は、国際社会での相互理解を進めていくことができるよう、真の日本理解のために創設された日本研究賞の趣旨について語りました(「国基研 日本研究賞」創設の趣旨についてはこちら)。

左から田久保忠衛 国基研副理事長、ジェイソン・モーガン 麗澤大学准教授、エヴァ・パワシュ=ルトコフスカ ワルシャワ大学教授、櫻井よしこ 国基研理事長

表彰式では櫻井理事長から、日本研究賞のルトコフスカ氏に正賞として賞金一万ドル、副賞として東京・神田「金ペン堂」の金箔蒔絵特注万年筆が、特別賞の李氏とモーガン氏には賞金各一万ドルと、それぞれに「金ペン堂」の金箔蒔絵特注万年筆が贈られました。また、岸田文雄内閣総理大臣、萩生田光一経済産業大臣からの祝電が披露されました。

 

第九回「国基研 日本研究賞」 祝辞

第九回「国基研 日本研究賞」授賞式が開催されますことを、心からお慶び申し上げます。

「日本研究賞」は、過去九年の間、国際社会における日本への理解を深める上で、多大なる貢献を果たされ、外国人研究者によるすぐれた日本研究を着実に奨励されてきたことに敬意を表します。

今、国際社会は、ロシアのウクライナ侵略により、歴史の岐路に立たされています。ロシアの暴挙は、国際秩序の根幹を踏みにじるのみならず、エネルギーや食料価格の高騰をもたらし、世界経済や人々の暮らしに大きな影響を及ぼしており、決して看過できません。

そして、日本とポーランドは、いずれも、そのロシアを隣国に抱える国として、戦前、戦中、そして戦後と長きにわたる関係を築いてきました。エヴァ・パワシュ=ルトコフスカ・ワルシャワ大学教授による「日本・ポーランド関係史」は、そうした両国の歴史をつぶさに描ききった大作であり、日本研究賞を受賞されるにふさわしく、また、極めて時宜を得た受賞です。

李大根・成均館大学名誉教授及びジェイソン・モーガン麗澤大学准教授におかれては、果敢に翻訳・出版に取り組まれ、国際社会において、必ずしも広く知られてこなかった日本の一面を発信されました。

エヴァ・パワシュ=ルトコフスカ・ワルシャワ大学教授、李大根・成均館大学名誉教授及びジェイソン・モーガン麗澤大学准教授、この度の栄えある受賞、本当におめでとうございます。今後も、皆さんならではの優れた視点で日本研究をリードし、世界へと発信していくことを期待します。

最後となりましたが、国家基本問題研究所の皆さんの日ごろからの活動に、改めて敬意を表します。「国基研 日本研究賞」が、世界の日本研究者たちの支えとなり、また、国際社会に日本について発信する「メッセンジャー」として一層発展されますことを祈念して、私のお祝いのメッセージとさせていただきます。

令和四年七月十三日
自由民主党総裁 岸田 文雄

エヴァ・パワシュ=ルトコフスカ様におかれましては、「日本研究賞」の受賞、李大根様、ジェイソン・モーガン様におかれましては、「日本研究特別賞」の受賞、誠におめでとうございます。

エヴァ・パワシュ=ルトコフスカ様は、丁寧な資料の精査に基づき、長年にわたる我が国とポーランドとの二国間関係史を見事に描かれました。また、李大根様は、日本統治時代に築かれた日本資産が戦後の韓国の発展に大きく寄与したこと、ジェイソン・モーガン様は我が国の法に「道理」などが存在することを明らかにされました。

こうした研究は、我が国の正しい姿を世界に広く知らしめる学術的な価値が非常に高いものであり、我が国の国際的な理解の増進に大きく貢献するものです。精魂込めて取り組まれた研究に心から敬意を表します。

結びに、国家基本問題研究所の一層の御発展と、受賞された皆様の今後ますますの御活躍を祈念し、お祝いの言葉といたします。

令和四年七月十三日
経済産業大臣 衆議院議員 萩生田光一

日本研究賞の受賞作はエヴァ・パワシュ=ルトコフスカ氏(ワルシャワ大学教授)の『【増補改訂】日本・ポーランド関係史―1904―1945』『日本・ポーランド関係史Ⅱ―1945―2019』(彩流社)です。

遠路ポーランドからご主人とともに来日したルトコフスカ氏は、受賞の喜びを次のように語りました。

「この栄誉ある第九回日本研究賞を頂戴し、大変うれしく思っております。私の日本・ポーランド関係史に関する研究は重要で、価値のあるものと認めてくださった選考委員会の櫻井よしこ理事長をはじめ、選考委員会の皆様方に心より感謝いたします。また、この賞に推薦してくださった東京大学名誉教授・伊藤隆先生に厚くお礼申し上げます」

「日本とポーランドの多くの方々の貴重な協力と多くの機会に支えられなければ、私の研究の目的は決して実現しなかったでしょう。これらの方々もこの賞の受賞者です」

李大根 成均館大学名誉教授(リモート参加)

『帰属財産研究 韓国に埋もれた「日本資産」の真実』(文藝春秋)で特別賞を受賞した李大根氏(成均館大学名誉教授)は韓国からリモートで出席し、受賞の喜びを語りました。李氏は挨拶冒頭、「偉大なる指導者・安倍元総理」「謹んで哀悼の意を表します」と弔意を表し、スピーチはすべて日本語で行われました。

『LAW AND SOCIETY IN IMPERIAL JAPAN Suehiro Izutarō and the Search for Equity』(Cambria Press, 2020 [帝国日本における法と社会:末弘厳太郎と衡平を求めて、邦訳なし])で特別賞を受賞したジェイソン・モーガン氏(麗澤大学准教授)は、「安倍元総理が亡くなられて、櫻井理事長が仰ったように大変衝撃を受けております。亡くなられて、どれだけ大きな存在だったかと初めて知った」「彼が取り掛かった闘いに私も参加したいと思います。彼が掲げた旗を持ち上げて前進したいと思っております」と抱負を述べました。

最後に、選考委員会副委員長の田久保忠衛国基研副理事長から、三人の受賞者は全会一致で決めたとの報告と共に受賞作についての講評がありました。

田久保副理事長は、ルトコフスカ氏の受賞作は二巻で千ページを超す文字通り「大著」だとして、次のように述べました。

「ポーランドと日本は旧ソ連、現在のロシアを東西に挟んで存在している地政学的に大変重要な国同士です。一万一千キロ離れている両国ですが、直面しているのは同じ脅威。しかも我々日本人は、さらにとてつもない脅威である中国、北朝鮮という予測不可能な危険な国とも直面している。単純な比較はできませんが、両国は非常に地政的に似ている。これは政治、軍事、経済、あるいはまた技術、あらゆる面で近い関係になり得るということです。(ルトコフスカ氏は)この両国の関係を逐一、資料的に調べ上げた。大変な労力だと思うのです。日本・ポーランド関係の研究者が、座右の書として常に置いておかねばならない、研究者の研究書だというふうに、我々は高い評価を下したということをご報告しておきたいと思います」

また、李氏の受賞作については、

「朝鮮総督府が三十五年にわたって築き上げた資産は米軍によって接収され、米軍から韓国に渡された。ここに朝鮮戦争が起こってくる。そうすると北朝鮮にかなりの部分が、渡っているんじゃないか、と。これを我々ではなく、韓国の方が研究される。今の韓国の特殊事情から、日本の『に』がつくだけでも大きな問題がある中で、これがどれだけ大きな勇気を要するかは、みんなが知っているわけです。孫引きになりますが、書評をお書きになった拓殖大学顧問の渡辺利夫先生が引かれた李先生の言葉をもう一度ここで繰り返してみたいと思います。

『たとえそれが他民族に支配された恥ずべき歴史であるとしても、先祖の歴史である以上、はなからこれを否定したり、歪曲して捏造したりする知的風土をこれ以上容認してはならない』

こう明言されているわけです。この知的勇気だけでも我々は高く高く評価すべきではないかと考えています」

ジェイソン・モーガン氏の受賞作については

「(研究対象の)末弘厳太郎については私も学生の頃、耳にしています。また末弘先生のお弟子さんがいろんなところにいらっしゃる。ところが、末広先生の研究がないんです。モーガンさんのお書きになったものをチェックしてみると、たまたまの他の問題を勉強している時にそこにお名前があって、末弘先生に関心を抱いたらしい。そこから図書館に行き、インターネットを通じてあらゆる資料を引き出して勉強されたというから、異常な努力だと思います」