公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2018年10月の記事一覧

 北海道地震に伴う道内全域停電(ブラックアウト)について、国の認可法人である電力広域的運営推進機関(広域機関)の検証委員会が中間報告をまとめた。その内容から、9月12日付の「ろんだん」で筆者が指摘していたことが改めて明確になったと思う。  マスコミ各社は、中間報告に対する社説でも、「苫東厚真火力発電所への電源一極集中がブラックアウトの背景にある」(北海道新聞)などと北海道電力を非難する論調が目に...

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 安倍晋三首相は10月26日、北京で習近平国家主席、李克強首相と相次いで会談し、日本円と人民元を互いに融通する「通貨交換(スワップ)協定」の再開など金融面の連携強化でも合意した。だが、通貨スワップ協定の評価には、一部にミスリードが見られる。今回の協定は、事前に報じられていた通貨防衛のための通貨スワップではなく、為替スワップである。  日銀は「中国人民銀行との為替スワップ取極締結」としている。外務...

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 対ロシア外交に影響力を持つ鈴木宗男・新党大地代表が、10月19日付の産経新聞インタビューで北方領土返還交渉について語った。「平和条約の締結後に歯舞群島と色丹島を引き渡す」とした日ソ共同宣言(1956年署名)をもとに、「2島+α」を目指すべきだと述べている。「α」については、国後、択捉両島との自由往来や現地での共同経済活動を例に挙げた。  ●交渉文書は「共同宣言」だけでない  鈴木代表は、...

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 トランプ米政権がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約破棄を表明した問題では、条約破棄が、うまくいけば中国や北朝鮮の同種ミサイル全廃につながり、その結果、日本の安全を高め得るという視点で論ずることが必要である。  現INF全廃条約が廃棄の対象としたミサイルは、射程500~5500キロの地上発射の弾道ミサイルと巡航ミサイルの全部で、核弾頭だけでなく通常弾頭のミサイルも含む。仮に条約の廃棄により...

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 22日の「ろんだん」で「米の中距離核戦力(INF)全廃条約離脱表明を歓迎する」旨を書いた。日本は当然のことながら、INF全廃条約で禁止されている射程500km以上の陸上配備ミサイルは大気圏外を通過する弾道ミサイルはもちろん、大気圏を通過する巡航ミサイルも保有していない。  政府・自民党は2004(平成16)年の16大綱(中期防衛力整備計画)策定で、射程300kmの巡航ミサイルを装備しようとした...

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 先日、都内の有名私立大学で講義を行った。約300名の聴衆学生の内、実に3分の1が外国人で、その大半が中国人であった。  日本の大学は、少子化の為、外国人留学生を入学させないと経営が成り立たないという。このため、米国ではスパイ活動の温床として警戒されて閉鎖が相次いでいる孔子学院に関しても、日本では中国人留学生を多く入れている関係上、閉鎖に踏み切れないでいる。  また、トランプ米政権は、中国当局...

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 本部がフランスにある国際刑事警察機構(ICPO)の中国人総裁だった孟宏偉氏が一時帰国中に失踪し、中国公安省が10月8日に「汚職で調べている」と拘束を認めた。これに対し、孟氏の妻は欧米メディアなどに対し、「夫はえん罪だ」と訴え続けている。  ●背景に権力闘争、亡命阻止か  孟氏の出身母体は中国公安省だが、拘束された本当の理由はあきらかではない。ただ少なくとも、中国当局が発表した「汚職」では...

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 安倍晋三首相は10月15日の臨時閣議で、消費税率を予定通り来年10月1日に現行の8%から10%へ引き上げる方針を表明した。  10%への引き上げ時には、低所得者対策として、食料品などに軽減税率が導入されることになっているが、この議論に関心が集中しすぎる余り、消費税増税の本来の意義を矮小化させてはならない。  ●「低所得者に優しい」のウソ  軽減税率は、酒類と外食を除く飲食料品や新聞...

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 10月20日、米トランプ大統領が中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を表明した。これに対してNHKの報道は、「残念、頭にくる」と言う広島・長崎市民や非核団体の声だけを報道した。しかし、INF全廃条約に縛られない北朝鮮や中国の中距離核戦略に晒されている日本にとって、懲罰的抑止力が向上するので好ましい。米国による今回のINF全廃条約からの離脱表明は中朝に対するメッセージでもある。  ●条約...

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 アメリカ政治に関するNHKのニュースは、民主党支持の米主流メディアの報道を受け売りしたものが大半である。これに依ってアメリカ認識を形成すると確実に事態を見誤ることになる。  いつも強調することだが、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、3大テレビネットワーク、CNNなどの主流メディアに加え、共和党主流派に近いウォールストリート・ジャーナル、共和党保守派に近いFOXニュース、草の根保守に強...

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 米中の「新冷戦」が厳しさを増す中、日本は旗幟を鮮明にすべきである。米国は同盟国であるのに対して、中国は我が国の領土を狙おうとし、かつ価値観を異にする国である。にもかかわらず、「日米同盟、日中協商」とか言って米中両国に良い顔をしようとする人達もいる。安易な対中協力は、米国の不信感を招きかねないので止めるべきだ。  ●八方美人外交では侮られる  昨年の北朝鮮による弾道ミサイルの度重なる発射に...

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 昔から基本的人権を擁護してきたはずのカトリック教会は、最近は一歩退いて人権を厳しく圧迫する共産主義の中国の味方になってしまったのか。  ローマ法王庁(バチカン)は9月、中国との間で中国国内のカトリック司教任命に関する暫定合意に達したとのことである。暫定合意の内容がまだ公開されていない現状では正確なコメントをすることは難しいが、報道によると、中国国内の司教を任命するにあたって今後バチカンは、中国...

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 新聞報道によれば10月8日、日中防衛当局局長級協議が北京で開かれ、自衛隊と中国軍の偶発的な衝突をさけるための「海空連絡メカニズム」をめぐり、ホットラインの早期開設が重要だとの認識で一致した模様である。  本メカニズムは6月から運用を開始しているが、紛争のエスカレーションを防止するために軍の指揮官同士、あるいは政府間で直接連絡を取り合うホットラインはまだ開設されていない。無いよりはあった方が良い...

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 中国との事実上の「新冷戦」を宣言したペンス米副大統領演説(10月4日)の衝撃波が拡がる中、10月10日、米司法省が中国の政治警察兼情報機関である国家安全部の工作員を経済スパイ容疑で逮捕、起訴したと発表した。米政府当局が中国情報機関の正規職員を、実名を挙げた上で訴追したのは初めてである。  いずれにせよ米政府は、中国との「新冷戦」を戦い抜く決意を固め、戦いの手法の多様化にも乗り出したと言える。 ...

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 拓殖大学海外事情研究所の隔月誌「海外事情」の7・8月号で、同大教授の富坂聡氏が中国資本による国土買収について、「土地を買い占めているのは日本の乗っ取り計画だ、と騒ぐ暇があるなら、なぜ、土地を活用しないのか」「何もしなければ、北海道にずっと不毛の空き地が残るばかりだ」と述べている。  もっともらしい論に聞こえるが、富坂氏は国土が外国資本に買収されることの根本的問題を、一般的な経済行為とすり替えて...

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 10月3日に公表されたアーミテージ・ナイ報告書は合計10の政策提言を挙げたが、その中で特に軍事的観点から有効と思われるのが、日米の合同統合任務部隊の創設である。同報告書については、アーミテージ、ナイ両氏とも、現在はトランプ政権の外にいるため、影響力は小さいいとする向きもあるが、国防総省でアジア・太平洋安全保障問題担当を務めているランディー・シュライバー次官補はアーミテージ氏と表裏一体で、日本政府...

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 中国の勢力圏拡大構想「一帯一路」に代わる日米主導のインド太平洋戦略に資金的裏付けを与える新たな動きがワシントン発で相次いだ。  一つは、開発途上国のインフラ整備に投資する米国企業に資金を貸し付ける政府系金融機関を新設する法律(BUILD ACT)が上下両院で超党派の支持により圧倒的多数で可決され、10月5日、トランプ大統領の署名を経て成立したことだ。  もう一つはリチャード・アーミテージ元国...

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 尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、今年に入り、中国が新たに海上ブイを設置していたことが2日、分かった。同日付の産経新聞が報じた。  尖閣周辺のEEZ内で中国のブイが確認されたのは2016年8月以来。他国のEEZで断りもなく海洋調査を行うのは国連海洋法条約に違反している。気象観測のほか、軍事目的で海中のデータを収集している可能性がある。この中国の狙いについて軍事的...

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