公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2022年2月の記事一覧

2月24日、ロシアによるウクライナへの大規模侵攻が始まった。今回のウクライナ侵攻は「奇襲」なのかというと、実はそうではなかった。昨年11月、米国はロシアの不穏な動きを察知しており、バイデン大統領は、「計画外軍事演習を計画しており、重大な挑戦」だと警鐘を鳴らしていた。その後、情報集約組織「タイガー・チーム」を編成したことからも、相当な情報を掴んでいたといえよう。 正確だった米国のインテリジェン...

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ロシアのウクライナ軍事攻撃の激化を受け、米国と欧州が2月26日、銀行間の国際決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシアの主要銀行排除を打ち出した。ロシアはドル、ユーロなど外貨取引が大きく制限され、多方面にわたって経済が打撃を受け、プーチン大統領の足下を揺るがす。制裁の意義はそればかりではない。ロシアと緊密な関係を築く一方で、軍事力を使って台湾併合を狙う中国の習近平国家主席・...

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ロシアは「反ナチ」とか「ジェノサイドから親露派住民を守る」とか、大嘘をつきながらウクライナに3方向から侵攻した。15日にロシアは「軍は撤収し始めた」と言ったが実際には増強していた。ロシアは「侵攻の意図はない」言っていたが嘘だった。18日には、バイデン米大統領は「ロシアは侵攻を決断したと確信している。侵攻は1週間後あるいは数日後」と述べたが、その通りだった。米インテリジェンスは正しかった。前者は画像...

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「悪いインフレ」の加速が懸念されている。背景は、この約10年間、日銀の異次元の金融緩和にもかかわらず、ほとんど上がらなかった物価が、ここにきて俄かに上がり始めた一方、平均賃金は過去20年以上ほとんど上がっていないのみならず、現状では、大幅な引き上げは期待薄であるためである。 日本経済は、本当にインフレに向かうのか。物価上昇の一面に惑わされず、問題の所在を見極める必要がある。 当面は「悪...

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国会内での国会議員の発言は、議員の自由な議論を確保するため、院外で責任を問われないとする免責特権が憲法51条で定められている。だが、事実に基づかずに質問をし、民間人の人権を傷つけていることがある。国会議員は特権を乱用していいのか。2月15日の衆院予算委員会中央公聴会で、正面からこの問題を提起したのが、自身も国会質疑で野党議員から名指しで中傷された経験を持つ政策シンクタンク「政策工房」の原英史社長だ...

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ロシアのプーチン大統領がこのところ、核兵器使用に安易に言及するのが気になる。2月19日には、最高司令官として核ミサイル部隊による弾道ミサイル発射演習を自ら指揮した。ウクライナ危機が高まる中での核の恫喝は不気味で、国連安保理常任理事国としての責任と自覚が問われよう。 クリミア奪還には核使用も プーチン大統領は2月7日、訪露したマクロン仏大統領との共同会見で、「ウクライナが北大西洋条約機構...

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2月15日付の「ろんだん」で「IOCのガバナンスに問題はないか」と書いたが、ロシア・オリンピック委員会(ROC)のドーピング問題が拡大の様相を見せている。薬物を使用したとされる女子フィギュアスケートのワリエワ選手にスポーツ仲裁裁判所(CAS)は出場を認めたが、問題はCASのトップが国際オリンピック委員会(IOC)副会長のコーツ氏であることである。行政のナンバー2が司法のトップであるのは、まさに利益...

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冬季北京オリンピック競技において、審判の判定に疑念が噴出している。実は、筆者は東京都剣道連盟の倫理委員長を拝命し、都内各ブロックでの講習会で倫理講習に任じている。そのスポーツ倫理の観点から国際オリンピック委員会(IOC)のガバナンス(統治)に疑問を呈したい。 審判員構成に利益相反の疑い スポーツ倫理には、根底にある理念と、綱紀規定に違反していないかを問うコンプライアンスの間に、罰則を伴...

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武漢ウイルスのオミクロン変異株の拡がりは1日10万人を超える感染者数を記録するに至っているが、ようやくそのピークを迎えたようである。筆者は1月12日付の「ろんだん」において如何に人と人の接触を低減できるかが対策の主眼であることに言及した。その後、1月21日に厚生労働省のアドバイザリーボードは、「オミクロン株の特徴を踏まえた効果的な対策」を発表し、感染リスクの高い場面と場所に焦点を絞った“人数制限”...

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昨年末『2034米中戦争』(原題:A Novel of the Next World War)が出版された。著者は元米海兵隊特殊部隊員のエリオット・アッカーマンとタフツ大学フレッチャースクールの学長を2018年まで勤めたジェイムズ・スタヴリディス元海軍大将である。スタヴリディス氏は第二次大戦以降、米海軍で最も頭脳明晰で優れた戦略家と言われている。 互いを信用せぬ中露に同盟はなし 小説は...

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最近、私は対北朝鮮制裁が大変効果をあげていることを示す内部文書を入手した。そこには「だれでも(生活が)『苦しい』『大変だ』という言葉がすぐ出てくる」「(このままでは)東ヨーロッパの社会主義背信者たちのような革命の敵が出てくる」などと書かれていた。 私が入手したのは2021年8月に幹部と人民への政治講演のために作られた「幹部および群衆講演資料」だ。A4で8ページの同資料には「反社会主義、非社会...

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現在進行形のウクライナ危機は、米欧間に働く遠心力を改めて印象付けている。ロシアがウクライナに侵攻するのか否か、侵攻するとすればどのような形をとるのかはなお予断を許さないが、現時点ではっきりしたのは、欧州に対する米国の勢威が明らかに衰えているという現実であろう。 米欧間の溝は、伝統的な欧州同盟国を軽視したトランプ政権によってもたらされたと思いがちだが、「アメリカ・イズ・バック」と宣言したバイデ...

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3日(米国時間では2日)、博士号を取得した母校の米ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(School of Advanced International Studies-SAIS-)で、リモートによる講演を行った。テーマは「台湾有事は日本の有事」である。 約30分の講演後、30分程度の質疑応答を行ったが、それを通して日本に対する米国の期待を感じた。 同盟はともに汗をかく関係に...

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米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が政策金利の引き上げに動いている。基軸通貨ドルの金利上昇は、ドル金融に依存する世界を揺さぶる。米国との緊張関係にある中国とロシアはその代表格だ。中国はドル本位の通貨制度の脆弱さを衝かれ、産油国ロシアはドル建ての国際原油相場に翻弄されるのだ。 悪夢だった2015年の引き締め 中国の習近平共産党総書記・国家主席にとって、米金利の引き上げは「悪夢」...

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