公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

江崎道朗

【第1387回】3回の危機を乗り越えた皇室の伝統

江崎道朗 / 2026.07.21 (火)


国基研企画委員・麗澤大学特任教授 江崎道朗

 

 改正皇室典範が参議院本会議で可決、成立した2026年7月18日は、歴史的な日となった。
 現行の皇室典範は先の大戦後、現行憲法の下で整備されたものであり、その第1条は明治の皇室典範を引き継ぎ、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と明記している。現行憲法下でも認められたこの皇室の伝統は近年、3回の危機に直面したが、今回の改正でしっかり守られた。

 ●繰り返された女系天皇容認の動き
 第一の危機は、小泉純一郎政権期に生じた。男性皇族の減少を背景に私的懇談会を設置した小泉政権は「男女を問わず直系の長子を優先する制度」、および女性皇族が民間男性と婚姻した場合でもその子に皇位継承資格を認めるという、いわゆる女系天皇容認を含む最終報告を公表した。2006年1月の施政方針演説において小泉首相はこれらの方針に基づく立法化の意向を明確にしたが、同年2月、秋篠宮妃殿下のご懐妊が公表され、改正案の提出は見送られるに至った。
 第二の危機は、野田佳彦政権の下で顕在化した。2011年から2012年にかけて同政権は「女性宮家」の創設の検討を進めた。女性皇族の配偶者および子を皇族とみなす制度が導入されれば、結果として女系による皇位継承の可能性が開かれることになる。しかし、自民党など保守派の強い反対により、この動きは実現に至らなかった。
 第三の危機は、第2次安倍晋三政権期において生じた。2016年8月、現在の上皇陛下が「象徴としてのお務め」についてお気持ちを表明されたことを契機に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立、その付帯決議において、「女性宮家の創設」等について速やかに検討することになった。
 このような状況に対し、安倍、菅、岸田の各内閣は、段階的に対策を講じてきた。
 まず、2019年5月1日の今上陛下の御即位に際し、現行皇室典範の男系男子継承の原則に則り、秋篠宮殿下が皇位継承順位第1位の皇嗣となられた(長子継承、つまり女性天皇の否定)。
 次いで、2021年春、菅内閣は「安定的な皇位継承を確保するための有識者会議」を設置。同年12月、岸田内閣の下で取りまとめられた報告書が、皇統に属する(つまり旧宮家の)男系の男子孫を養子縁組により皇族とする方策、ならびに女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する制度を提言した。

 ●男系男子継承原則を堅持
 そして今回、この報告書を基礎として、皇統に属する男系の男子孫の養子縁組による皇籍身分取得、および女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する制度(ただし、現行皇室典範に基づきその配偶者および子には皇族の身分を付与しない)という二つの新制度を柱とする改正皇室典範が衆参両院において9割近くの賛成を得て成立した。
 これにより、「長子優先による女性天皇の即位」や「女性宮家の創設」といった、女系継承へと連なり得る諸構想は退けられ、敗戦後の占領改革下においても維持されてきた男系男子による皇位継承の原則は、堅持されることになった。(了)