公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2021年12月の記事一覧

ロシアはウクライナ国境付近に兵力を集結し、軍事的な脅しをかけている。米メディアによると、アメリカの情報機関は、ロシアは推定17万5000人を動員しており、ウクライナを攻撃する可能性があると見ている。またロシアは、北大西洋条約機構(NATO)に、東方不拡大を要求している。つまり、ウクライナとモルドバ、ジョージアはNATOに加盟してはならないと主張しているのだ。ロシアは、ウクライナにアメリカの軍事施設...

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習近平政権は貧富の格差を縮小し、社会全体が豊かになることを目指すという「共同富裕」の実現を重点目標として打ち出している。その目標達成の一環であるのか、最近中国では、IT企業や学習塾への締め付け、芸能人の摘発など富裕層を狙ったとみられる動きが目立っている。そもそも「共同富裕」とはどういった考えなのか。 既得権益層抑えつつ再分配 中国は「社会主義」を堅持してきた。しかし、江沢民の時代に導入...

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自民党はそのホームページにおいて、憲法改正の「条文イメージ」として、①自衛隊の明記②緊急事態対応③合区解消・地方公共団体④教育充実―の4項目を提示し、このうち①について次のように敷衍している。 ・憲法改正により自衛隊をきちんと憲法に位置づけ、「自衛隊違憲論」は解消すべき ・現行の9条1項・2項とその解釈を維持し、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべき と...

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日本国憲法は、様々な点でアメリカ合衆国憲法をモデルとした(させられた)が、重要な違いも少なからずある。その一つが改憲規定である。 米国憲法では、「連邦議会は、両院の3分の2が必要と認めるときは、この憲法に対する修正を発議し」(ここまでは日本国憲法とほぼ同じ)と規定した後に、「または3分の2の州の立法部が請求するときは、修正を発議するための憲法会議を召集しなければならない」との一節が続く。 ...

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先日の衆議院選挙で、憲法改正に消極的な立憲民主党が共産党と提携したことも一因で、議席数を減らし、所謂改憲勢力が衆議院の3分の2以上の議席を得たことは御同慶の至りである。その結果、開店休業状態で国費を無駄に使つてゐると非難されてゐた衆院憲法調査会が国会開会と同時に、12月16日、早速討議を始めたことは喜ばしい。 当然あるべき規定も欠く現憲法 私は何度も「ろんだん」で主張したやうに(201...

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12月16日、衆議院選挙後、初めての憲法論議が衆議院憲法審査会で行われた。自由民主党が「自衛隊の明記」など4項目をたたき台とし、「国民のための憲法論議を一層深めていきたい」と述べたのに対し、立憲民主党は「『論憲』の立場をとり、必要な議論は行っていくが、特定の改正案を前提とするものや、改憲ありきであってはならない」と述べた。 日本維新の会は「来年の参議院選挙で憲法改正の国民投票を」と具体的スケ...

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16日にフィリピン大学法学センター(University of the Philippines Law Center)で日米比による南シナ海での船対船遭遇戦(Ship-to-Ship Encounters in the South China Sea)に関するテレビ会議が行われた。 日本からは筆者が、米国からは海軍大学で国際法を教えているジェーイムズ・クラスカ教授が、フィリピンからは元海軍少...

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ロシア軍が国境地帯に集結するなどウクライナ情勢が緊迫している。その背景に関し、ウイリアム・バーンズ米CIA長官が、より自由な立場にあった2年前に、興味深い分析を記している。バーンズ氏は国務省出身で、外交現場において長く中東、ロシアを担当した。 NATO拡張は「不必要に挑発的」 『裏交渉−アメリカ外交回顧録』(原題 William J. Burns, The Back Channel: ...

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中国の習近平政権は不動産大手、恒大集団の巨額債務危機を封じ込めようと躍起になっている。米ウォール街を中心とする国際金融界も、中国債務バブル崩壊不安が世界に飛び火するのを恐れ、ことを荒立てないよう対中配慮が目立つ。平成バブル崩壊後の日本に容赦しなかったのとは大違いだ。 が、これで中国経済は軟着陸かというと、そうは問屋が卸さない。不動産を軸にした固定資産投資を土台とする中国式経済モデルの行き詰ま...

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岸田文雄首相の軸足がどこにあるのか見えてこない。現在のようなコロナ禍のなかでは、政策の実行に際して、時に岸田首相が言う様に「迅速かつ柔軟な対応」が必要ではあるが、首相の理念がまったくどこにあり、それが政策にどう反映されているのか伝わってこない。 象徴的な例が「18歳以下への10万円給付」問題である。これまでは、5万円分は「クーポン」とし、「現金」の「一括給付は想定していない」と説明してきた。...

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英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、「脱石炭」が議論の焦点になり、40カ国余りが合意した。しかし、現在、アジア地域で建設中の石炭火力発電所は200カ所に迫り、インドでは28カ所、中国では95カ所、インドネシアでは23カ所に上る。これら新規の石炭火力発電所は、今後何十年にもわたりCO2を排出し続ける。これを先進国の論理で否定するのは不可能で、このままで...

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ウクライナ国境地帯にロシア軍の大軍が集結している。その兵力総数は17万5000人に上るとみられ、ロシア軍がウクライナに侵攻し、全土を掌握する作戦を企図していると懸念されている。バイデン米大統領は去る12月6日、ロシアのプーチン大統領とオンラインで会談し、ウクライナに侵攻した場合は「厳しい制裁」に直面すると警告した。ただ同時に、話し合いを継続することで両大統領は一致しており、外交解決を図ろうという形...

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ロシア軍の兵力増強で緊迫するウクライナ情勢は、12月7日の米露首脳オンライン会談で、ロシア軍が直ちに侵攻する可能性は遠のいた。ロシアは安全保障に関する提案を米国に伝えるとしており、当面は外交に比重を置きそうだ。しかし、「プーチン氏が何を考えているか全く分からない」(オースティン米国防長官)とされるように、ロシアの出方は不気味だ。 プーチン「4つのシナリオ」 米国の専門家、アンドルー・ワ...

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3年前に筆者が講演したことがある米空軍大学の中にある中国航空宇宙研究所が、『中国ロケット軍編成』と題する報告書を11月末に出版した。 中国ロケット軍は人民解放軍傘下にあって、弾道ミサイル及び地上発射長距離巡航ミサイルを運用する独立軍種である。核抑止、核反撃、通常ミサイル精密打撃をその任務とする。改名されるまでは「第二砲兵」と呼称されていた。 中国のロケット軍は第61基地から第69基地ま...

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「(暴力団だからといって)お友達の嫌がることをあなたしますか。しないでしょ」 中国共産党政権(以下中共)に対するこの元首相の福田康夫ドクトリンは、実は日本のみの宿痾ではない。世界中の政界、学界、スポーツ界で主流であり続けてきた。 中共幹部の性行為強要を告発した彭帥選手の「軟禁」を理由に中国ツアーをすべてキャンセルしたWTA(女子テニス協会)が開けた風穴をどこまで広げられるか。来年2月開...

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立憲民主党の泉健太新執行部が発足した。期待するところはほとんどないが、野党第一党としての存在感を示すためにも、日本共産党との選挙協力を含めた連携をやめる決断をすべきだ。非現実的な路線からの見直しを図らない限り、かつて日本社会党がたどったように衰退の道を歩むことになるだろう。 西村幹事長起用への疑問 泉氏は党運営の要である幹事長に代表選で戦った西村智奈美氏を充てた。立憲民主党が掲げてきた...

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11月26日に防衛研究所が『中国安全保障レポート』を公表した。この中で、筆者が特に注目したのは図2-6(37頁)に示された人民解放軍の戦略支援軍編成である。これは2018年に、米国防大学が出版した『China’s Strategic Support Force: A Force for a New Era(中国の戦略支援軍:新しい時代の軍)』に示された編成図の和訳であるが、中国の戦略支援軍が宇宙の...

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私は、全斗煥元大統領逝去にあたって文在寅政権と韓国の与野党政治家、マスコミの報じ方に強い違和感を感じ、本サイトの「直言」欄に11月29日付で「全斗煥元大統領逝去に思う」というネットコラムを書いた。 そこで触れた韓国の法治主義の崩壊は、1995年12月の遡及立法による無理筋の全斗煥逮捕に始まっている。あのとき、時の金泳三大統領は政権後期で、落下する支持率を挽回するため、すでに司法でも政治的にも...

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9月のドイツ総選挙結果を受け、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党間で行われていた連立交渉は11月24日、合意に達し、12月上旬に新首相にSPDのオーラフ・ショルツ氏(63)が選出され、新政権が発足する。新外相には緑の党の女性共同党首、アンナレーナ・ベアボック氏(40)が就任する見通しだ。 新政権の政策がこれまでのメルケル政権とはどう変わるか。財政、環境、エネルギー、福祉...

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