公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2019年12月の記事一覧

 共同通信が12月26日報じたところによると、日本政府は2014年に北朝鮮から2人の拉致被害者の生存情報を伝えられながら、政府高官が安倍晋三首相の了承を得たうえで、公表しないと決めていたという。事情を知らない国民がこの記事だけを読むと許しがたい隠蔽行為と思うだろうが、この記事にはいくつかの疑わしい点がある。  まず2人とは、認定被害者の田中実さんと未認定被害者で在日朝鮮人の金田龍光さんで、共同通...

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 最近、マスコミの在り方を考えさせられる案件相次いでいる。その中から2題。  ひとつは韓国への輸出管理の厳格化だ。7月に日本政府が発表した後、輸出管理への理解不足と思い込みによる報道が横行した。それが日韓関係を悪化させていった要因の一つでもあったと思う。  例えば、「韓国の半導体産業に大打撃」との報道だ。7月4日、日本政府は半導体材料の3品目の韓国向け輸出を個別許可にした。これは日本から韓国に...

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 23日の中韓首脳会談で、韓国の文在寅大統領は中国の習近平国家主席に「香港やウイグルの問題は中国の内政」「(トランプ米政権を念頭に)保護主義や一国主義は世界を撹乱」「一帯一路への連携協力を模索する」と述べた。  文大統領の発言は、米国の方針とは一線を画し、中国に擦り寄る姿勢を鮮明としたものと言わざるを得ず、これが米国の同盟国かと耳を疑う。  文大統領は韓国で有名な人権弁護士だったというが、単な...

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 ロシアは2016年の米大統領選に介入し、民主党へのサイバー攻撃やヒラリー・クリントン候補を貶めるフェイク・ニュースで「親露派」トランプ氏の当選に一役買ったが、結果的には、ロシアにとって裏目に出たのではないか。2020年の大統領選では、トランプ政権への失望から介入を控えるとみられる。  ●制裁総額は500億ドル  米議会は選挙介入に激怒し、対露経済制裁を断続的に強化。12月にもロシアからド...

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 「反日種族主義」の著者の1人である李宇衍博士が12月18日、ソウル日本大使館近くで慰安婦像撤去と水曜集会に反対する1人デモをしていたとき暴漢に殴られるという事件が起きた。日本では産経新聞が19日付(WEB上では18日)で報じた。ところが、警備に立っていた警察は犯人を現行犯逮捕せず、むしろ犯人と被害者を一緒に派出所に任意同行して、犯人が暴行を続けるのを放置した。李宇衍博士らは警察の対応を「テロを傍...

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 12月22日、北朝鮮は金正恩が主宰して労働党拡大中央軍事委員会を開催し「自衛的国防力発展」について論議したと報じた。予告していた労働党中央委員会全体会議はその後に開かれるのではないかと予想されている。  私は以下のような北朝鮮内部情報を数日前に入手していた。それによると、25日以前に中央委員会全体会議が開かれることになる。情報の正しさはすぐ検証されるが、現時点で分かっていることとして、ここに国...

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 世界貿易機関(WTO)の中枢機能の一つである紛争処理機能が暗礁に乗り上げている。12月10日、「最高裁判所」に相当する上級委員会の2人の任期満了により、委員が1人となり、新規案件の審理を開始できない事態に陥った。  新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は開始以来ほぼ20年を経過したが、先進国と途上国間の対立から合意の見通しは全く立っていない。自由化やルール作りの機能不全に加えて、紛争処理の司法...

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 2020年1月末をもって、英国は遂に欧州連合(EU)から離脱する。英国が持つ「歴史の運動法則」からすれば、それは本来の姿への回帰であり、欧州共同体(EC)時代も含めれば、過去ざっと半世紀に及ぶ英国の欧州大陸への帰属は、むしろ例外的な一時期だったと言える。  ブレグジット(英国のEU離脱)は、欧州大陸の主導権を握る独仏枢軸の重力圏から脱した英国が、伝統的なバランス・オブ・パワー(勢力均衡)戦略へ...

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 時に条約の破棄や米軍撤退を仄めかしつつ、同盟国に踏み込んだ「責任分担」を迫るトランプ大統領の姿勢は、アメリカの同盟政策の本筋からの逸脱であろうか。  確かに、その露骨な物言いはしばしば「大統領らしさ」を欠く。しかし過去半世紀の流れを振り返ると、その基本姿勢には、逸脱どころかむしろ本筋への回帰と言える面がある。  ●在外米軍削減は歴代政権に共通  ちょうど50年前の1969年7月25日、...

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 中国によるウイグル人弾圧に関する400ページに及ぶ内部文書が11月17日付け米紙ニューヨークタイムズによって暴露された。これを受けて、12月2日付と同12日付の「直言」で国基研企画委員兼研究員・福井県立大学教授の島田洋一氏と参院議員の山谷えり子氏が、相次いで「保護する責任」と「人道的介入」の必要性について取り上げている。  島田氏は「近年、国際法の分野では、国家が領域内の住民の『保護する責任』...

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 沖縄県石垣市に本社を置く「八重山日報」という新聞を購読している。首都圏に届くのは郵送のため2日遅れだが、ブランケット版8ページの日刊紙だ。  この新聞が面白いのは、尖閣諸島周辺の領海や接続水域に中国の公船が入った場合に必ず1面で特筆されること、「みなとだより」と題して、那覇港や石垣港などの船の発着が知らされること、などにある。同様に「空の便」も、那覇、宮古、石垣、与那国など沖縄の各空港の運行情...

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李宇衍博士らが出した慰安婦像撤去を求める声明は以下の通り。 過去の記事はこちら ◇ 慰安婦像撤去と水曜集会中断を求める声明    慰安婦像は歴史を歪曲して韓日関係を悪化させます。 慰安婦像は「強制的に連れて行かれた少女」という歪曲されたイメージを作って国民にこれを注入・伝播しています。  しかし実際の慰安婦は10代初めの少女ではなく、平均的に20代半ばの成人でした。 そ...

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 英国の総選挙でボリス・ジョンソン首相率いる保守党の圧勝は、「決められない政治」に辟易していた有権者の選択としか思えない。3年半も続いたブレグジット騒動は、英国社会を分断したうえ経済の足を引っ張るなど、ポピュリズム政治のツケがいかに大きいかを見せつけた。これにより、英国が欧州連合(EU)から離脱することが決定的になった。  EU離脱後の英国の将来を見据えれば、ジョンソン政権は米英の「特別な関係」...

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 日本政府が、来年にも調印が予定される東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定への不参加を表明したインドに対して、猛烈に翻意を働き掛けている。担当閣僚の梶山弘志経済産業相が12月10日にニューデリーでインドの商工相と会談したのに続いて、15~17日には安倍晋三首相が年次首脳会談のため訪印し、モディ首相に交渉への残留を求める。  ●インド誘った日本の思い  そもそも、東南アジア諸国連合(A...

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 日米貿易協定が国会承認を経て来年発効する。焦点の一つは米国が日本の自動車・自動車部品にかけている関税の行方だったが、日本は結局、撤廃を実現できなかった。   日米両国の間で「自動車関税の撤廃について更なる交渉をする」と付属文書で明記された。日本政府は「合意は自動車関税の撤廃を前提としており、今後、撤廃時期などを交渉する」と説明している。しかし、それは強弁にすぎるだろう。  ●WTOルール...

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 日本のマスコミはまったく取り上げないが、韓国の国会で与野党間の激しい政争が起きている。与党が群小野党と組んで議決を強行しようとしている2つの法案が成立すれば、韓国は全体主義体制に入ってしまう。すなわち、連動型比例制への選挙法改正と、文在寅政権が検察改革の核と位置付ける高位公職者犯罪捜査処(公捜処)新設法である。これに強く反対している野党第一党、自由韓国党の黃教安代表は11月20日から8日間、寒空...

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 東京地裁で11月7日、4年前に成立した安全保障関連法(以下、安保法)が憲法に違反するとして、左翼の学者など1500人余りが国に賠償を求めていた事件の判決が出た。当然のことながら、訴へは認められなかつたのである。  原告グループは、この種の訴訟を全国各地の裁判所に多数起こしてをり、すでに札幌で請求棄却の判決が出てゐる。  私はこの東京地裁の判決についてではなく、この判決について11月26日付の...

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 今年は日本労働組合総連合会(連合)が結成されて30年の節目にあたる。ベルリンの壁崩壊と同じだ。日本社会党の解党は日本労働組合総評議会(総評)の解散、連合への移行が致命傷だったと聞く。それに共産主義の壁が崩壊したのだからダブル・パンチだったのだ。民社党も解党に追い込まれた。それは小選挙区制度導入と、労働組合の大勢がそれを指向したことと、やはり全日本労働総同盟(同盟)解散の影響が大きかった。 ...

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 10月から11月にかけて行われた天皇陛下の即位に伴う一連の儀式やローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇訪日行事についての日本の英文メディアには、リベラル、左寄りの見方を大きく扱うなどバランスに欠けた報道ぶりが目立った。またかという思いである。連日の日本語報道の陰に隠れているが、外国に与える影響が大きいだけに、看過できない。  ●即位礼では一方的な批判も  とりわけ、リベラル左寄りの朝日...

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