公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2015.05.27 (水) 印刷する

自民党の議員外交はこれでよいのか 島田洋一(福井県立大学教授)

 自民党の二階俊博総務会長が、今月19日、韓国によるいわれなき日本非難が続いていることに関し、「国会に議員連盟はたくさんあるが、肝心なときに黙っている」、「議連はこういうときこそ騒がないといけない」などと日韓議連を批判したと伝えられた。

日韓議連は、額賀福志郎氏が会長、河村建夫氏が幹事長(いずれも自民)を務めている。

なお、両氏の海外での言動については、本論壇で批判したことがある。いずれも非常に理念および発信力の弱い議員である。

日韓議連訪韓団の迎合と朴裕河氏の正論(2014.10.27付 ろんだん)
河村建夫議員のヘリテージ講演に思う(2014.07.24付 ろんだん)

二階氏の苦言は正しく、また時宜を得たものと言える。しかし二階氏本人の行状はどうなのか。特に中国共産党政権との関係において「肝心なときに黙っている」議員の中心に常に同氏はあったし、今もある。

二階氏は約3千人を率いて訪中中の今月23日、習近平国家主席が発した「歴史の真相を歪曲することは許されない」との言葉を押し戴き、あまつさえ習氏の手を両手で包み、天高く掲げんとする卑俗なパフォーマンスに出たが、かつて一度でも、言論の自由、司法の独立、公正な選挙の重要性などに遠回しにでも言及し、中国側を牽制したことがあるのか。「歴史の真相を歪曲することは許されない」は、戦後アジアの歴史についても当てはまる、くらいのことも言うべきだろう。

安倍政権を強く支える姿勢を見せている点で、二階氏はいま有用な政治家なのだろうが、海外で日本の評価を上げる人物とは思えない。代表団の長に据えるべきではないだろう。下に参考記事を二つ挙げておく。

習氏「歴史の歪曲は許されない」 首相の70年談話を牽制 二階氏は習氏に安倍首相の親書渡す

【北京=沢田大典】中国の習近平国家主席は23日、中国訪問中の二階俊博自民党総務会長と約3千人の訪中団が北京の人民大会堂で開いた中国政財界人との交流式典に出席し、「今年は対日戦勝70年だ。当時、日本の軍国主義が犯した罪を隠すことは許されない。歴史の真相を歪曲することは許されない」と述べ、安倍晋三首相が今夏に発表する戦後70年談話を牽制した。

一方、習氏は式典後の面会で二階氏に対し、「このまま戦略的互恵関係を進めていけば、日中はいい結果になると期待している。安倍首相にもよろしく伝えてほしい」と述べて、関係改善に向けて努力する姿勢も示したという。

交流式典では、二階氏が習氏に首相からの親書を手渡した。習氏は交流式典に先立ち、二階氏と笑顔で握手を交わし、国会議員約20人らとの記念撮影にも応じたという。

2015年5月23日 産経新聞

韓国の安倍首相非難決議 二階氏「議連が肝心なときに黙っている」と苦言

自民党の二階俊博総務会長は19日の党役員連絡会で、韓国国会が安倍晋三首相の言動や「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録を目指す日本政府の行動を非難する決議を採択したことに関し、「国会に議員連盟はたくさんあるが、肝心なときに黙っている」と韓国関連の議連の対応に苦言を呈した。決議直前に訪韓した超党派の日韓議連が念頭にあるとみられる。

決議は、日韓・韓日議連の合同幹事会がソウル市内で開かれた翌日の今月12日に採択された。二階氏は、「議連はこういうときこそ騒がないといけない」とも述べた。原田義昭国際情報検討委員長が文化遺産登録をめぐり、党の対応を求めたことに答えた。

韓国の決議に関し、稲田朋美政調会長は19日、国会内で記者団に「非常に失礼で遺憾だ」と改めて不快感を示した。

一方、鳩山邦夫元総務相は、自身が主宰する派閥横断型の政策グループ「きさらぎ会」の臨時役員会で、「自民党総裁である安倍首相がいわれなき非難を受けているときに、党が何もしないのはおかしい」と執行部に毅然とした対応を求めた。

2015年5月19日 産経新聞