2月16~17日、国基研の同僚3人と共にニューデリーへ出張し、インドのシンクタンク「ビベカナンダ国際財団」(VIF)との2者対話と、米ハドソン研究所の研究者を交えた3者対話に参加した。参加者の最大の関心事は当然ながらトランプ米新政権の動向だった。
2日間の会議を通じて、日本とインドの研究者はトランプ大統領への懸念を共有していた。私は、安倍晋三首相とトランプ大統領の最近の会談で日米同盟の重要性が確認されたものの、トランプ大統領に自由・民主主義陣営のリーダー役を果たす用意があるのか依然として不明だと論じた。インドの元外交官は、米国主導の世界秩序が終わるという最悪のシナリオに備える必要があると述べ、ロシアを中国に接近させないことが重要だと主張した。
一方、米国の元政府高官は、トランプ大統領が伝統的な同盟関係を重視するマティス国防長官やティラーソン国務長官を起用し、安倍首相を訪米に招いたことは「正しい方向」へ向かっている兆しであると語り、今後に期待をにじませた。
●国基研代表が参加
会議での発表は多岐にわたった。国基研の黒澤聖二事務局長は、中国が南シナ海での「歴史的権利」を否定された国際仲裁裁判所の裁定を無視し、国際海洋秩序に挑戦している実態を紹介し、「法の支配」徹底のため日米印が団結する必要を訴えた。
湯浅博企画委員は、安倍首相が日米同盟を基盤としつつ、インド太平洋地域の海洋国家(豪州、東南アジア諸国)やユーラシアの大陸国家(インド、ロシア)と協調することで、中国の膨張主義を抑え込む戦略的外交を展開していると説明した。その上で、日米同盟を礎としてインド、豪州などを含めたアジア海洋安全保障の枠組みの構築を提起した。
島田洋一企画委員は、日本における平和安全法制の成立は集団的自衛権行使を限定的に容認するなど一定の前進があったものの、①戦闘の現場では米軍などへの後方支援を実施できない②自衛隊による拉致被害者救出作戦は海外派兵となり、北朝鮮の同意がなければ実行できない―という限界があると指摘し、憲法改正が必要なことを強調した。
●来年は東京で開催
また、日本とインドがインド太平洋地域の共同開発の第一弾としてイランの港湾施設整備を進めようとしていることについて、中国の地域開発構想「一帯一路」への代替案を提供するという戦略的意味を持つとの共通認識が参加者の間で存在した。
会議では、今回の枠組みによる対話を継続することで意見が一致し、国基研代表団は次回の対話を東京で来年主催する用意があることを表明した。今回の対話は就任したばかりのトランプ大統領が影の主役だったが、次回は日米印3カ国研究者の本来の最大関心事である中国に関する討議に力を入れたいとの意見が多くの参加者から出された。(了)