公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

奈良林直

【第1391回】日越原子力協力を推進しよう

奈良林直 / 2026.07.27 (月)


国基研理事・北海道大学名誉教授 奈良林 直

 

 停滞していた日本とベトナムの原子力協力が復活へ向けて動きだした。5月の高市早苗首相の訪越で、日越両国は原子力分野の協力の可能性について協議を促進することで一致した。それを受けて今月、ハノイで筆者らと面会したベトナム原子力研究所の所長は、小型モジュール炉(SMR)の日本との開発協力に強い意欲を示した。

 ●小型モジュール炉の共同開発
 昨年12月、日本政府は支援を検討していたベトナムの大型原子力発電所の建設計画について、ベトナム側が要望する2035年までの営業運転開始は困難なことから、支援からの撤退を余儀なくされた。長年、ベトナムへの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)輸出の実現に尽力してきた筆者としては、大変残念だった。
 そこで、内閣官房参与の細川昌彦明星大学教授を通じて、訪越する高市首相にベトナム側から日越原子力協力の復活を要請するよう、働き掛けてもらった。日越首脳会談を受けて発表された経済安全保障分野の優先協力事項リストには、「双方のニーズと能力に応じた、2040年以降の原子力分野における協力の可能性に関する協議を促進する」との項目が盛り込まれた。
 筆者は7月19日から、日本維新の会の元衆院議員で国際エネルギー技術開発支援機構(IETDSO)代表理事の空本誠喜氏、東京科学大学(旧東京工業大学)の木倉宏成准教授と共にハノイを訪問し、ベトナム原子力研究所のチャン・チ・タイン所長と日越原子力協力の在り方について意見を交換した。
 所長からは、「日本とぜひ、SMRの共同開発、人材育成を行いたい」という強い希望が示された。筆者は、電力需要に合わせて電気出力を変更できるSMRが共同開発の対象としてふさわしいことを説明した。所長は、ベトナムは電力不足で電力系統が不安定であり、太陽光など気象の影響を受ける再生可能エネルギーでは限界があることを認識していると述べ、南北に長い国土にたくさんのSMRを建設したいと応じた。
所長はまた、国会でSMRの開発と建設は既に承認されており、日本の協力の働き掛けは非常に良いタイミングだったと言っていた。

 ●対中戦略上の意味
 ハノイ滞在中、ベトナム国家大学ハノイ校やベトナム国家大学ホーチミン市校の学長、文部省や科学技術省の副大臣との面談が相次ぎ、日本の大学での人材育成や技術協力を要請された。SMRの建設工期短縮や安全性向上、建設コストの削減などはお互いの共同研究のなかで取り組むことになった。人工知能(AI)による事故の未然防止や、ベトナムに埋蔵されているレアアース(希土類)資源の活用に関しても日本と協力したいとの発言があった。
 日本がベトナムと原子力分野で長期的な協力関係を築くことは、中国の東南アジアへの影響力を相対的に抑制する効果があり、対中戦略上重要な意味を持つ。どんどん推進すべきである。(了)