公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2022年5月の記事一覧

バイデン米大統領の今回の訪日に際し、米国が新たに提唱したインド太平洋経済枠組み(IPEF)へのASEAN諸国参加に関しては、米国より遙かに高いASEANの信頼度を得ている日本の役割が欠かせなかった。 24日に行われた日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」首脳会合の共同声明に記載された不審船探知などの海洋状況把握(Maritime Domain Awareness-MDA-)に関しても、これま...

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岸田文雄首相は23日、来日中のジョー・バイデン米大統領と首脳会談を行い、米国が核兵器と通常戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」の強化に向け、閣僚を含め緊密に協議することで一致した。だが首相は拡大抑止に関する信頼性について、さらに踏み込んで質すべきだったのではないか。 北朝鮮は、今回のバイデン大統領の日韓歴訪に際し、大陸間弾道弾(ICBM)の発射実験と核実験を行う可能性があった。日本政府高官は...

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米国の利上げが本格化した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は5月4日に大幅利上げに踏み切ったが、年内は来月以降5回に分けて連続追加利上げに踏み切る構えである。これにより米国の高インフレが鎮まれば、わが国を含め、世界経済の安定につながるが、中国は別だ。 習近平総書記・国家主席によるプーチン・ロシア大統領との「盟約」、無理筋の「ゼロコロナ」政策への執着は西側資本ばかりか中国の富裕層、...

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中立国のスウェーデンとフィンランドがNATO(北大西洋条約機構)加盟に舵を切ったことにより、プーチン露大統領の戦略的な敗北が決定的となった。ウクライナに侵略したプーチン氏が掲げた戦略目的が、NATOの東方拡大を阻止することであってみれば、軍事力の恫喝がかえってロシアにとっては悲惨な結果を招いた。自由社会がウクライナ戦争から得た教訓は、力ずくの拡張主義に対する最大の抑止が「同盟の結束」であることを確...

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北朝鮮が新型コロナウイルスの感染拡大を初めて認めた。5月14日に「建国以来の大動乱」だと金正恩委員長が語り、翌15日には発熱者が120万人以上、死者50人と発表した。検査キットがほとんどない北朝鮮では、発熱者のほとんどはコロナ感染者である可能性が高い。医療体制も貧弱であることも考え合わせると死者50人は少なすぎる。15日に私が関係者から聞いたところによると、発熱者の約半分が平壌の患者で、平壌だけで...

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国際原子力機関(IAEA)の要請により小型量産型原子炉(SMR)の規格や効率的な設計・製造の技術に関するオンラインの国際会議に急遽参加した。会議は5月10日から13日にかけてウイーンのIAEA本部で開かれ、世界から約70名の専門家が参加したが、なんと筆者は初日のプレゼンに指名された。 SMRを設計・建設するうえで、安全性と信頼性の確保と大幅なコストダウンは欠かせない。そのためのCodes a...

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5月9日付本欄で岩田清文氏(元陸上幕僚長)が「ロシアの弱体化示すウクライナ戦争」と題する示唆に富んだコラムを寄稿された。私は、ロシアの侵略に対してウクライナの愛国的な戦いがプーチンの当初の目論見をくじいたことによって、東アジアの安全が守られたという情報を入手しているのでそれを紹介したい。 早期占領なら中国も台湾侵攻か 3月下旬頃、私は北朝鮮筋から次のような情報を聞いた。 ロシ...

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5年ぶりの韓国保守政権が日韓関係を好転させるかどうかは、実は韓国の国内政治にかかっている。 華やかな大統領就任式で「自由民主主義の韓国を再建する」と演説した尹錫悦氏だが、尹氏の就任時支持率は異様に低い。各種世論調査で最低は41%、高くて50%台前半。歴代政権のスタート時に比べ約30ポイントも低い。韓国は文在寅前政権で左派勢力がさらに根深く社会に浸潤した。尹政権にとって、いわゆる慰安婦や徴用工...

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連休中に自民党の小野寺五典安全保障調査会長と佐藤正久国防議連事務局長が米国に出張し、戦略国際研究所(CSIS)を始めとするシンクタンクで、年末までに取りまとめる予定の国家安全保障戦略等における「反撃能力」などについて説明した。報道によれば、出席者からは「日米の合同司令部がない中、どのように反撃を行うのかなど疑問点も多くある」との指摘がなされたという。 北大西洋条約機構(NATO)を始め米韓同...

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日本を含む先進7カ国(G7)の首脳は5月8日の共同声明でロシア産石油の段階的輸入禁止を打ち出し、岸田文雄首相は声明を受けて「原則禁輸」を表明した。日本は米欧に追随するいつものパターンのようだが、今後試されるのはいわば日本としての国家意思だ。横暴きわまりないロシア・プーチン政権を追いつめるためには、日本もまた共に「返り血」を浴びるという決意があればこそ、ロシアと同じ専制主義中国の脅威への対抗で欧米へ...

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ウクライナ侵略前におけるプーチン大統領の思惑は、短期間にゼレンスキー政権を倒し、5月9日の戦勝記念日には、ウクライナの中立化・ロシア化達成を記念した大々的な式典を挙行することだったろう。 しかしウクライナ軍は、2014年のロシアによるクリミア併合以降、米国の支援を受け、ロシアの想像を越えるスピードで進化し、戦える力を付けていた。一方のロシア軍は、クリミア併合の真の勝因から学ぶことなく、ウクラ...

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欧州はロシアの天然ガスと石油に依存しており、現在も輸入を続けている。もしもロシアが欧州向けの天然ガスのバルブを閉めれば、ドイツをはじめ欧州の国々のエネルギー源は断たれ、大停電が発生して産業と経済は大打撃を受ける。ドイツは2022年中に脱原発を完了すると言っているが、自国の石炭エネルギーに戻るだけだ。フランスをはじめ欧州連合(EU)各国が原発の建設を急ぐとしているが、建設には4、5年かかる。我が国で...

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ウクライナを侵略したロシアは当初、5月9日の対独戦勝記念日までに一定の成果を挙げて国内的に戦勝ムードを祝う予定であったが、東部2州の完全制圧すらままならない状況である。如何にロシア軍の侵攻が拙劣であるかは、純軍事的観点から約20年前のイラク戦争と比較してみると良く判る。 拙劣さ目立つロシア軍 国土面積と人口で比較すると、ウクライナが60万平方キロメートル、4300万人であるのに対し、イ...

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北大西洋条約機構(NATO)への加盟を控えてきた北欧フィンランドとスウェーデンが、ロシアの凶暴なウクライナ侵略を目の前に長年の政策を転換し、加盟を目指す見通しになった。この北方拡大によって、NATO圏は北西からもロシアのサンクトペテルブルクまで約150キロの距離に肉薄し、バルト海におけるロシア封じ込めの輪は縮まることになる。ロシアを強く刺激するリスクはあるものの、NATOの抑止力は強化されるわけで...

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石油価格が高騰する中で円の対ドル相場下落が止まらないが、政府はうろたえ無用。円安は積極財政とセットで日本経済再生の好機に変えられるからだ。 円安は輸入コストを余計に押し上げ、家計や中小零細企業を苦しめる。そこでメディアでは「悪い円安」論が横行し、鈴木俊一財務相までもが同調する始末である。経済評論家の一部も日銀はただちに超金融緩和政策を打ちきり、金利を引き上げろと言い出しているが、需要拡大のた...

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自由民主党の安全保障調査会は4月26日、「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」を公表した。 長年、幹部自衛官として国家安全保障に携わって来た者として、今回のウクライナ戦争の教訓から、「提言」には多くの疑問点がある。 北は核ミサイル保有の可能性 3頁目の情勢認識(北朝鮮)では、短距離弾道ミサイルや核実験の再開に関する記述はあるものの、我が国を狙った核弾頭搭載の短距離弾道ミサ...

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