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髙橋史朗

【第448回・特別版】「世界の記憶」登録の二重基準を許すな

髙橋史朗 / 2017.06.27 (火)


国基研理事・明星大学特別教授 髙橋史朗

 

 6月24日付朝日新聞は「ユネスコ『世界の記憶』、『政治案件』一部除外へ」と題する5段記事を掲載し、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が「日本関連候補の一部の『政治的案件』を審議対象から外す方針であることがわかった」と報じた。その理由は、「世界の記憶」は保存が目的であり、「歴史的な判定や解釈はしない」「政治的党派性を有するとの非難を受けてはならない」からであるという。

 ●不公平なユネスコ事務局
 「政治的案件」を審議対象から外す方針であるという報道が確実な裏付けのとれた取材に基づくものであれば、ユネスコ事務局の対応はダブルスタンダードになっており、明らかに公平性を欠く。なぜなら、同報道によれば、慰安婦制度を糾弾する立場に立つ8カ国・地域の14団体が共同申請した「日本軍『慰安婦』の声」文書は問題視されていないようであるが、同文書には政治的に偏った活動の記録が多数含まれており、これら資料の登録申請が「政治的党派性」を有する「政治的案件」であることは明白だからである。
 「政治的案件」を審議対象から外す方針は、4月に申請者に通告されたようであるが、2月末に開催された登録小委員会(RSC)の審議を踏まえたものと推察される。RSCが「政治的案件」と判断した案件について申請者に通告し、その応答(反論を含む)内容についてRSCが再検討し、国際諮問委員会(IAC)に勧告を提出する。それをIACが審査して、ユネスコ事務局長に勧告することになろう。
 IACへの勧告を決定するRSCがいつ開催されるかは不明であるが、ユネスコ事務局が夏季休暇に入る前に開催される可能性が高い。2015年の「南京大虐殺」関連文書の登録では、RSCのIACへの勧告が事実上の決着となってしまった。日本としては、対応が後手に回った失敗を繰り返すことは絶対に許されない。

 ●日本の迅速対応が必要
 RSCが近日中に出す結論を注視し、「世界の記憶」事業の趣旨に反する決定が行われる場合には、政治的濫用から「世界の記憶」事業を保護するという普遍的観点に立って日本政府は直ちに反論し、IACに慎重な審査を求める必要がある。
 3月24日に国連のウェブサイトで公表された第201回ユネスコ執行委員会文書によれば、「世界の記憶」制度改善に関する専門家会合は、政治的濫用から「世界の記憶」事業を保護する枠組みが必要であると指摘。疑義が呈された申請案件への対応として、①共同申請②異なる見解を含んだ登録の合意③合意が得られない場合には、最長4年間の対話継続―という三つの調停の可能性があることを事務局長に勧告した。この制度改善案に従えば、「政治的案件」の登録は先送りすべきである。(了)