戦後81年を過ぎた。日本は1968年に米国に次ぐ経済超大国に上り詰めたが、90年代後半からは長期経済停滞局面に入り、いまだに抜け切れない。それは「第2の敗戦」とも称されるが、元凶は硬直的な緊縮財政至上主義にある。
緊縮財政至上主義の源流は、いわゆる平和憲法と同時に制定された財政法にある。国債が戦前・戦中の軍拡の財源になったとの反省から、財政支出を税収の範囲内にとどめるよう義務づけた。それが1997年度に始まった基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化路線へと引き継がれた。以来、30年間、「財政健全化」は金科玉条となり、政界やメディアの思考を呪縛してきた。
●根拠薄弱な前首相の主張
その呪縛から脱したのが昨秋発足した高市早苗政権である。「責任ある積極財政」によって経済の再生を図る。ところが、首相の足元、自民党の守旧勢力が立ちはだかる。急先鋒が石破茂前首相である。
石破氏は8月4日のBSフジで、食料品の消費税率8%を1%とする高市首相の決断をねちねちと難じた。衆院選で自民党を圧勝に導いた公約は消費減税の「検討を加速」するであって減税実施ではなかったと主張。バラマキに過ぎない給付を推奨する一方で、減税は社会保障財源不足を招き、ひいては財政不安、円安、金利上昇と物価高を高進するとまくし立てた。いずれも根拠薄弱、そのわけは以下の通りである。
●円安の根本原因は内需停滞
社会保障財源は社会保険料と税収で構成され、消費税は税収の一部を構成するに過ぎない。税収は経済成長率の上昇とともに大きく増える。食料品の減税は5兆円の減収となる計算だが、国の一般会計税収は2025年度に、前年度より9兆円増えた。20年度から25年度までの名目経済成長率は年平均3.2%、税収はそれを上回る同5.6%の増加率だ。増税と緊縮財政路線の1997年度から19年度までの期間では、それぞれ0.1%、0.3%に過ぎない。
円安の進行が金利上昇や物価高の一因になることは否定出来ないが、減税が円安を引き起こすというのは言いがかりだ。円安の根本原因は、国内需要の長期停滞のために円資金が海外に流出すると同時に、企業が対外投資で稼ぐ巨額の収益が現地に留め置かれることにある。減税で内需を下支えし、財政措置で民間の国内投資を促すこと、つまり、高市経済政策を軌道に乗せることこそが、円安阻止の決め手なのだ。
ところが石破氏は首相時代、トランプ米大統領の要求に屈し、3年間で5500億ドル(約87兆円)もの対米投資を約束したのである。(了)




