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【第107回】国家存続のため「列島強靭化」の政治決断を

h0330 / 2011.09.20 (火)


京都大学大学院教授 藤井聡

「国家」というものは、栄えることもあれば亡ぶこともある。世界史の中では、超大国であった国が小国、貧国に落ちぶれる例は枚挙にいとまがない。

その一つがポルトガルだ。ポルトガルは18世紀に世界を〝支配〟するほどの強大な国力を誇っていた。しかし、そんなポルトガルの国力を一気に削いだのが「リスボン大地震」(1755年)という巨大地震であった。

死者は6万人に上り、火災によって、そして大津波によって首都リスボンは壊滅した。その結果、ポルトガル経済は大打撃を受け、これが世界一の大国の座からちょう落する引き金となったのだった。

10年以内に「平成関東大震災」
つまり,首都を襲う巨大地震は、大国を一気に凋落させる恐ろしい力を秘めているのである。それから200年以上が経過した今,同じような危機にさらされている大国がある。我が日本である。

関東平野は、歴史的には30~50年ごとにマグニチュード(M)6.5~8程度の巨大地震に襲われ続けてきた。しかし今、関東平野では実に90年近くも大地震が起きていない。この「異様」な事態は、要するに関東平野の足元に地震エネルギーがまり続けていることを意味する。

そんな中、3月に東日本大震災が起きてしまった。これもまた歴史を振り返れば、東日本の太平洋沖で大地震は過去2000年間に4回起きているのだが、その4回とも例外なく首都圏で大地震が10年以内に起きている。こうした事実を踏まえれば、「平成関東大震災」が10年以内に起きることはほぼ間違いない状況にあることが分かる。

有史以来最大の危機
これだけでも、日本は国家的危機に晒されていると言い得るのだが、残念ながら我が国は、大阪、名古屋を含めた西日本全域を直撃する「東海南海東南海地震」の危機にも晒されている。その20年以内の発生確率は、実に7~8割程度にまで上がる。

つまり、日本は戦後肥大化し続けた3大都市圏が一気に壊滅しかねない、第2次世界大戦に匹敵するとも言い得る程の、有史以来最大の危機に直面しているのである。

しかし、技術立国であり経済大国である日本には、そんな危機を乗り越えるために必要な、徹底的な防災対策や強靱な国土の構築を企図した200兆円規模の財源に基づく「列島強靭化」を果たす底力が間違いなくある。

だが、足らぬものが一つだけある。列島強靭化に向けた「政治決断」である。だからこそ我々は今、国家存続を期するために、そんな政治決断を下すためのあらゆる努力をなさねばならない。日本の命運は、我々、平成日本人の手に委ねられているのである。(了)

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第107回:国家存続のため「列島強靭化」の政治決断を(藤井聡)