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西岡力

【第435回】韓国大統領選は「最悪」と「次悪」の選択か?

西岡力 / 2017.04.24 (月)


国基研企画委員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 韓国で5月9日に大統領選挙の投票が行われる。朴槿恵大統領の罷免決定を受け、12月に予定されていた選挙が7カ月前倒しされた。
 大統領直接選挙制を定めた現憲法が1987年に制定されて以来、韓国の政治は常に北朝鮮からの政治工作という強い磁場の中で、反共保守派の自由民主主義陣営と従北左派陣営の間で激しい戦いが繰り広げられてきた。韓国の政治は従北(北朝鮮に従属する)左派から反共保守派までの幅広いスペクトラム(分布範囲)の中で展開される激しい政争だ。私はそれを「銃声なき内戦」と呼んでいる。

 ●従北左派vs中道左派
 昨年10月以降、朴槿恵大統領退陣を求める大規模な街頭デモが展開された。シンボルのろうそくを掲げたデモを主導したのは、韓国政治のスペクトラムの一番左に位置する従北左派だった。文在寅、安哲秀の有力2候補はこのデモを称賛している。
 今年1月以降、弾劾無効を主張する反共保守派が大規模なデモを行った。こちらのシンボルは国旗である太極旗であり、彼らは政治スペクトラムの最も右に位置した。太極旗デモ主催者らは新党を作り、親朴槿恵派の趙源震議員を立候補させたが泡沫候補扱いで、テレビ討論にも呼ばれない。自由韓国党(朴槿恵政権与党だったセヌリ党が改称)の洪準杓候補も有力2候補に大きく後れをとっている。
 今回の大統領選挙の特徴は、朴槿恵大統領弾劾の結果としての保守派有力候補の不在と、世論の座標軸の左移動によって、従北左派の文在寅氏と中道左派の安哲秀氏の対決構図となったことだ。保守派リーダーの意見は2分している。ジャーナリストの趙甲済氏らは「次悪」である中道左派に投票して「最悪」である従北左派政権樹立を阻止しようと主張し、鄭奎載・韓国経済新聞主筆らは、たとえ今回負けるとしても、その後の保守派政治勢力再建のためには保守派候補に票を集めるべきだと主張する。
 
 ●革命的左傾化か緩慢な左傾化か
 論争の中核には、「安政権」は次悪といえるのか、もう一つの最悪なのかという問いがある。カギは安全保障政策だ。「文政権」は任期中に北朝鮮と連邦制を実現させ、韓米同盟を崩壊させる危険性がある。安氏は国防費の国内総生産(GNP)比3%への増額など保守的な政策を公約しているので、安政権になっても韓米同盟は維持されよう。ただし、国内に浸透した従北勢力を整理するというもう一つの安保上の重大課題は、文氏はもちろんのこと、安氏も取り組む可能性はない。したがって、安政権になると再び国内の従北左派が政治攻勢をかけ、再度、大統領弾劾という混乱事態さえ起きかねない。
 文政権になれば革命的な左傾化、安政権になれば緩慢な左傾化が起きる。韓国の反共自由民主主義の危機が深化することだけは間違いない。そのことを前提に、日本は早く憲法改正をして国軍を持ち、国防費の大幅増額を実現すべきだと強調しておく。(了)