公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

木村汎

【第423回】日露「2プラス2」会合に望む

木村汎 / 2017.02.27 (月)


北海道大学名誉教授 木村ひろし

 

 3月20日、東京で日露間の「2プラス2」会合が開かれる。「2プラス2」とは何か? 外交、安全保障分野における2国間の協力や共通の戦略について話し合う定期協議の枠組みを指す。日本とロシアから外相と防衛相という閣僚2人ずつが参加するので、「2プラス2」と略称される。
 2013年4月末に安倍晋三首相がモスクワを訪問した際に、日露両国は「2プラス2」を創設することに合意した。これは、日本が行った対露譲歩を意味する画期的なジェスチャーだった。というのも、従来の日本は安全保障上で友好的かつ緊密な関係を持つ国々との間でしか、このようなフォーマットを持とうとしなかったからである。つまり、それまで「2プラス2」を持ったのは、米国とオーストラリアの2か国とだけだった。安倍首相は英断を下したと評さざるをえない。なぜならば、日本はロシアとの間で未だ平和条約を結んでおらず、厳密にいうと戦争状態に完全な形では終止符を打っていない関係にあるからだ。

 ●クリミア併合で中断
 安倍首相がそのようなロシアとの間で敢えて「2プラス2」の枠組みを持とうとした主な理由は、おそらく次の二つだろう。一つは、増大する中国の脅威を牽制する必要から。もう一つは、領土問題を解決して平和条約締結を実現するための総合的な環境づくりの一環として、である。
 ところが、このような狙いで創設された日露間の「2プラス2」は、2013年11月に初会合を行った後、今日まで中断されていた。というのも、2014年3月にロシアが軍事力を背景にウクライナ領クリミア半島を併合するという国際法の重大な違反行為を犯したからである。日本を含む先進7か国(G7)は、ロシアの暴挙を撤回させるために制裁を科した。
 ところが、その間もロシアは日露間の係争地である北方領土の軍備増強を着々と進めた。2016年11月に択捉、国後両島に新型地対艦ミサイルを配備したのは、その一例に過ぎない。今月、ショイグ・ロシア国防相はクリール諸島(千島列島と北方領土)への師団配備計画すら発表した。

 ●北方領土での軍備増強を指弾せよ
 筆者はもともと日露間で「2プラス2」を創設すること自体に疑義を抱いていた。また、初回会合で、係争地である北方4島にロシア軍3500人を駐留させていることの是非について議論しなかったことにも失望した。そして今、第2回会合の開催によって、我が国がG7の対露制裁を事実上破ることを懸念する。
 もし岸田文雄外相、稲田朋美防衛相が私のこれらの疑念を払拭しようとする気があるのならば、是非とも北方領土でのロシアの軍備増強傾向を厳しく指弾し、それを改める言質をプーチン政権から引き出すことを望む。(了)