公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

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【第1412回】日本は大国の内政日程に抗する覚悟を

湯浅博 / 2026.10.26 (月)


国基研企画委員兼研究員 湯浅博

 

 世界は米中二つの「大国の対立」に向かうのか、あるいは米中露三つの「大国による管理」が進むのか―。今後数年に及ぶ大国の内政スケジュールは、国内の権力固めや政策行き詰まりから、対外行動に活路を見いだす力学が働きやすくなる。11月の米中間選挙に始まり、2027年の中国共産党大会、2028年の台湾総統選と米大統領選へと、怒涛のタイムラインが続く。一連のイベントは地政学的リスクに直結し、日本などの中堅国は否応なくそれに巻き込まれることを覚悟しなければならない。
 トランプ米大統領にはこれまでも、内政の都合と目先のディール(取引)で外交を切り売りする傾向があった。9月の米中首脳会談が華やかな「政治劇」で幕を閉じたのも、両首脳が国内向けにそれぞれ世界の指導者として自身を誇示する理由があったからだ。合意らしきものは、G2(米中2大国)による「戦略的安定関係」の構築という当面の時間稼ぎだけだった。

 ●国内事情に左右される米中の政策
 米中間選挙で共和党が敗北すると、予算案は民主党主導の議会に阻まれ、内政は膠着状態に陥る。政権の弱体化は、議会だけでなく政権内部からも「トランプ離れ」の動きを誘う。内政が行き詰まると、大統領の目は行政権限で動かせる外交や通商に向く。トランプ政権の残り2年は、同盟国にさらなる関税圧力をかけるなど、予測不可能性が増すだろう。
 中国に対してトランプ氏は、強硬姿勢を打ち出して威信を保つことと、包括的ディールを結ぶことの間で揺れ動く。一方、中国の習近平国家主席にとって2027年は、中国共産党大会で総書記としての4選を目指すところから、台湾併合に向かうだけの余裕はないはずだ。
 2028年になると、米中の政治力学が一変する。1月の台湾総統選で頼清徳総統が再選されれば、党大会を乗り切った習氏が政権固めから現状変更へと舵を切りかねない。折しも米国は、大統領選の予備選が始まって内向きの政治に没入し、対外的な関心が低下する。中国は「戦略的好機」を活用したいとの誘惑に駆られるだろう。

 ●来年が対中抑止力整備の正念場
 従って、日本、オーストラリア、欧州諸国など中堅国にとって、嵐の前夜となる2027年をいかに管理するかが正念場となるのではないか。この年は「米国の予測不能な単独行動主義」と「中国の計算された安定志向」が入り交じる。
 日本はトランプ政権からの防衛費増額要求に対処する一方で、米国の抑止力を東アジアに縛り付けておくための外交的コストを勘案しなければならない。中国に対しては、習氏が慎重な2027年のうちに、侵略の代償の大きさを見せつける「拒否的抑止」を整えるべきだ。他方、米国による台湾への迅速な武器供与を後押ししつつ、過度な挑発は抑制する。日中首脳対話を模索しながらも、欧州と歩調を合わせた多国間の牽制外交に徹する。
 ギリシャ神話のアトラスのように、米国が世界を支える時代は終わった。大国の共謀と専制の圧力に抗しながら、複層的な抑止の網を構築することが、忍び寄る国難に立ち向かう道である。(了)