公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

国基研ろんだん

  • HOME
  • 「国基研ろんだん」の記事

2021年11月の記事一覧

中国海軍の測量艦が19日、鹿児島県屋久島付近で領海侵犯した。10月後半には、中国海軍とロシア海軍の艦艇計10隻が隊列を組み、津軽海峡や大隅海峡を通過して日本列島をほぼ一周する威圧的な行動を見せたばかりである。ロシア艦艇はその後も対馬海峡から日本海へ抜けている。 メディアの多くは、領海侵犯や日本に対する示威行為のみを脅威として報道しているが、それだけではない。実は日本と外国とを結ぶインターネッ...

続きを読む

バイデン米大統領は、「米国はインド太平洋にとどまる」と宣言し、中国の習近平中国国家主席は、「戦略的安定」に向けて将来的に誓約するかどうかの検討を誓約するという雲をつかむような話をしていた。11月16日に開催の米中初首脳会談(オンライン)は、もともと期待値が低く、やらないよりはマシという実体のないサミットだった。ここから導かされる自由世界の教訓は、国防費を増やして抑止力を高め、直ちに対中投資に制限を...

続きを読む

立憲民主党の代表選(11月30日投開票)が盛り上がりに欠けるのは、4人の候補者からいま日本が直面する厳しい国際情勢に対する危機感が一向に伝わってこないからだ。誰が選ばれても、自民党にとって代わる政党に生まれ変わらせることはできないだろう。 同じ4氏による争いと言っても、9月の自民党総裁選との違いがあまりにも大きすぎる。自民党では経済、安全保障などで激しい政策論争が展開され、各陣営による党員票...

続きを読む

先の衆議院選挙(10月31日投開票)では、選挙期間中、コロナ対策や経済政策などで活発な議論が交わされたが、一つ大事な問題が置き去りにされたように感じた。在外邦人保護の法整備の問題である。 与党、野党に限らず、日本国民が外国で危険な状況になったら、政治は全力で救助すると答えるはずだ。しかし、選挙戦で在外邦人保護の法整備を最優先と訴えた候補者は、残念ながら見当たらなかった。アフガニスタンの首都カ...

続きを読む

平成30(2018)年の民法改正により、成年年齢が18歳に引き下げられ、令和4(2022)年4月1日から施行される。これにともない刑事裁判の裁判員の年齢も現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられる。 裁判員法13条で、裁判員は衆議院議員の選挙権を有する者の中から選ばれることになつてゐる。ところが、選挙権は公職選挙法の改正により平成28年から18歳に引き下げられたものの、その際、選...

続きを読む

米議会の諮問機関「米中経済・安全保障調査委員会」の年次報告書が17日公表され、その中で、中国による台湾侵攻能力は「初期的(initial)な能力を保有しているか、それに近づいている」と記述されている。 また本年6月、米国防大学出版部から出された「国境を越える中国軍(The PLA Beyond Borders)」の第2章では、人民解放軍が台湾侵攻に必要とする海・空からの兵員輸送力や後方支援能...

続きを読む

歴史認識問題での日本批判は中国と韓国が定番だが、今年はロシアがそれに加わってきた。ロシアはこの夏以降、第二次世界大戦中の日本の侵略行為を批判したり「戦争犯罪」の文書を公開したりしており、中韓以上の「反日」が目立つ。 スパイ・ゾルゲの再評価も ロシア外務省のザハロワ報道官は終戦記念日の8月15日、外務省声明を出し、「中国や韓国、東南アジアで日本の軍国主義者によって何百万もの人々が亡くなっ...

続きを読む

米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金を大量発行する量的緩和を漸次縮小する「テーパリング」に踏み切った。対照的に日銀政策は無力化の危機に直面しそうだ。FRBの政策転換と日銀の異次元金融緩和の組み合わせは円安を助長し、石油価格の急上昇と重なって日本の家計や企業の所得が相当程度海外に流出してしまう。さりとて、日銀がFRBに追随して量的緩和の出口に向かうと円安圧力は緩和されるかわりに、脱デフレは遠のく...

続きを読む

成長の著しいASEAN(東南アジア諸国連合)をめぐって、アメリカと中国が「勢力圏」の争奪を活発化させている。アジア軽視のトランプ前大統領に対し、バイデン大統領は「自由で開かれたインド太平洋」を掲げてアジア外交を積極展開し、中国を「ルールに基づく秩序への脅威」と位置付けた。対する中国は、これら首脳会議などを通じて「ASEANは近隣外交の優先事項」と応じて、綱引きは激しさを増している。 米国の影...

続きを読む

自民党の現職幹事長だった甘利明氏が10月31日投開票の衆院選小選挙区神奈川13区(大和市・海老名市・綾瀬市・座間市の一部)で敗れた衝撃は大きい。甘利氏は比例代表で復活当選し、自民党も絶対安定多数(261)を上回ったが、油断は禁物である。それどころか、与党・公明党の支援なしに勝ち抜ける地力をつけないと、次回以降の選挙で勝ち続けるのは危うくなるだろう。 現職幹事長敗退の衝撃と背景 甘利氏が...

続きを読む

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、インドのモディ首相は「2070年までの温暖化ガスの排出実質ゼロ」という計画を打ち出した。世界第3位の温室効果ガス排出国インドは、これまで具体的な目標設定に慎重であったが、今回の会議で中国の習近平国家主席が欠席するのに対し、途上国を代表して気候変動問題に積極的に取り組む姿勢を示そうとしているようにも見えた。 しかし、気候変動問題に関する...

続きを読む

日本で衆院選の選挙戦がたけなわだった10月後半、中国海軍とロシア海軍の艦艇計10隻が隊列を組んで日本列島をほぼ一周するという特異な行動を見せた。中国を念頭に日米や豪州、英国が今年夏以降、南シナ海などで多国間訓練を活発化させたことに対抗し、中露の軍事的連携を誇示する狙いがあった。ただし、中露が日米のような本格的な軍事同盟を形成することは考えづらく、中露の示威行動に動じるべきではない。 日米など...

続きを読む

北海道の寿都町で、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の文献調査の継続を争点に、10月26日、町長選挙の投開票が実施され、調査継続を訴えた現職の片岡春雄町長が1135票を得て、反対派候補を235票差で破り、6選を果たした。投票率は84%だった。 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の候補地を設定する第一段階である文献調査に北海道の寿都すっつ町と神恵内かもえな...

続きを読む

10月25、26日に言論NPOなどが主催する日中対話が行われた。筆者は、今回の対話には参加していないが、2年前に参加したことがある。この時は、中国側の参加者は人民解放軍軍人と、同軍と極めて関係が深い中国国際戦略研究基金会の張沱生教授であった。 言論NPO代表の工藤泰志氏は、対話の目的を日中の信頼醸成においている。筆者も1992年にスタンフォード大学の国際安全保障・軍備管理研究所で経験した日米...

続きを読む