2023年11月の記事一覧
【第1095回】「健全な財政」は「均衡財政」を意味しない
国基研企画委員・元内閣官房参与 本田悦朗 国の財政に関する基本法である財政法は第4条1項で、公債発行に依存しない「非募債主義」即ち「均衡財政主義」を定めているが、公共事業費等の財源については例外的に、国会の議決を経た金額の範囲内で公債の発行を容認している。これを「建設公債の原則」と呼ぶ。しかし、現実には、経常的な支出に充てるために毎年のように特例法を制定し、「特例公債」(赤...
【第1094回】IPEFで露呈した米政権のお寒い実態
国基研企画委員・明星大学教授 細川昌彦 米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の閣僚会合、首脳会合が先週閉幕した。IPEFは4本柱で構成されるが、そのうち「脱炭素」と「公正な経済」で妥結し、「貿易」は合意が先送りされた。今年5月に「供給網の強化」で妥結している。以上が2022年9月の交渉開始から1年余の成果だ。ただし、これは来年になると米国が大統領...
【第1093回】米中関係「修復」にだまされるな
国基研企画委員兼研究員 冨山泰 1979年の国交正常化以降で最悪と言ってよい米中関係は、米サンフランシスコ近郊における11月15日のバイデン米大統領と習近平中国国家主席の首脳会談で、偶発的な軍事衝突を回避する軍同士のハイレベル対話再開に合意するなど、当面の緊張を緩和した。しかし、うわべの関係修復にだまされてはならない。米中関係を一気に緊迫させかねない台湾総統選挙が2カ月後に...
【第1092回】中国との懸案解決には対抗手段が必要
国基研企画委員・月刊「正論」発行人 有元隆志 約1年ぶりに行われた日中首脳会談では「戦略的互恵関係」の包括的推進を確認したが、懸案である中国による邦人拘束問題、尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)での中国ブイの撤去問題、中国による日本産水産物の全面禁輸問題は解決しなかった。 日本経済新聞によると、10月に北京で開かれたレセプションで、「戦略的互恵関係」という概念を編み...
【第1091回】自衛隊明記の闘いから逃げてはならない
国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授 西岡力 岸田文雄首相は、自身の任期内に憲法改正を実現すると繰り返し公言している。首相の自民党総裁としての任期は来年9月までだ。それまでに衆参両院の3分の2の賛成で憲法改正発議案を通し、国民投票を実施して過半数を得なければならない。残された時間は限られている。具体的にどの条文を改正するのか確定させるべき時が来ている。 自民党は、①...
【第1090回】最高裁裁判官の選任方法を再考せよ
国基研副理事長・弁護士 髙池勝彦 性別変更に関する最近の最高裁判所の判断など、その内容に国民の意識とかけ離れてゐると感じられるものが少なくなく、最高裁裁判官の資質や意識について疑問が感じられる。そこで、最高裁裁判官の選任について再考する必要がある。 ●形骸化する内閣の指名・任命権 最高裁裁判官は、長官とその他の裁判官14人で構成されてゐる(裁判所法5条)。うち、...
【第1089回】植田日銀は市場に惑わされるな
国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男 植田和男総裁体制の日本銀行は外国人投資家を中心とする市場の投機勢力に押されている。このまま市場の後追いを続けると、急激な円安や金利高で回復基調の経済の失速を招きかねない。植田日銀は市場の思惑に動じない姿勢を示すべきだ。 ●足元を見透かす投機筋 投機勢力が目をつけるのが2016年9月に始めた長短金利操作(イールドカーブ・...