公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

今週の直言

田村秀男

【第1406回】増える税収を民間に還元せよ

田村秀男 / 2026.10.05 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 5日から秋の臨時国会が始まり、食料品消費税減税法案の審議に入る。編成作業が進む来年度予算と相まって、高市早苗政権の「責任ある積極財政」路線の正念場だが、片山さつき財務相は「高市首相はリフレ派ではない」とことさらに強調する。片山氏は円安是正を求めるトランプ米政権や金融市場の反応を念頭に置いているのだろうが、反リフレを強調する余り緊縮財政に走るようでは、肝心の日本経済再生シナリオが狂う。優先すべきは、増える税収を政策支出拡大により民間にフルに還元することだ。

 ●増えない政策支出
 リフレ(リフレーション)とは通貨の再膨張政策を指し、中央銀行の大幅な金融緩和、財政では赤字国債の増発を意味する。反リフレを意識する余り、経済の実勢を無視した利上げ加速と財政引き締めに走るのは禁物だ。9月18日に政策金利の引き上げに踏み切った植田和男日銀総裁は、さらなる利上げ加速に前のめりの姿勢を露わにしている。
 実際の消費者物価上昇率は物価安定目標2%を下回り、しかも上昇は食料品やエネルギー関連など限られた品目のコスト高騰による。米国のように旺盛な消費需要による物価上昇とは言い難い。大幅な利上げは弱い需要をさらに萎縮させてしまい、高市政権の成長戦略に欠かせない内需拡大に冷や水を浴びせる。
 本欄9月7日付の「高市成長戦略はリフレ政策に非ず」で指摘した通り、現下の高市財政は緊縮財政の枠内にとどまる。税収が急増しているのに、政策支出を増やしていないからだ。税は家計の所得や企業の収益を吸い上げるので、国内総生産(GDP)のマイナス要因である。政府は公共投資、社会保障、防衛、教育などの政策支出を増やすことで税収増をまるまる民間に還流させ、経済成長を保つことができる。

 ●税収見通し改定を
 今年度予算の場合、6月の補正でも財務省による税収見通しは83.7兆円で、2025年度決算の84.2兆円から減収となる。税収を低く見積もる財務官僚のいつもの手口である。現実には法人税を中心に税収は大幅に増え続けており、89兆円を超す勢いである。なのに政策支出を増やさないと、緊縮規模は12兆円以上、2025年度のGDP比で1.8%相当にもなる。
 補正予算を組まない高市政権にとり、来年度予算での政策支出大幅拡大は待ったなしのはずだ。食料品消費税減税はもとより、防衛、防災などへの配分の必要もあり、リフレか否かの論議を呼ぶだろう。高市政権は経済実勢に見合う確度の高い税収見通しの策定を財務省に命じ、議論の前提として提示すべきだ。(了)