2020年2月の記事一覧
【韓国情勢】誤認されている韓国のコロナ検査の実態 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
中国発の新型コロナウイルスは、日本と韓国でもいま猛威を振るっている。日本では韓国政府の対応が日本に比べて優れているという議論が散見される。特に、ウイルス検査の件数の比較から、なぜ日本は韓国でできている大量の検査をできないのか、東京五輪・パラリンピックへの影響を恐れ、検査数を意図的に抑えているのではないか、などという疑惑の声をよく聞く。 ●新興宗教団体の感染対策に忙殺 しかし、韓国内で...
人民解放軍にとって武漢の意味 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
これまで新型コロナウイルスの震源地は、武漢の海鮮市場だとばかり思っていたが、最近の報道ではそうでないとする報道が多い。2月10日の「直言」では国基研の細川昌彦企画委員が、武漢が軍民融合を掲げる中国の産業政策「中国製造2025」の拠点であることを指摘した。筆者は、2015年末から習近平政権が行ってきた人民解放軍改編にとって武漢の意味合いについて紹介し、今回の新型コロナウイルスの発生源について考察し...
新型肺炎の経済リスクは不安心理の伝播 大岩雄次郎(国基研企画委員兼研究員)
経済ショックが起きた時、不安心理のコンテイジョン(伝播)が実態以上の影響を及ぼすことは、アジア経済危機を契機とした様々な影響分析を通して指摘されている。 新型コロナウイルス肺炎も、その正体が不明である故に不安心理は拡大しており、それに伴う経済活動の縮小が加速している。 新型肺炎による中国経済の停滞は不可避である以上、日本経済への影響は小さくないが、危惧すべきは、不安心理が実態以上の経済損...
期待に応じた処遇を自衛隊に与えてきたか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた人を隔離させる上で、諸外国の軍人と日本の自衛隊員に対する処遇の違いが目についた。 米国やブラジルでは、感染リスクを最小限に抑えるため乗客の帰国に当たってチャーター機を軍の基地に着陸させ、一時隔離についても軍の宿泊施設を使っている。日本でも、そうした措置が検討されたが、自衛隊の居住施設は大部屋でトイレ・浴...
サンダース大統領なら尖閣はどうなる 島田洋一(福井県立大学教授)
米民主党の大統領候補選びが佳境に入ってきた。その内、急進左派の候補は、バーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン両上院議員に絞られた。勢いがあるのは78才ながら、前回2016年の大統領選でも予備選でヒラリー・クリントン元国務長官の心胆寒からしめたサンダース候補である。 ●早々に独走態勢入りも ウォーレン候補はエリート臭が強く、弁護士時代に大企業を顧客に財を成したうえ、白人でありなが...
田中氏の「再反論」は反論になっていない 奈良林直(東京工業大学特任教授)
「温暖化は止まっていない」と指摘した2月6日付の「ろんだん」に対し、同10日付で筑波大学の田中博教授から「再反論」をいただいた。ところが、それは私が指摘したハイエイタス(温度上昇停滞期)以降の最近数年間の急激な温度上昇に対する反論になっていない。過去のデータに基づく解説文の域を出ておらず、それらの点を改めて指摘しておきたい。 田中氏は、一昨年、昨年の北半球の猛暑ならぬ酷暑、昨年のアマゾン、ア...
この時期に尖閣侵犯繰り返す中国の狙い 島田洋一(福井県立大学教授)
2月16日、尖閣諸島周辺の接続水域で中国海警局の船2隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。巡視船は、領海に近づかないよう警告したが、尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは15日連続だという。 この間、新型コロナウイルスの感染は拡大し、その防止に向けた日本の支援に対してネット上では中国人の感謝の書き込みが少なからず見られた。また、2月末には外交担当トップの楊潔篪中国共産党政治局員が...
新型肺炎で北朝鮮でも40人死亡か 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
軍事情報に強い韓国のジャーナリスト金泌在氏が2月6日、自身が主宰するネットテレビで伝えたところによると「北朝鮮で新型コロナウイルスによる肺炎のため40人が死亡した」という。北朝鮮当局はウイルスの感染者はいないと発表しているが、それは信じられない。韓国では複数の脱北者らが北朝鮮内の感染者数や死亡者数をそれぞれのルートで北の内部からつかみ、競って公表している。 2月16日現在、北朝鮮との国境に面...
裏目に出ている一帯一路 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
新型コロナウイルスの世界的拡散は中国の「一帯一路」政策とも関係している。一帯一路政策は、労働力も現地の労働者を使って現地の経済を潤すことはせず、中国本土から囚人まで現地に派遣する等の方法をとっている。このため春節等で一度中国本土に帰った労働者達がウイルスを現地に持ち帰って、感染を拡大する結果にも陥っているという。 ●一帯一路の拠点にウイルスは拡散 12日の米紙ニューヨーク・タイムズ(...
EUは「中国との接続」に舵を切る 佐藤伸行(追手門学院大学教授)
第5世代移動通信システム(5G)構築に中国の華為技術(ファーウェイ)を参入させるか否か、欧州で議論が続いている。こうした中、英国のジョンソン政権は華為の部分的参入を容認する方針を打ち出し、華為排除を求めている米国やこれに同調している日本を驚かせた。欧州連合(EU)から離脱し、これから苦難の道を歩む英国にしてみれば、経済上、今の時点で中国との関係悪化の引き金を引くのは得策ではないと判断したのだろう...
日本の神話を再評価すべき 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
我々が初等教育を受けた時、「非科学的な神話ではなく科学的な史実に基づいた歴史を」と先生から教わった。戦前の歴史教育が科学的な根拠に乏しい神話に基づいていることに対する戦後教育の反動であった。 しかし当時の人達が、古事記に代表されるような神話に基づいて思考していたことは事実である。時を経るにつれ、古事記の擬人化された表現の中に散りばめられた戦略・情報観が含まれていることを知るにつけ、建国記念日...
「温暖化は止まっていない」への再反論 田中博(筑波大学教授)
2月5日の「ろんだん」で、アラスカ大学の赤祖父俊一氏との連名で温暖化ハイエイタス(一時停止)を背景に「地球温暖化は殆ど止まっている」と書いたところ、翌6日の本欄で東京工業大学の奈良林直氏から「地球温暖化は止まっていない」とのタイトルで反論記事が掲載された。本稿はそれに対する再反論の主張である。 世界の年平均気温は100年で約0.7度の割合で上昇しているが、その上昇速度が2000年以降の15年...
地球温暖化は止まっていない 奈良林直(東京工業大学特任教授)
国基研の月例研究会などでもご登壇されておられる米アラスカ大学国際北極圏研究センター初代所長の赤祖父俊一氏らが2月5日の「ろんだん」で「地球温暖化は殆ど止まっている」と書いている。赤祖父氏は2018年9月10日の今週の直言【第542回】でも同趣旨のご主張をされているが、どうも違うと感じている。一昨年、昨年の北半球の猛暑を超えた酷暑や、昨年のアマゾン、アフリカ、オーストラリアの猛暑と干ばつ、それによ...
地球温暖化防止運動が暴走している。実は炭酸ガスの放出量は依然として急増しているが、地球温暖化は2000年頃から殆ど止まっている。コンピューターの計算によれば2000年から20年の間に0.1~1.5度上昇することになっている(2100年までは0.5~7.5度の上昇)。こんな矛盾と不確定さに満ちた予測をもとに地球温暖化は、依然として世界の大問題とされているのである。 ●気象学者に「気候」は...
台湾人の大半は漢族に非ず 伊原吉之助(帝塚山大学名誉教授)
台湾人を漢族とする誤解は、識者の間でも少なくない。台湾人の多くもそう信じている人が少なからずいるからややこしい。でも誤解は正しておかねばならない。 私がそれを承知したのは、1980年代末か、晩くとも1990年代の初期である。彭明敏先生が林媽利医師を連れて私が泊っていたホテルに訪ねて来られて仰るには、「台湾人の大半は漢族ではなく、マレー・ポリネシア系の原住民の子孫ですよ。私は自分の中に原住民の...