米朝首脳会談が開催される可能性が浮上した。核問題で合意が成立すれば、日朝首脳会談が開かれ、日本人拉致被害者を取り戻すチャンスが来る。
●北は9月以降の会談模索
トランプ米大統領は8月16日、翌日始まる米韓合同軍事演習について「全く不適切で敵対的なシグナルを送っている」として、その大幅縮小を命じた。
このタイミングでの演習縮小は、水面下で進んでいる米朝接触で北朝鮮側から求められた可能性がある。6月にはシンガポール、7月にはタイで接触があった。トランプ氏も17日、北朝鮮の金正恩労働党総書記と対話が成立していることを認めた。
私は8月初め、金氏が米朝首脳会談の準備を本格化させ、会談の時期として9月の習近平中国国家主席訪米後を考えているという北朝鮮側情報を聞いていた。
金氏は米国とイスラエルがイラン最高首脳部を爆殺したことを見て、次は自分ではないかと恐れている。そのことをトランプ氏も分かっている。
トランプ氏は19日、「イランに核兵器を持たせるわけにはいかないが、私は金氏をよく知っている。彼なら大丈夫だ」と語ったが、イランで行ったことを北朝鮮ではやらないというメッセージと解釈できる。
●ICBM廃棄受け入れも
トランプ氏は北朝鮮が57発の核兵器を持っているとも発言した。数字が具体的だから、正確だったなら金氏は誰が米側に最高機密を漏らしたのかと疑心暗鬼になるだろう。
第1次トランプ政権時代の米朝核交渉は、北朝鮮が米国の情報力を甘く見て、平壌の南にある降仙の濃縮ウラン生産施設を隠そうとしたため決裂した。トランプ氏は「私はあなたが持っている核兵器について具体的に知っている。前回のような嘘は通じない」とクギを刺すため、最高機密である核兵器の数を口にしたのではないか。
2019年のハノイでの2回目の米朝首脳会談で、トランプ氏は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を廃棄すれば国連制裁を一部解除すると提案し、金氏が拒否したことが最近明らかになった。北朝鮮は今回、ICBM廃棄を考えているという。実現すれば、トランプ氏はバイデン前米政権が達成できなかった米本土の安全を守ったと宣伝できる。中短距離核ミサイルについての日韓の不安には、米本土の安全が確保できれば米国はフリーハンドで北朝鮮を攻撃できるから、日韓への拡大抑止が強化されると説得するだろう。
●取引材料に日本の経済支援
ハノイ会談でトランプ氏は、拉致問題解決のため安倍晋三首相(当時)と会うよう金氏を説得し、肯定的な返事を得た。トランプ氏は、北朝鮮が核を廃棄したら制裁は解除するが経済支援はしないと明言していた。「支援は日本からもらえ。だが日本の条件は拉致解決だ」と金氏に伝えたのだ。今回の米朝首脳会談でも、トランプ氏は日本からの経済支援を取引の道具に使うはずだ。
拉致解決のチャンスが来る可能性が出てきた。高市早苗政権はトランプ大統領と緊密に連携し、拉致被害者の生存・所在情報の収集と総整理を行い、全被害者帰国という結果を出してほしい。(了)




