米国で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見(9月1日)で、ベセント米財務長官が日本に関し、「リフレ政策をやめるべきだ」と言明した。日銀は9月17、18日に金融政策決定会合を控えている。秋の臨時国会には高市早苗政権が閣議決定した食料品消費税減税法案が提出される。来年度予算の編成作業も始まった。このタイミングでの米政府高官発言だけに、国内で波紋が広がっている。
●他国に左右される政策は災い招く
高市政権や日銀がまず留意すべきは、財政・金融政策はあくまでも自国独自の判断で行うという原則だ。他国の意向に左右されると、大災厄を招きかねない。1990年代初めの平成バブル崩壊以来、30年間も続いた経済の空白は、米国が主導した1985年9月の「プラザ合意」が引き金になった。
次に、メディアは事大主義に陥ってはならない。「米国の意向」と言わんばかりの報道の行き過ぎは、世論に無用な混乱を招き、合理的な政策形成を阻害しかねない。
日本経済新聞は9月3日付朝刊で「米、日本に利上げ要求『リフレ政策終止符を』」の見出しを立て、「米政府が規律ある財政運営や日銀利上げを促している」と踏み込んだ。米国は日銀利上げを迫るばかりでなく、高市政権の減税や積極財政に難色を示しているというのだが、長官発言の英文を詳細にチェックしてみると、発言の過大解釈に基づいているとしか思えない。
ベセント氏が「リフレ政策をやめるべきだ」と発言したのは事実だが、リフレ(リフレーション)は「通貨の再膨張」という意味だ。その点、日銀はとっくに金融の量的拡張策を打ち切り、利上げを重ねてきた。日銀は国内景気、物価情勢などを厳密に見極めて利上げの是非を判断すればよいだけだ。
●財政規律重視のタカイチノミクス
日本の財政政策について、長官は「タカイチノミクスの時期に来ている。インフレ率2%という目標を達成し、リフレ政策に成功した今、成功がもたらした結果について考えるべき段階にある」と発言した。高市財政がリフレ策であるアベノミクスの継続だとみなすくだりは見当たらない。
国債増発も通貨膨張の一因だが、高市首相は新規国債発行額を限定し、減税財源も税収増や税外収入で確保する方針だ。来年度予算概算要求では一般会計の基礎的財政収支は10兆円規模の黒字になる計算になり、財政は拡張どころか緊縮型になる恐れがあるほど規律重視だ。首相はこの際、曲解と雑音を一掃するために、「高市成長戦略はリフレ政策に非ず」と宣言すべきだろう。(了)




