公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

島田洋一

【第91回】韓国議員の北方領土訪問に制裁を

島田洋一 / 2011.05.30 (月)


国基研企画委員・福井県立大学教授 島田洋一

5月24日、韓国の国会議員3人が、ロシア政府発給のビザで日本の北方領土を訪問した。

菅政権は「わが国固有の領土である北方領土に対し、ロシアの管轄権に服する形で第三国の国会議員が行くことは容認できない。大変遺憾だ」(松本剛明外相)と型通りのコメントを出したのみで、「議員の任務遂行への支援として(航空券確保など)ロシアに協力を要請した」と便宜供与を認めている韓国政府に対し、何らの対抗措置も取っていない。

3人を入国禁止とせよ
5月20日、自民党議員らの事前の追及に、菅直人首相は「事実関係を確認中」と逃げつつ、「きちんとした対応」を約束した。事実が確定した24日、武藤正敏駐韓大使を韓国外交部に派遣し、遺憾の意を伝えた。

韓国側は「一部野党議員の行動であり、韓国政府とは関係がない」と軽く受け流している。22日の日韓首脳会談で菅首相がこの問題に全く触れなかった以上、韓国側が対応の要なしと判断したのも当然だろう。

25日、自民党外交部会で、「きちんとした対応」とはこれかと問われた外務省幹部は「そう」と答えている。北方領土に不法入国した3議員を今後日本に入れるべきではないとの指摘にも、「そう捉えると(昨年11月に北方領土の国後島を訪問した)メドベージェフ(ロシア大統領)はどうするかなどの問題が生じる」などと消極回答している(佐藤正久参院議員ブログ参照)。

あらゆる問題で一貫性を欠く菅政権が、弱腰外交でのみ一貫性にこだわる姿は笑止という他ない。何度訪問しても不問に付すという、ロシア大統領府に対する新たな負のメッセージともなり得よう。区々たる整合性にこだわらず、明確な制裁を科さねばならない。

中露韓の対日連携を許すな
5月初旬、韓国で「領土問題に関する韓国・中国・ロシアの専門家セミナー定例化」などを目指す議員連盟が発足した。与野党有力者が顔をそろえており、中露と連携しての対日揺さぶりはこれからが本番となるかも知れない(産経・久保田るり子記者)。

日本の主権が関わる問題では、政府、与野党問わず一致して声を上げねばならない。そのことで韓国の政治家も「北方領土遊び」は日本全体を敵に回す危険な行為と悟るだろう。

かつて、友党・朝鮮労働党の日本人拉致に何の抗議もしなかったどころか、隠蔽工作に事実上荷担した旧社会党系議員(今は社民党と民主党に分かれている)などは、やはり今回も沈黙している。彼らは衆議院での菅内閣不信任決議に反対する勢力とほぼ重なる。次の選挙で有権者が鉄槌てっついを下さねばならない。(了)

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第91回:韓国議員の北方領土訪問に制裁を(島田洋一)

 

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